第4話

「まいどドルフィンです」

エルミナの顔を見るなり

「ご苦労様。もう、お腹ペコペコ」

「休憩入ります」

サラの特製オムライスは人気が高いらしい。

「へぇ、これが織物か」

作業途中の織物に使われている糸、淡い青色をしながらも時折、緑色の光が揺らめく。

「これは、不思議だな」

セルディックの言葉に

「何度見ても飽きないのよね」

エルミナが頷く。

「工場長、大変だ! 西側の倉庫に魔物が」

慌てた様子の従業員に

「いけません、倉庫には収穫したばかりの貴重な綿が」

「す、すぐに、ギルドに連絡を」

その様子を見て

「オレが行く」

「セル?」

セルディックは頭を掻くと

「悪い、エルミナ。オレも職業病だな」

「ううん、セルならそうすると思った。工場長、場所を教えてください」

エルミナに聞かれ

「もしや、ギルドの方ですか?」

「いいえ。腕に自信のある、ただのウェイターです」

「は、はぁ」

工場長に案内され、セルディックとエルミナは西側の倉庫に向かう。


「グオオオオン」


海側に面した西側の倉庫には、ずんぐりとした体型の魔物フォーカの群れ。

丸い目をもって、見た目は愛らしいが鋭い牙を持つ。


それを黒い頭身の剣で、セルディックが切り裂いていく。

「ちっ、数が多い。おい、ネロ魔法で……援護」

後ろを振り返って

(そういや、いなかったな)

地道に片付けるしかない、と剣を振るった。

「ひ、ひい、助け……」

倉庫の中から人の声。

「ちっ、中の方にも入ったか」

慌てて駆けつけるが

「グオオオオン」

フォーカが女性に牙を向けている。

(使うか……)

セルディックが影を移動しようとする前に

「魔物は僕が倒す!!」

鋭い銀光が、フォーカをまっ二つに引き裂いた。


「セル、大丈夫?」

「ああ……」

エルミナは様子がおかしいと思い、セルディックの視線をたどる。

燃えるような赤髪の青年を見て

「もしかして、レオン?」

幼馴染の名前を口にした。

「エルミナさん」

青年の精悍な顔が、エルミナの顔を見るなり、だらしなく軟化する。

「マクシミリアンさんから、こちらだと聞いて……」

エルミナの隣のセルディックを見るなり

「お前は」

背中の大剣を抜き、憤怒の表情で睨みつける。

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