第2話

「聖職者が銃持ち出すとか」

危ないっての、とセルディックは言うと

「左下の女、新入りだな」

「え、何……」

いつ間にか背後に移動していたセルディックの姿を見て

「ひっ……」

小柄な少女は、顔を恐怖へ歪める。

「影移動か」

中央の黒衣のシスターは、軽く舌打ちをする。

「どれに、するか……ま、これでいいか」

セルディックは、自らの影から黒い刀身のナイフを取り出す。

「あー、えーと、月並みですが、このシスター見習いの命が惜しかったら見逃すように」

「これが勇者のやること?」

「鬼畜よ、鬼畜」

周囲のシスターたちが口々に言う。

「ほ、本気なわけないわ。勇者に人を傷つけられるわけ」

「試してみる?」

セルディックの瞳には、何の感情も感じられない。

おそらく、この勇者は簡単にーー

「た、助けて、シスター・リリア」

見習いシスターは、思わず叫び声を上げる。

「……分かりました。みなさん、銃を下ろすように」

リリアの合図で、シスターたちは銃を下へと向ける。

「一度、自由にしてみればいい」

そして、リリアはセルディックの方に視線をみて

「あなたのような化け物、誰も受け入れられるはずがありません」


♦︎♦︎♦︎


辺境の町・フォルテ

「特製オムライス、お待たせいたしました」

「兄ちゃん、こっちにも二つ頼む」

軽食屋ドルフィンで働く青いエプロンの少年を横目に

「彼、よく働くわね」

店主の女性サラは微笑むと

「どうしてセルディック君、誘ったの?」

隣で皿洗いをしていたツインテールの少女は

「昨日の夜、いきなりうちにきて住むところないっていうし」

おかげで寝不足だよ、と少女は溜息をつく。

「勇者でも仕事ないってあるのかしら?」

「魔王倒して、暇なんじゃない」

「今回は、あのイケメン魔法使いさん居ないのねぇ」

目の保養になるのに、と言ったサラに

「お姉ちゃんは、ああいう彫刻みたいなタイプ好きだよね」

サラは悪戯っぽく視線を細めると

「あらー、そういうエルミナちゃんはセルディック君のようなミステリアスタイプ好きよね」

「そ、そんなんじゃないし」

「どーかしらね」

「もう、お姉ちゃん!」

頬を膨らませるエルミナに

「あら、もうこんな時間。エルミナちゃん、工場まで出前お願い」

「でも、お店……」

「お昼のピークは過ぎてるわ。あとは、私ひとりでも大丈夫だから。セルディック君と一緒に行ってきなさい」

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