主人公の中学生の少年が、無力ながらもがむしゃらに戦地に花を届ける物語。
その道中で巡り会った人物との会話を通じて、微妙な少年の感情の変化そして成長がうまく描写されていると思います。
また戦争への倫理観についてだけではなく、第二次世界大戦の記憶の風化、平和主義を掲げることによって生じた国民の危機意識の少なさ、正常性バイアスに対しても、この小説では問題提起として強いメッセージ性を持ちます。決して他人事のように捉えてはならないと思われます。
最後は読者に強い余韻を残します。エピローグではぐっとくるものがありました。
他の方も評価されている通り、名作だと思います。
カクヨムに不時着して色々な小説を読ませていただいた私ですが、この小説はある意味一番の名作だと思いました。
何より訴えかけてくるものが、他の作品とは桁違いなんです。戦争や国防、それに対する国民の危機意識のなさ。
そういった、考えなければいけないのに普段は忘れている大切なことが、主人公のふとした行動から見えてくる作品。
大切な人が、もし戦争に巻き込まれていたらーー
もし、平和な国で戦争が起こったら--
当たり前の日常が壊れてしまったら--
『今、自分にできること』を精一杯考えて、行動に移す主人公の姿から色んなことを考えさせられます。
ライトノベルとは毛色の違う作品ですが、この作品を読んで私は『本来の小説の姿』を思い出したような気がしました。