序章

闇の中で

ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、

真っ暗闇の中で、この音だけが響き渡っている。


一体、何の音だろうか。

周囲を見渡しても、真っ暗で何も見えない。


ふと、恐怖と云う虫が全身の有りと有らゆる所から湧いて来る様な感覚に襲われる。


ドクッドクッドクッドクッ、

その途端に音のテンポが速くなった。


そっか。

その音が自らの心臓の鼓動である事を理解する。


ふぅ~。

恐怖と云う虫が一旦、巣へと帰って行く。


ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、

心臓の鼓動もテンポを緩めた。


落ち着いたところで、周囲に声を掛けてみる。


お~い!


言ったつもりなのだが、聞こえてくるのは自らの心臓の鼓動だけであった。


誰か~!


またしても自分の声は聞こえない。

声が出せなくなっているのだろうか。


ん?


声だけではなかった。

自分がどの様な体勢でいるのか、それすらも判らない。


何だ!?


ドクッドクッドクッドクッ、

再び心臓の鼓動のテンポが速くなった。


そして今度は、恐怖と云う虫に体を乗っ取られた様な感覚に襲われる。


うぎゃ~!


思わず悲鳴が漏れた。

しかし、その悲鳴も聞こえない。


ドクドクドクドクドクドク、

一段とテンポを速めた、心臓の鼓動だけが暗闇に響き渡る。

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