オアシスと言えば水着ですよね。

 オアシスはまさに、オアシスという空間であった。

 ヤシの木のような木に、透明度の高い泉。

 色鮮やかな緑色の葉っぱの上には、ルビィレッドの輝きを放つてんとう虫がいたりもした。 

 ただひとつ、異様とも言えたのは――。


「デカいな……」


 その規模の大きさだ。

 縦の長さも横の長さも、二キロか三キロはありそうだ。

 オレは言った。


「よしローラ。服を脱げ」

「はいいっ?!」

「安心しろ。オレも脱ぐ」


「むしろ余計にダメなやつでしょ?!

 確かにアタシは魅力的だけど、初めてが外だなんて……!」


 オレはローラの頭を掴み、オアシスに突っ込ませた。

 ばちゃあんっ!

 水飛沫。


「へぼぼぼっ、ごぼオオッ! おぼれおぼれ…………ガバババ、ゴボオォ!!!」


 適度にオアシスを味わわせ、引きあげる。


「目は覚めたか?」

「むしろ眠りかけたわよっ! ケーマのドエスッ!!」

「それはよかった」


 オレは話がやりやすそうな、フェミルとロロナに布地を渡した。


「「これは……?」」

「水着だな。オアシスに行くと聞いて持ってきた」

「「…………(もじもじもじ)」」


「どうした?」

「贈り物はうれしいのだが、

 わたしが所持している球は、水にいれると使えなくなってしまう……」

「置いてけば?」

「武具に等しい道具を置いていくことには、少々不安とためらいが……」


 ロロナらしい発言だった。

 すこし固い気もするが、この真面目さは尊重したい。


「フェミルは?」

「わたしは……、その……」

「その?」


「恥ずかしいです…………ぴょん」

「水着だよ?」

「水着って、下着と変わらなくないですか……?」


 フェミルは頬を赤く染め、上目使いでオレを見た。

 その瞳は、いじめられたみたいにうるんでいる。

 かわいいなぁ。

 オレは頭をくしゃりと撫でた。


「はうっ?! ひあっ、ケーマさまっ?!」


 ついでにおっぱいも揉んだ。


「ケーマさまあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 かわいいフェミルは、真っ赤になって悲鳴をあげた。

 だけど尻尾は振られてた。

 犬とウサギの獣人のハーフであるフェミルは、ウソをつくことができない。

 基本的な感情は、全部尻尾に現れる。

 オレは改めて水着を渡した。


「とにかく着てくれ。

 オアシスには入らなくてもいい。

 個人的に見たいから」


「ケ……ケーマ殿らしいと言えば……」

「らしい……ですね」


 ロロナとフェミルは、大人しく服を脱ぎ始めた。

 ローラがオレの服の裾を引っ張る。


「アタシにはっ?!」

「ほしいのか?」

「みんなが持っているのにアタシだけ……ってのはさびしいじゃない!!」

「オマエらしいな」


 オレはほがらかな笑顔を浮かべ、用意していたローラ用の水着を渡した。

 即ち――。


 バンソウコウ二枚。


「ふええっ?!」

「これがオマエ用のだ」

「水着ぃ?! ねぇコレ水着ぃ?!?!」


「水着でなければなんなんだ」

「バンソウコウよ! それも二枚しかない!!」

「まぁ、騙されたと思ってつけてみろ」


「ヘ……ヘンなものじゃないってこと……?

 魔法的な力で、ぶわって綺麗な水着になるとか……」

「……」


 オレはあえて答えなかった。

 なにも言わずに、黙ってローラを見続ける。


「しししし、信じるからね!!」


 ローラがそう言ったので、背中を向けて着替えを待った。

 衣擦れの音がする。

 上着を脱ぐ音、下着を脱ぐ音。

 みんなが着替えをしているシーンは、想像だけでなかなかにエロい。


「と……整ったぞ……」

「はうぅ……」


 声がしたのでふり返る。

 そこには水着のロロナとフェミル。


「や……やはり、恥ずかしいものがあるな……」

「はうぅ……」


 ちゃんとした水着であるというのに、ふたりは胸を隠していた。

 フェミルの水着は、パレオのついたかわいい水着。

 露出度は控えめで、上品な感じだ。


 ロロナの水着はスポーティ。

 タンクトップ風の上に、ハイレグに近い下だ。

 色は白。

 鮮やかな白は、ロロナの肌によく似合う。


 ちなみにロロナは真面目であるので、太ももにナイフや各種の球が入ったホルスターをつけていた。


「ふたりともいいじゃん」

「そっ、そうっ……」

「でしょうか……?」


「もっとしっかり見せてくれよ」

「ケーマ殿が、言うのであれば……」


 ロロナは胸を隠すのをやめ、色々なポーズを取ってくれた。

 腰に手を当てたモデル立ちとか、三角地帯の水着がいやらしくなる体育座りとか、いろいろだ。


「いいねいいねぇ~~~」

「一応衣類は身に着けているのに、裸よりも恥ずかしい気が……」


 終始顔を真っ赤にしてたが、それも含めていい感じだ。

 その時だった。


「ちょちょちょちょ、ケーマ!!!」

「なんだよ」

「どういうことよ! もうほんと……どういうことよぉ!!!」


 そこにいたのはローラであった。

 二枚のバンソウコウで乳首を隠し、両手で股間を押さえている。


「このバンソウコウ、つけたら魔法的な力でブワーってなったりするんじゃないのっ?!?!?!」

「誰もそんなこと言ってないじゃん」

「ふえっ?!」

「いやだから、言ってないだろ?」


「確かに言わなかったけど……けどおぉ!!」

「つーか元がバンソウコウって時点で、水着になったとしてもつけないだろ……」

「ふえぇん! ケーマのばかあぁ!!!」


 ローラは腕を振りあげた。

 バンソウコウは乳首に張っているため、股間を隠すものは両手だけだった状態で、両手を丸ごと振りあげた。

 

 バカかコイツはっ?!


 知ってはいたけど! バカだってこと、知ってはいたけど!!

 それにしたって限度があるだろっ?!?!?!

 オレを叩こうとしてきたローラの手首を咄嗟に掴み、できる限り冷静に言ってやった。


「いや……オマエ、丸見え……だぞ?」

「ふえ?」


 なんのことかわからなかったらしい。

 アホの子のローラは、きょとん顔でオレを見た。

 いくらオレでも、具体的な説明はしにくかった。

 なので目線を、ローラの下半身に落とした。

 頭の中身と同じくらいに、お子さまな下半身に。


「……」


 ローラはきょとん顔のまま、視線を下半身に落とした。


「い……」


 そして顔を赤くして――。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 と叫び、ぺたんと座った。

 足を閉じ、大切なところを両手で隠す。


「ケーマのばかっ! ほんとばかっ!

 ドスケベえっちで、ヘンタイすけべえぇ!!」

「ドスケベなのは認めるが、ヘンタイではないだろ」


「確かに我々という存在は、父母がそういうことをした結果として、この世界に誕生しているわけであるしな……」

「ヘンタイでは……、ございませんね……」


「そういうことだ。

 スケベとかえっちとか、いやら紳士は認めるが、断じてヘンタイではない」

「なんでもいいから服取ってきてえぇ!!」


 かわいそうなローラは、かわいそうな勢いで叫んだ。

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