もはや彼女は駄女神ですらなく。

 ゼフィロスは指を鳴らした。

 Xの形をした張りつけ台が、ロロナとリシアを仰向けにする。

 足もカパりと、羞恥の形に開かされた。

 リーゼルが、ふたりの足の付け根に霧吹きをかけた。

 ピンク色の液体が、敏感なところを濡らす。


「これは衣服を食べて溶かす極小スライムでしてねぇ……。

 ただ脱がすより、ある種のおもむきがあるでしょう?」

「ひいっ……」

「くうッ……」


 リシアとロロナは身をよじる。

 コンマ一ミリにも満たない極小のスライムの触感が、絶妙にむずがゆい。

 リーゼルの羽で理性を麻痺させられていることもあって、吐息が荒ぶり体が熱を帯びていく。


「ぐうッ、くッ、ううぅ……!」


 手を動かすが拘束されてる。

 足を動かすが拘束されてる。


「んんッ、んんぅ……!」


 背筋を大きくのけぞらし、快楽の予兆のようなものに耐える。


「それではそろそろ、女神の使徒をこちらへ引き込むとしようか」

「はい、ゼフィロス様」


 ゼフィロスとリーゼルが、リシアとロロナの足に手をかけた。


(ベルクラント様……)

(ケーマ殿……)


 ふたりの目からこぼれた涙が、頬を伝った。

 その時だった。


 ピー! ピー! ピー!

 警報虫の鳴き声が響いた。

 三〇センチぐらいのカナブンのような、緑色の大きな虫だ。

 ナワバリ意識が強く、外敵がくると鳴いて知らせる。

 ゼフィロスに限らずそこそこの金持ちは、この虫をカゴに入れ、等間隔に配置していたりする。

 ケーマとローラが下の階で無視した虫と同じ種類だ。


「侵入者か……」

「そのようですね」


 ゼフィロスは指を鳴らした。

 魔法石で作られたビジョンボードに、ケーマたちの姿が移る。

 壁からでた槍を素手で掴んで放り捨て、毒ガスを食らっても平然とし、鉄球を真正面から砕いていた。

 服を着ていない上に股間が輝いているゼフィロスであるが、真剣な眼差しでケーマたちを見て言った。


「あの力……神の加護を受けているな」

「ボクと同じ存在――ということですね」

「しかし神本体は、きていないようだな」


 ローラは神に入ってなかった。


 神なら当たり前に持っているような、神々しい雰囲気的なものをまったく持っていなかったからだ。

 全裸の変態神から見ても、『あれは女神ではない』となるローラ。

 恐るべき駄女神であった。


 ゼフィロスとリーゼルが見ているあいだにも、ケーマたちは進む。

 階段部分が終わったあとは、番人が守る平たいゾーンだ。


「ジェレイムのところまで到達したか」

「やつはゼフィロス様が番人として置いてあることからわかる通り、なかなかの強者。格で言えばボクと同じの女神の使徒であろうとも、あの空間で戦う限りはそれなりに苦戦を――」


『ぐぎゃああああ!!』

『熱いぎゃっ! 熱いぎゃああっ!!!』

『体が体が燃えるぎゃああっ!!』


「あの空間で戦うと苦戦するなら、あの空間では戦わない――か」

「…………」


 リーゼルが憮然と押し黙る。

 ゼフィロスは、ククフハハ、と笑った。


「しかし相手が神の使徒なら、わたしが行ったほうが早いであろうな」

「ボクもそう思います」


 ゼフィロスは、自身の指をパチリと鳴らした。

 転移魔法が発動し、体は光に包まれ消える。

 間もなくして、ケーマたちのところに現れるだろう。


 全裸で。

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