ケーマさんvs準災厄

 魔法袋を取りだした。

 食べ物しか入れることができないが、10キロぐらいは入る品だ。

 中からだすのは、ポップコーン。

 軽く摘まんで――食べる。


「おやつを食べている場合ですのっ?!」


 リシアがなにか叫んでいたが、気にせずに咀嚼する。

 てれれ、てってってー。

 レベルがあがった。


 レベル    1555→1556

 HP      21321/21321(↑7)

 MP     21074/21074(↑8)

 筋力      21555(↑8)

 耐久      23851(↑3)

 敏捷      21579(↑7)

 魔力      20412(↑6)


 アップの比率は大したことない。

 しかしポップコーンには、これがある。



 習得スキル

 自爆LV1 1/300



 ローラに譲渡してしまったせいでなくなっていたが、覚え直した。

 次に手ごろな石を拾う。

 手のひらに、意識を集めた。


(スキル譲渡……!)


 そして――

 


 ぶん投げるっ!!



 レベル1500を誇るオレによって投げられた石は、時速200キロオーバーで突き進むっ!

 三〇〇メートルは離れたガーゴイルにぶつかって――。

 


 どがあぁんっ!



「よしっ、もう一発」


 ポップコーンを食べる。

 てれれ、てってってー。

 レベルをあげる。

 石を掴んでぶん投げて――。



 どがあぁんっ!



『GIGIっ?!』

『Kiッ!』

『Giiiiiii!!』


 ガーゴイルたちが、戸惑ったり怒ったりした。


 どがあぁんっ!


 そして戸惑うガーゴイルが、爆弾石で爆発する。


「ロロナさん、岩を斬ることはできますかっ?!」

「得意だっ!」

「それならあっちの!」

「うむっ!」


 ロロナとフェミルが、すこし離れた岩のところへと向かった。


「そういうこと、ですわねっ!」


 リシアもうまく察知して、ふたりへとついていく。


「えっえっ、なにっ?! どーいうことっ?!」


 ローラはひとり、あたふたしていた。


「ハッ!」


 ロロナが鋭く剣を抜く。

 目にも止まらぬ早業は、人が座れるほどの巨岩を無数の箱に変えた。

 箱状の石を、フェミルが拾ってぽいっと放った。


「ハアアッ!」


 ロロナは再び剣を振るった。角が取れて丸くなる。

 それは地面に落ちることなく、リシアの両手に納まった。

 とてててて。リシアは必死に駆け寄ってくる。


「ケーマさま! 新しい石ですわっ!」

「よし」


 オレは掴んでぶん投げた。

 一際大きい個体が、こちらに突撃していたが――。

 

 どがあぁんっ!


 背後に控えていたドラゴンが、次元の穴に戻っていった。


「ドラゴンのほうは、分が悪いと思ったら撤退する程度の知恵はあるんだな」


 オレはポップコーンを食べながら、のんきにつぶやき石を投げた。


 どがあぁんっ!


 今度はヒットしなかったものの、音の衝撃で四体がよろけた。

 知能の低いガーゴイルも、三分の一が怯み始める。


『戯iiiiiiiiiii!!!』


 だがしかし、ボスと思われる赤いガーゴイルがキレた。


『GIGYOッ?!』


 逃げようとしていたガーゴイルの首をハネる。


『戯III! 戯戯、Giiiiii!!!』


 耳障りな怪音を発し――。

 


 突っ込んできたっ!!



 策があるのか単なるバカか。確かめる意味でも石を投げた。


『奇異ィッ!!』


 怪音を発したボスは、宙でカマをぐるりと振った。

 六角形のバリアがでてくる。


 どがあぁんっ!


 石は爆発したものの、ボスは完全に無傷。

 作ったバリアを盾にして、その横を迂回。

 そしてまっすぐ突っ込んでくるっ!!

 隣のリシアが、絶望の顔でつぶやいた。


「今の爆発を防ぐバリアを瞬時に張ってしまうなんて……。Aランク級のモンスターですわ……!」

「そんなヤバいのか?」

「平均的な冒険者であれば、一〇〇人単位でパーティを組んで、それからどうしようかと話すような相手ですわっ!」

「そうなんだ」


 オレは右手をツイッと伸ばした。

 マナを溜め、ウインドショットをぶっ放す。

 空気を圧縮して放つ、風の銃弾である。

 ボシュンッ!

 ボスの頭は吹っ飛んだ。


『『『…………』』』


 ガーゴイルたちは、しばし唖然と押し黙り――。


『『『Gikiiiiiiii!!!!!』』』 


 悲鳴をあげて逃げだした。

 我先に、我先に。穴の中に帰っていく。

 リシアが叫んだ。


「今の魔法はなんですのっ?!」

「見てわからなかった?」

「破壊力と性質は、上級魔法のウインドキャノンにそっくりでしたわ!

 しかし上級魔法なら、詠唱時間が必要ですわ! それがなくて今の威力ということは…………」


 リシアはひとり、考え込んでから叫んだ。


「精霊さまと、魂の契約をかわしていらっしゃるのですわねっ?!

 魂の契約をかわしているなら、上級魔法程度は精霊さまのお力をお借りすることでどうにでもなりますものっ!!!」


 知らん設定が飛びだした。


「しかし魂の契約をするには、精霊王に認められた力と人格が必須。

 ケーマさまは、それを身に着けていらっしゃったのですね……♥」


 リシアは、祈るように両手を重ね、きらきらとした瞳でオレを見てきた。

 悪い気はしないでもないが、騙すのはよくないので言った。


「そんなもんしてないぞ」

「はにゃっ?!」

「そもそも今のはウインドショットだ。キャノンじゃない」

「ウインドショット?! 最低限の素質さえあれば、五歳の子どもでも放てるというっ?!」

「ウインドショットだ」

「はにゃああっ?!?!?!」


 リシアの口があんぐり開き、酸欠の金魚みたいにパクパクとなった。


「まぁ風魔法自体、けっこう練習してたからな」

「確かに風は、空を飛べたりなどして便利ですものね……」

「いや、違う」


 ピッ。

 オレはフェミルとロロナのほうに、人差し指と中指を揃えて立てた。

 ふたりのスカートが風でめくれる。


「きゃああああああっ!」

「ふわあぁぁぁぁぁんっ!!」


 ふたりは、真っ赤になってスカートを押さえた。


「かわいい女の子のスカートをめくる。

 これに勝る風魔法の使い方があるであろうか……」

「120ダースはございますわぁ!!」

「120ダースを越えるプレイを用意できるとか、オマエはどんだけエロエロなんだよ」


「そういう意味ではございませんっ!

 敵の攻撃を風で軌道をズラすとか、花の香りで広場をいっぱいにするとか、そういう使用方法のお話ですわぁ!」


 リシアは両手を握りしめ、ぷんぷんぷん○(>△<)○っと怒った。


「フェミルさまとロロナさまも、もっと怒るべきですわぁ!!」

「しかしお相手は、ケーマさまですし……」

「恥ずかしくはあるものの、イヤであるかと言われれば……」

「むしろ……」

「もっと激しく、乱暴だろうと……♥」

「あふぅん……♥」

「ふふふっ、ふしだらですわぁ! 乱れてますわぁ!

 物質主義の方々は、やはり間違っていると言わざるを得ませんわあぁ!!!」


 リシアの叫びが、青空の下に木霊した。


 ちなみに、ガーゴイルの親玉は普通に食べた。

 ほかのガーゴイルは爆散していてどうしようもなかったのだが、親玉だけはジューシーな七面鳥っぽくなっていたのだ。

 焼き鳥のような味をしていて、羽のところがコリコリとしていた。

 てれれ、てってってー。

 レベルも当然アップする。

 


 レベル    1556→1656(↑100)

 HP      22121/22121(↑800)

 MP     21854/21854(↑750)

 筋力      22375(↑820)

 耐久      24535(↑684)

 敏捷      22389(↑810)

 魔力      21132(↑720)



 習得スキル

 対物理バリアーLV4 250/3000

 対魔法バリアーLV3 200/1500

 有翼飛行の技術LV3 98/500

 飛行鎌LV4 330/1500

 火炎弾LV2 28/100



 リシアが言っていた通り、かなりの実力者だったようである。

 そしてオレが注目したのは、有翼飛行の技術。

 これってつまり、飛べるんだろうか。

 と――思ったが。


 鑑定・有翼飛行の技術。

 持っているツバサでうまく飛ぶ技術。


 自前でツバサを持っていることが前提だった。

 ざんねん。

 まぁしかし、バリアーふたつはかなり有効そうである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る