フェミルの成長とパンツ。
オレはフェミルを鍛え続けた。
朝は準備運動代わりの基礎トレをやってから、ギルドへと向かう。
火山や道中の森で達成できる依頼を受けて、街をでる。
オレのスキルで敵の気配を察知して、アイスニードルをぶっ放させる。
レベル17のフェミルだが、魔力だけならEランク冒険者にも匹敵する。
弱点をつけば、大体の敵は一撃だ。
ぶっ倒れるまで続けさせ、ぶっ倒れたら背負って帰る。
「ケーマさん……」
「なんだ?」
「ありがとう、ございます…………」
「気にするなよ」
「はうぅ……」
お尻の尻尾がゆれ動いていることが、なんとなくわかった。
しかし急激な成長には、欠点もあった。
起きてこないフェミルの部屋に入ると――。
「あうっ、ううっ、あうぅ~~~~~」
フェミルは胸元を握りしめ、喘ぐかのようにうめいてた。
「フェミルっ?!」
ローラがこめかみに指を当て、知識の泉にアクセスを入れる。
「成長痛……らしいわね」
「成長痛?」
「急激にレベルをアップさせると、体が変化についてこれなくって痛みをもたらしてしまうらしいわ」
「ちなみに、いくらぐらいあがったんだ?」
「四ね」
「四でそんな痛くなるのっ?!」
「ふっ……普通は、そうみたいね」
「オレなんて、朝飯で一〇はあがるのに」
「アンタのスキルは、そんだけすごいってことよ!!」
「なるほどなぁ」
オレはうなずき、話を戻した。
「それでフェミルの症状は、肉体がダメージを負っているってことでいいのか?」
「結論的にはそうなるわね」
オレは、フェミルに手をかざして言った。
「ヒール」
「はう……?」
「これでどうだ?」
フェミルは、両手をグー、パーと握りしめて言った。
「治りました!」
「それなら今日も訓練いけるな?」
「はいっ!!」
「本当にチートね……」
ローラはあきれていたりしたが、オレたちは火山へと行った。
およそ一週間かけて、フェミルの冒険者ランクがEランクに到達するまで面倒を見た。
そしてEランクへとあがったフェミルに、オレは言った。
「そろそろ、ひとりでも大丈夫だな?」
「はいっ!」
フェミルは、ぺこっ! と頭をさげた。
「ありがとうございます! ケーマさまっ!!」
呼び名もいつしか、『さま』になってた。
「ご恩は死んでも忘れませんっ!!
冥府を渡って生まれ変わったそのあとも、ケーマさまをお慕いしますっ!!」
「そこまでか……」
「はいっ!!!」
フェミルは元気にうなずいた。
◆
一週間がすぎた。
オレはローラと、宿屋で休憩を取っている。
ベッドの上で、ローラがオレの上にまたがる。
「きっ……気持ちいい? ケーマ」
「ああ」
オレはうなずく。
ローラも静かに、体を動かす。
「んっ、んっ、んっ……」
そこはかとなくエロい声だが、18禁はやっていない。
ただのマッサージである。
ローラがうつ伏せになったオレにまたがり、背中を押してくれている。
まぁただエロくないのかと言うと、股の付け根や太ももが、オレの腰に密着していたりするわけで…………。
まぁ……。
うん。
「終わったよ!」
「そんな感じだな」
「ごほうびちょーだい! ごほうび!!」
あぐらをかいたオレのヒザを、ローラはガクガクとゆすった。
「よし」
オレは箱を取りだした。それの中には、たこ焼きみたいな食べ物が六つ。
丸パン焼きだ。
つまようじで刺して、ローラの口に入れてやる。
「おいしいぃ~~~~~~~~~~~~~!!!」
ローラは、ほっぺたに手を当てて悶えた。
かわいい。
普通にしてれば、コイツは本当にかわいい。
だけどつい、ほっぺたをつねってしまう。
「みいぃ~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
生意気な時のローラはいびりたくなるが、かわいい時のローラはいじめたくなる。
我ながら、とっても困ったやつである。
「ケーマの、いじわる……」
涙目でジト目になっているのが、また愛らしい。
「クリーム入りの特性丸パン食わせてやるから許せよ」
「ほんとっ?!」
「ああ、本当だ」
「えへへぇ~♥ ケーマあぁ。大好きいぃ♥」
しかしすぐさま笑顔になって、オレにぺたりとくっついてくる。
はあぁ……かわいいなぁ。このクソ駄女神。
オレは思わず抱き返し、心の底から愛でてしまう。
そんな感じにイチャついてると――。
「ケーマさまっ!!」
フェミルがドアをあけてきた。
「あっ、おっ、お取込み中でございましたか?」
「気にしないでも大丈夫だ」
「はいっ!」
フェミルは元気に返事をすると、部屋の中に入り込んできた。
「ケーマさまのおかげでEランクにアップしたわたしは、Eランクの依頼をこなしてきました!!」
床にぺたりと座り込み、皮袋から金貨をだした。
「金貨三枚! つまり三〇〇〇バルシーです!!」
「そうだな」
「お受け取りください!!」
「フェミルの生活は?」
「心配してくださるんですね……!」
「普通するでしょ?!」
「おやさしいっ……!」
「普通でしょ?!」
「普通にあつかってくれるかたでさえ、かつてのわたしにはいませんでした……!」
フェミルは胸元を握りしめ、感極まった目でオレを見た。
なんとなくいたたまれなくなったオレは、丸パン焼きをローラに食わせた。
ローラは、もぎゅもぎゅ噛んで飲み込む。
「ケーマはけっこう、すごいことやってると思うわよ? いちおー言っておくけど」
確かに、まとめるとこうである。
・タチの悪い客に難癖つけられているところを助けた。
・ファイアーボールしか使えなかったところに、アイスニードルも学習させた。
・ファイアーボールも強化した。
・そこそこ強くなるまで、面倒を見た。
客観的に言うと、すごい部類に入ると思う。
ちなみにフェミルのレベル自体は、こんな感じになっている。
名前 フェミル=クロケット
職業 赤魔術士
レベル 32
HP 137/137
MP 360/411
筋力 60
耐久 66
敏捷 166
魔力 471
メインスキル
アイスニードルLV2 41/150
火炎魔法 LV2 8/150
初めて会った時のほぼ二倍。
普通だったら、二年か三年はかかる勢いの成長らしい。
ギルドのおねーさんも、目を見開いて驚いていた。
ちなみに平均的な赤魔術士は、こんな感じだ。
名前 平均赤魔術士レベル32
HP 130/130
MP 177/177
筋力 64
耐久 67
敏捷 132
魔力 189
筋力や耐久といったパラメーターこそ平均と大差ないが、魔力とMPが倍を超えてる。
もう本当に、すさまじい才能である。
このまま行けば、かなり有名な魔術士になるんじゃないだろうか。
「ケーマさま……?」
フェミルに声をかけられて、オレはハッと意識を戻した。
「このカネは、今日の稼ぎの全部なのか?」
「宿代と食事代である、五〇〇バルシーだけはいただきました!!」
「それだけ?」
「はいっ!!」
「服とか、装備は……?」
「いりません!」
「宿屋以外での、食事や、おやつは……?」
「食べません!」
マジでっ?!
「わたしに使うおカネがあるなら、一バルシーでもケーマさまに尽くしたいですぅ~~~。はうぅ~~~~~~ん」
フェミルは、とっても健気なことを言う。
もはやオレの信者と言っても、過言ではなかった。
「パンツ見せてとか言ったら、普通に見せてくれそうな勢いだな……」
「はうっ?!」
「えっ?!」
しまった。
本音がうっかり、ひとり言として漏れた。
フェミルは温泉にでも浸かってるかのように、顔を赤くして言った。
「ケーマさまは、おパンツが…………お好きで?」
「まぁ、それなりに」
「ほんとに、えっちなんだから……」
女神なローラが、すねたようにつぶやいた。
「それは否定しない」
オレはローラを背中から抱きしめ、おっぱいを揉んだ。
「きゃあっ!」
悲鳴をあげたローラだが、抵抗はしない。
「もう、ばか……。えっち。
アタシの信者じゃなかったら、三回ぐらいは蹴り殺してるわよ……? あんっ!」
それでも信者ならさわらせてくれるあたり、オレのローラはマジ女神。
「それでフェミルは、パンツ見せてくれるってことでいいの?」
「申し訳、ございません……」
「ん?」
フェミルはゆっくり立ちあがり、オレにくるりと背を向けた。
壁のほうまで歩いて行って、背を向けたままスカートに手をかける。
現れたのは――。
お尻。
パンツという名の布がない、生のお尻そのものだった。
フェミルが、スカートを戻して言った。
「このような事情ですので……。おパンツを、お見せすることは…………」
「なんではいてないのっ?!」
「一枚しか持っていなかったおパンツは、ケーマさまに捧げてしまいましたので……」
「つまり今まで、ずっとノーパン?!」
「はい…………」
フェミルは太ももをこすり合わせて、もじもじとしながらうなずいた。
オレはふたりに、パンツを買って与えてやった。
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