ギルドに到着

「ケーマまあぁ、早く早く早くうぅ。アタシ死ぬ。アタシ死ぬうぅ!!」


 駄女神ローラは、泣き叫ぶながらオレの服をグイグイ引っ張る。


「大丈夫だろ。女神なんだし、オマエ」

「もし万が一、大丈夫じゃなかったらどうするのよおぉ~~~~~~~~」


 泣き叫ぶローラに連れられて、オレはギルドへと向かった。

 

  ◆


「ダズゲデグダザイ!!」


 駄女神ローラが、顔をぐしゃぐしゃにして叫んだ。


「ジヌんデズ! ワダジ、ごのままだどジヌんデス!!」

「ええっとぉ……」

「入り口のところで身分証がないって言ったら、ポイズンストロベリィを飲まされたんですよ」

「あー、あー、あー」


 受け付けのおねぇさんは、納得したかのようにうなずく。

 白い丸薬を、受付けのカウンターに置いた。

 数は二粒。


「ふああああああああああああんっ!」


 ローラは一粒を口に放り込み、もう一粒をオレに渡した。


「ケーマも飲んでっ! ケーマも飲んでえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 ああんっ! ああんっ! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」


 なんというのか、錯乱しすぎて人外になってる。


「とりあえず落ち着け」

「んにゅっ……」 


 オレは駄女神の口と鼻をふさいで落ち着かせてから、白い丸薬を飲んだ。

 てれれ、てってってっー。

 お約束のようにレベルがあがる。


 レベル     1276→1279

 HP    10948/10948(↑24)

 MP    10086/10086(↑20)

 筋力      9940(↑20)

 耐久      9864(↑18)

 敏捷      9846(↑21)

 魔力      9294(↑19)

 

 習得スキル

 解毒体質LV1 1/50

 上昇スキル

 なし


 毒物耐性がアップするかと思ったら、違うスキルが身についた。

 名前から察するに、毒状態になったあとの治りが早いってところかな?

 思っていたら、説明がでる。


 ◆解毒体質

 毒状態から治癒にかかるまでの時間を減らす。


 まさしく想像通りの効果だ。

 酒に酔っ払わないようになるのが、毒物耐性。

 酔いから覚めるのを早くしてくれるのが、解毒体質って言えばわかりやすいだろうか。


 つかレベル1の熟練度1の解毒剤でなんとかなるあたり、毒で死ぬっていうのはやっぱりウソのような気がする。

 確かに毒ではあったから、おなかが痛くなったりはするんだろうけど。


「それにしても、ちょっと手荒な脅しでしたね」

「以前は、いずれかのギルドに早く行くよう口頭でうながしていたのですが、後回しにするかたが続出してしまったので……」


 なるほど。

 まぁいいや。


「とにかくそういう話ですので、登録させてもらえると助かります」

「登録料が、三万バルシーかかりますが……」

「三……万……っ?!」

「身分を証明するカードですからね……」

「ないんですけど……」


「それでは、こちらの借用証明書にサインをお願いします」

「貸してくれるんですね」

「おカネがない人を追い返して盗賊になられますと、余計に費用がかかりますから」


 おねーさんは、衛兵さんと同じことを言った。

 これについては、もう共通認識なんだろうな。

 ありがたい。

 オレは借用証明書にサインを入れた。


「借金って、女神のすることじゃなくない……?」

「いいから書け」

「ふえぇ~~~」


 ローラはぶつくさ言ってたが、オレにほっぺたをつねられると書いた。

 そして説明を受ける。


「まずギルドでは、大きくわけるとAからGまでのランクがあります。

 受けることができるのは、自分と同じかそれ以下のランクの依頼だけです」

「はい」

「Fランクまでは、同じランクの依頼を五回クリアすることで、ランクをあげることができます」

「Eランクからは違うんですか?」

「Eランク以上からは、同じランクの依頼を五回クリアした上で、ランクアップ試験に合格するのが一般的です」


「一般的ってことは、例外もあるんですか?」

「Bランク以上の冒険者であれば、FランクやGランクのかたを推薦でDランクにあげることも可能です」

「なるほど」


「ただし推薦された冒険者が不適格と判断された場合、推薦した冒険者のかたにはペナルティがあります」

「ペナルティがないと、カネをもらって変なの推薦するやつとかでてきそうですもんね」

「理解が早くて助かります」


 そんな感じで説明を受けたが、困るところは特になかった。


「依頼を受ける際は、右手側に見える掲示板に張られている依頼票を持ってこちらへときてください」

「掲示板の色が、違うように見えるんですが?」


「緑のボードは、GランクからFランク。

 青のボードは、EランクからCランク。

 赤のボードは、それ以上のランクの依頼が張られております」


「合理的ですね」

「ありがとうございます」


 そして最後に、カードをもらった。

 カードの端に指を押しつけ魔力を馴染ませることで、自分専用のカードになるという優れ物である。

 銀色にキラキラとしていて、心躍る。


「きれぇー……」


 それはローラも同様だった。

 銀のカードを太陽に透かして、キラキラ顔で見つめてる。


(ちゃんとしてれば、けっこうかわいいのにな……)


 そんな風に思ってしまうぐらいに、絵になっていた。


「せっかくカードもらったんだし、なんか依頼を受けてくか」

「国士無双に知の女神なるアタシが、いつまでもGランクなんておかしいもんね!」


 オマエは恥の女神だろう。

 そんな風にも言いたかったが、やる気になっているのはいいことだ。

 オレはあえて突っ込まず、緑色の掲示板へと向かった。

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