そのニワトリは、イノシシよりも強く vs白虎

 三日がすぎた。

 オレはまた、そこそこ強くなっている。


 レベル   663→843

 HP     6703/6703(↑1407)

 MP    6481/6481(↑1116)

 筋力    5720(↑1225)

 耐久    5535(↑1400)

 敏捷    5522(↑1130)

 魔力    4947(↑1320)


 なんせ食べるだけでレベルアップがあがってしまうのだから、イヤでもレベルはアップする。

 困るわー(得意げ)

 もうオレ、強くなりたいとか思ってるわけじゃないのに。

 困るわー(得意げ)


 自分で言ってて、とてもウザいぜ!


 つーかそろそろ、森をでたいな。

 今の暮らしもダメってわけじゃないんだが、単調で飽きてくる。

 話し相手がローラしかいないってのも、個人的には微妙だ。


「ケーマ!」

「どうした? ローラ」

「アタシ、ひさしぶりにチキンが食べたい!!」


「女神ポイント消費して毒物耐性LV1をつけたから、今は普通に食えるんだもんな」

「うん!」

「じゃあ取りに行くか」

「鶏肉だけにね!」

「?」


「鶏肉を、とりにぃーく!!」


 拳を握って叫ぶローラは、とっても得意げであった。


「…………」

「ななななっ、なによその顔!!

 どうして腐ったウジムシを見るような目で、アタシのことを見てるのよっ!!

 せめて発酵のウジムシを見ている目にしてちょうだい!!」


「発酵だったらオッケーなのっ?!」

「よくはないけど、腐ってるよりはマシよ!!」


 それで妥協オーケィなあたり、発酵ウジムシのローラはアホの子であると思った。

 まぁいいや。

 鶏肉を取りに、いつもの狩場へと向かった。


 成長の早い草木をより分け歩くこと一時間。

 狩り場が近づいてきたな……と思った刹那。

 ゾク――と背筋に怖気を感じた。


「クッ!!」


 ローラを抱いて横に跳ぶ。

 オレが立っていた位置に、すさまじい衝撃が通った。

 衝撃の余波で、地面が抉れる。


 〈我の突撃チャージを回避するとは、『朱雀』を倒しただけのことはあるようだな……〉


 冥王のごとき禍々しい声を発したそいつは――。

 


 ニワトリ。



 灰色のトサカを持った、普通サイズのニワトリだった。

〈我はニワトリ四天王最強のニワトリ。暴虎馮河の白虎よ〉


「食われた仲間の仇討ちか……?」

〈この世はつまり弱肉強食。弱き者が肉になるのは、自然のことわり

 討たれたからと言って、仇を取るなどとは、致命にズレた考えよ……〉


「それなら、どうして……?」

〈弱き者が肉となるのが自然のことわりであるならば、強き者と相対したいと思うのは、戦士のことわりっ……!〉


 ニワトリなのに、無駄にカッコよかった。

 白虎が力を溜めてきた。

 白い膜のようなオーラが生まれる。


 大地がゆれる。肌に刺すような痛みが走る。

 まるで大気に、亀裂が入ったかのようだ。

 相手はただの、ニワトリなのにっ……!


 白虎が鋭く飛んできた。

 オレはギリギリ回避する。

 オレの背後にあった木が、一撃で消し飛んだ。


 この威力――うりぼう以上!


 白虎はバサリと羽を広げた。

 二度目のチャージを撃ってくる。


「ファイア!」


 オレは火炎放射LV5を放った。

 HP8000。耐久7000を誇るマッドうりぼうですらも一撃で葬った、ハイレベルの火炎。

 が――。


〈ファイア!!〉


 白虎自身も炎を吐いて、火炎放射を相殺してきた。


「クッ!」


 オレは歯噛みし、身をよじる。

 白虎のチャージが、チリッとかすった。


 その一撃は本当に、わずかにかすっただけだった。

 なのに――。


「うわあああっ!!」


 オレの体は吹き飛んだ。

 錐揉み状にスピンしながら、周囲の木々より高く飛ぶ。

 その衝撃で、アバラが二、三本はいった。


 しかも白虎は、攻撃をゆるめない。

 宙に浮きあがったオレに、苛烈なチャージを入れてくる。


「アイスニードル!」

〈ドリルスパイラル!〉


 氷の矢の束をだしても、自身の体をドリル状にしてチャージしてきた。

 でも勢いは、ほんのすこしだけ死んだ。


「チャージスラッシュ!」


 ローラからもらった剣に、マッドうりぼうから奪ったチャージの力を乗せて斬撃を放つ。


 ザグウッ!!

 白虎は、真っ二つになった。


「ハアッ、ハアッ、ハアッ、」


 オレの口から息が漏れ、冷や汗が頬を伝った。

 危なかった。

 本当に、危なかった。


 剣がなければ危なかったし、うりぼうを倒していなくても危なかった。

 信者ポイントを使って剣術を取ってなくても、殺されていた。


 これが……、ニワトリ四天王っ……!


 しかしガチでヤバかったのに、相手がニワトリっていうのが残念だ。

 今後なにか強敵がでても、ニワトリ基準で語られるんだぜ……?


 あいつは白虎(ニワトリ)以上だった。

 これなら……白虎(ニワトリ)のほうが強かったぜ……!


 こんな感じで語られるんだぜ……?


 ちなみに白虎はおいしく食べた。

 ほかのニワトリとは違い、ステーキのように重厚な歯応えがあった。


 てれれ、てってってー。

 レベルもあがる。



 レベル   843→993

 HP     6703/6703(↑2640)

 MP   6481/6481(↑2376)

 筋力    8060(↑2340)

 耐久    8037(↑2502)

 敏捷    7962(↑2440)

 魔力    7467(↑2520)

 

 習得スキル

 暴虎馮河ぼうこひょうがLV6 1200/3000

 ドリルスパイラルLV4 80/500


 上昇スキル

 火炎放射LV6 1500/3000(↑2220)

 毒体質LV2 80/150(↑70)


 ◆暴虎馮河

 ニワトリ四天王白虎の固有スキル。

 突撃チャージの破壊力が、暴虎馮河のレベル数×1.3倍にアップするが、発動中は防御力が十分の一になる。


 ◆ドリルスパイラル

 自身の体を回転させて、攻撃を弾く。



 つよっ!!

 1レベルで1.3倍ってことは、6レベルだとほぼ8倍じゃん。

 防御力も下がるから使いどころが難しいけど、さすがの四天王である。

 ドリルスパイラルも、レベル4と高い。


 レベルのあがり幅は朱雀を下回るけど、スキルの有用性がそれを補っている。

 いやもうホント。


 強すぎるだろ、この世界のニワトリ。

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