スキルやレベルを試してみる vsマッドうりぼう

 剣とスキルの準備を整えたオレは、ローラに尋ねた。


「今のオレで勝てそうな相手で、一番強いやつって言うと、どんなのがいる?」

「今のアンタで国士無双にちょうどいいって言ったら…………マッドうりぼうじゃないかしら」

「マッドうりぼう?」


 ずいぶんと、ファンシーな名前だな。


「正式名称はマッドイノシシなんだけど、子どものうりぼうなまま、大人になっちゃってる感じなのよね」

「ウーパールーパーみたいなもんか」

「うーぱー…………なにそれ」


「地球では、有名だった生き物だよ。幼形成熟って言って、子どもの特徴を残したまま大人になる生き物でもあった」

「そんなのいるんだ……」

「とりあえず、案内してくれ」

「わかったわ」


 オレはローラのあとをついてく。


「ここからが、うりぼうのナワバリね」

「だけど姿が見えないな」

「ナワバリ自体が、けっこう広いからね」

「ふむ……」


 うなずいたオレは、周囲を見やった。

 チョコの木があった。

 枝や幹が、チョコそっくりな色をしている木だ。

 味と風味も、チョコに近い。


 その枝は、けっこう高い位置にある。

 右手をグイッと上に伸ばして、パキリと折った。

 前歯でかじる。サクッと軽い音がして、口の中で溶ける。


 うまい。

 レベルもひとつアップした。


「あっ、ずっ、ずるい!!」

「ほしいなら、自分で取れば?」

「んしょ! んしょ! んしょおぉ!!」


 駄女神ローラは、一生懸命ジャンプした。

 しかしながら背が低い。

 枝に届くことがない。


「ケーマあぁ」

「仕方ない女神だな」

「あーん!」


 オレが爽やかに言うと、駄女神は口をあけた。

 かぷっ!

 満面の笑みで、チョコを食べる。


「うまいか?」

「うんっ!」


 ちゃんとしてれば、けっこうかわいいんだけどなぁ……。

 巨乳だし。


「はぁ……」

「なんでため息?! アタシ今、なにも悪いことしていなくないっ?!」

「オマエって、存在がすでに間違ってるところあるから……」

「ひどくないっ?!」

「ライオンの前でくしゃみしたり、クリオネの前でくしゃみしたのって誰だっけ?」

「それは……、ごめん…………」


 クソみたいな駄女神だけど、謝れるのは偉い。

 オレは頭を撫でてやる。


「子どもあつかいするなー!」


 駄女神は、両手を振りあげて怒った。

 なんてアホな話をしてると、空気がピリッとざわついた。

 うりぼうだ。


「Bururururu…………」


 つぶらな瞳と丸っこいフォルムで愛らしいのに、サイズはビッグで凶悪だ。

 闘牛の牛のように大きく、地面をザッザと前足でかいている。

 オレが間合いに入った瞬間、突撃チャージをかけてくることは間違いない。


(ローラ)

(うっ、うん)


 ローラがオレの手に触れた。

 ステータスが現れる。



 名前 なし

 種族 マッドうりぼう


 レベル   828

 HP     8452/8452

 MP      0/0

 筋力    6805

 耐久    7058

 敏捷    5620

 魔力      0



 強い。

 魔力とMPこそないが、それ以外のパラメーターはオレ以上だ。

 つーか野生のモンスターでこの強さってどうなの。

 この森って、もしかしてすごいヤバいところなんじゃないの?


「ステータスは高いけど、特殊なスキルは持っていないからね。

 スキルをフル活用したアンタだったら、苦戦はしても敗北はしないはずよ」


 なるほどね。

 オレは剣を片手に、前にでた。

 うりぼうが、地を蹴って突っ込んでくる。


「ファイア!!」


 ニワトリ四天王の朱雀からいただいた、火炎放射LV5を発射した。


「Giiiiiiii!!」


 うりぼうは燃えた。

 燃えながら、オレに向かってダッシュしてくる。


 しかしオレにぶつかる前に、力尽きて死んだ。


「えっ?!」


 オレは右手をじっと見る。

 今でた炎、存外に強かった。

 まぁレベル4や5は、達人の領域らしいからな……。

 ニワトリ四天王の朱雀。タダモノではなかったということか。

 寝ているところを奇襲したから、一撃で勝てたけど。


 なにはともあれ、実食タイムだ。

 急所を刺して血を抜いて、焼け焦げになった皮を剥ぐ。


 ピンク色の肉がでてきた。

 鮮やかな色をしたそれに剣を入れると、新鮮な肉はぷるりと弾けた。

 なんというやわらかさ。


 肉を、円形にくり抜いた。

 剣の上に乗せる。


 たき火を作り、じわじわ炙った。

 肉が焼けて湯気が立つ。

 ピンク色のお肉に焦げ茶色の焼き目がついた。

 おいしい匂いが漂ってくる。

 肉の上に溜まった脂が、パチパチと弾ける。


 食べる。

 引き締まった豚肉のような、うま味のある野生の味がした。


 てれれ、てってってー。

 レベルがあがる。



 レベル   563→663

 HP     5296/5296(↑830)

 MP   5365/5365(↑620)

 筋力    4491(↑710)

 耐久    4135(↑700)

 敏捷    4392(↑730)

 魔力    3627(↑620)


 習得スキル

 ハイチャージLV1 30/50


 ◆体当たりの攻撃力が1.5倍になる、常時発動型スキル。



 すごいな!

 一気に100もあがるのがすごければ、習得したスキルもすごい。

 絵面えづらは地味だが、かなり強そうである。

 うり坊の中でも、かなり強い個体だったと見るべきだな。

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