エピソード23「真実の一端」


クレ星についたドーマエは足早に司令官室に向かった。

「司令、何事ですか?急に呼び出されましたが。」

そこにいたのはキジマ、コジマ、イノウエの3名である。そこにドーマエが入ってきた。

「重大な事案だ。この件に関して私はサイゴウ国防議長と電話会議を行い、新しく第二方面艦隊において情報機関、K機関を設立することにした。コジマを情報大佐として私が厳選した機関員30名と機関監督官5名をようする機関だ。」

ドーマエは話を遮ろうとしたが上官なのでそれは控えた。

「そこでだ、お前が今まで研究してきた事件の答えを言おう。オカの事件だ。事件当時、私は後に沈没した駆逐艦タケにて士官候補生の航行訓練の監督をしていた。あの日、オカの乗艦である戦艦ヒラヌマと駆逐艦三隻はここ、クレ星を出港しようとしていた。私はその時にクレ星に戻ってきていたのだ。クレ星士官学校で教官として職員室に戻った私は戦艦ヒラヌマと会わなかったか聞かれた。私は素直に会ったと答えた。そうするといきなり校長が出てきてすぐに士官候補生の乗った駆逐艦、タケとウメに追跡を開始させた。脱走艦は戦艦ヒラヌマ、駆逐艦スギ、マツ、サクラであった。程なく駆逐艦タケの沈没がウメから報告された。直後ウメも消息不明となった。脱走理由は不明だが我々は彼等を逃してしまった。宇宙軍大臣はこれに関していた者全てに箝口令をしいた。そして昨日、大変な事態が発覚した。ソビエト領内で密かに偵察活動をしていたカイダイ型潜宙艦の搭載偵察機が戦艦ヒラヌマ発見を報告してきた。これがその写真だ。この艦隊が艦橋に描いている国旗はソビエト大公国の保護国にあるチルーサ公国の国旗だ。チルーサ公国には最高宮廷顧問としてアクォーンが出入りしていると聞いた。アクォーンとはチルーサ公国の言葉で岡を意味する。まさか奴とは思わないが可能性はある。それを調査する専門機関が新設されたK機関だ。操作範囲はチルーサ公国及びソビエト大公国、そして我国の内部だ。そしてドーマエ、貴様を呼んだ理由はここからだ。貴様は所定の訓練を受けたことに書類の上ではしてある。よって最新鋭空母ゲンブの艦長を命じる。同時にK機関と第二方面艦隊司令部の橋渡しもして欲しい。後はサイゴウ国防議長との橋渡しの役でもあるが普段はいつも通りの軍務で構わん。とりあえずこの秘密をK機関以外でも信頼できる将校にこれを伝えておきたかったのでな。というわけでドーマエ、これを聞いたからには嫌とは言わせん。この極秘任務、受けてくれるな?」

ドーマエはその前に質問をした。

「はっ!ですがその前に一つ質問をしてもよろしいですか?」

「かまわん。」

そう言われるとドーマエはホログラムを指さした。

「はっ!これが戦艦ヒラヌマですよね。コンゴウ級の外観をしています。そしてここの先導する駆逐艦が脱走駆逐艦だとしたら、残りのこのデカイ艦はなんですかね?」

ドーマエが指さした艦はヒラヌマを上回っている大きさでこれは右斜め前の艦上側からとった写真らしいがどうやら巨大な主砲塔が前に四連装が二基背負式に、そして左右の舷の中央に連装が一基ずつ、後方に四連装一基の計十六門の主砲が上甲板だけで確認できる。あの最新鋭戦艦ヤマトでさえ主砲は上下甲板合わせても十五門だ。更に多数の機関砲が確認できる。

「ううむ、これは恐らく新造艦だ。主砲はこの映像を見る限りでは口径はヤマトに匹敵する。更に後方の主砲の後ろにカタパルトとおぼしきものもある。艦名及び艦種、同型艦等の情報は全く入ってきていない。ただ描いている国旗ではチルーサ公国の軍艦であるようだ。」

イノウエがドーマエにその艦の情報を説明する。

「そう言えば大佐、1ヶ月後に皇軍大演習を行うらしい。改装が終わったヤマトも参加するらしいぞ。そこでこの艦、そうだな、主砲はヤマトと同口径とするか、と皇軍が戦った際にどうなるかもデータにとってほしい。頼めるな?」

「わかりました。私は空母ゲンブの配属なので後方からですができる限りの事をします。」

「では、行ってよろしい。ドーマエ大佐、君は本日付で准将に昇進だ。ゲンブは五番大型艦ドックに入ってる。」

「わかりました。ドーマエ准将、退出します!」

ドーマエは自動ドアを抜けて軍港の五番大型艦ドックに入った。

「ドーマエ准将ですか?」

整備士と思われる者が身分を確認してくる。軍人手帳を見せると艦に通された。

「ドーマエ准将の着任であります。」

艦内は閑散としていた。

「君は?」

ドーマエは整備士風の男に聞いた。

「私はこの艦で副艦長をすることになりましたキヨタ中佐です。よろしくお願いいたします。」

「うむ、キヨタ中佐、君は航空畑の出身かね?」

「はい!艦上攻撃機乗りでした。」

「そうか、実をいうとこのドーマエは航空機搭乗員の技量に疎い。そこで君がここの航空隊を指導し、私は艦をみよう。それでいいかね?」

「わかりました。ドーマエ准将、よろしくお願いいたします。」

ドーマエが手を差し出したので彼はそれをとった。

「ところでキヨタ中佐、なんでこんなに乗組員が少ないんだ?半舷上陸にしても少なすぎるだろう。」

「ああ、それは現在この艦の搭乗員は近くのイワクニ分遣隊に集まって訓練をしてます。イワクニの搭乗員がゲンブの搭乗員の約半数、もう半数はカスミガウラから普英土との国際交流が終わり次第合流する予定です。」

「なるほど、本艦の案内を頼めるかな?」

「わかりました。では案内させていただきます。まず本艦の最大の特徴は動く歩道が取り付けられたことです。これで行き来が多少楽になりました。では、こちらに。」

といって突き当りをエレベーターで上がり案内された部屋はコンピューターと二つの席が置いてあった。

「ここはカタパルト制御室です。艦橋と通信して機体を発艦させます。格納庫の前に位置しています。では、格納庫に行きましょう。」

減圧室を通って格納庫に入った。減圧室といっても今は格納庫にも空気があるのでただの通過ポイントである。

「ここが格納庫です。一層の密閉格納庫で多数の気体ポンプにより十五秒で真空にしたり、また逆に空気を充満させることができます。発艦の際にはまず兵装を整えて格納庫内を真空にします。そして甲板にだしてカタパルトで射出します。着艦の際には逆に真空状態の格納庫にエレベーターで機体を運び込み、その後空気で満たします。エレベーターは三基です。機体は零戦36機、九九式艦爆スイセイ36機、九七式艦攻テンザン24機、シンデン偵察機型4機、サイウン偵察機4機の計104機を運用することが予定されています。」

「そうか、では飛行甲板に向かおうか。」

そう言ったドーマエをキヨタは先導して艦内の階段を登った。飛行甲板はかなり広い。

「ここが甲板です。」

一部の惑星で採れる特殊な鉱石から採れる特殊鋼で船体は覆われているが飛行甲板はこの特殊鋼と更に別のフソウ星の衛星で採掘される別の金属の合成金属で覆われている。

「この黒いレールがカタパルトで航空機の前輪もしくは後輪のどちらか、つまり胴体に付いている車輪を設置して、先程見てきたカタパルト制御室のスイッチで射出します。250mの長さの甲板です。では艦橋に行きましょう。」

二人は飛行甲板の艦首から向かって右側にある艦橋に入った。

「艦橋の最上階は艦長室となっておりその下に戦闘指揮所があります。後は通信施設だったり色々あります。艦橋の案内図は艦長室にありますので、又不明なことがあったらお尋ねください。」

「ああ、ならば聞く。格納庫の下には何がある?」

「はい、格納庫の真下には航空機搭載の誘導弾や特別弾等の実弾兵器が、その下は乗員の生活スペース、そして最下層が機関室及び主蓄電室です。」

「そうか、ありがたい。では、本艦は明日にでも近場を航行しよう。搭乗員の練度も確認したいからな。」

「わかりました。では、イワクニに連絡しておきます。それから二週間後にはカスミガウラの部隊も合流できるようです。」

「そうか、では私は荷物を整理するので一時間後に艦長室に来てくれ。」

ドーマエは数少ない私物を鞄から出すと艦長の椅子に座った。

やがてキヨタ中佐がやって来た。

「副長、イワクニとは連絡がついたかね?」

「はい、明朝皇国標準時の0900にクレからすぐ先のクレ星第一衛星付近で着艦する予定です。」

「そうか。わざわざ呼び出してすまなかったな。」

「いえ!失礼いたします!」

キヨタが出ていくとドーマエはベットで横になった。翌朝からの訓練を思い浮かべながら。

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