エピソード14「死の星会戦①」

そのころキンコー要塞では艦隊に緊急出動命令が出された。要塞の廊下をばたばたと兵士が走って自分の艦のあるドックに向かう。

「総員配置につけ!艦長は会議室に集合せよ!」

要塞放送が鳴り響く中会議室はすでに士官であふれかえっていた。

「先ほど死の星付近にて敵輸送船三隻と駆逐艦一隻を発見、イ250がこれを撃沈した。敵の任務はおそらく秘密に航空基地を建設することにある。敵も優秀な部隊を送りこんでいるはずだ。更にイ250を哨戒機が追跡してきた所を見ると既に航空基地は完成しているだろう。そこで我々は早急にこの飛行場を奪取したい。ここは確かに我々の勢力圏内だが敵との中間地帯にも近いからここを整備して補給拠点にすれば二四五恒星系の基地設営後の補給にも役立つ。ということで武装親衛隊二個旅団と陸軍機械兵四個師団、一個戦車旅団で飛行場を制圧する。我艦隊は星へ降り立つ味方の為に付近の宙域を制圧する。敵にとっても要地のため激しい戦闘が予想されるので連合艦隊の総力を上げて決戦を挑む。まずは索敵、こちらの位置は常に知られていると考えた方がいい。少しでも被発見確率を減らすため戦略爆撃機が敵の飛行場を使用不能にする。我々は支援に来た敵艦隊をキンコー要塞の航空隊と共同で撃滅する。全艦出撃!!作戦の成功をいのる。」

イノウエの訓示が聞こえたと同時に各艦の艦長は自分の艦に向かう。艦橋ではスタッフ全員が集中しているのが手に取るようにわかる。

「総員聞いてくれ。艦長のドーマエだ。これより俺達は敵艦隊を撃滅しにいく。この作戦は皇国の今後を決める重大な戦いになるだろう。皆、この戦いに参加できることを誇り、皇国のために頑張ろうではないか!機関始動!総員戦闘配置につけ!」

ゆっくりとムツがドックを出た。そしてイノウエが全艦に指揮系統を伝達した。


主力艦隊(砲戦艦隊)

司令官 シゲヨシ・イノウエ元帥

旗艦 ムツ(戦艦)

戦艦 ヒュウガ、ヤマシロ、フソウ、シキシマ、カワチ、キイ、マツシマ、イツクシマ、ハシダテ、アズマ

巡洋艦 チクマ、アシガラ、ハグロ、アソ、ヒダカ、イシカリ

駆逐艦 八十隻

空母 無し

潜宙艦 無し


機動部隊

司令官 チューイチ・ナグモ元帥

旗艦 タイホウ(空母)

戦艦 無し

巡洋艦 トネ、エド、ナチ

駆逐艦 六十隻

空母 アカギ、カガ、ショウカク、ズイカク、ジュンヨウ、リュウホウ、ショウホウ

潜宙艦 無し


潜宙艦隊

司令 ノボル・ヒラタ大将

旗艦 カ86(潜宙艦)

大型潜宙艦 カ87~90

中型潜宙艦 イ248~268

通常艦艇 無し


機動部隊と潜宙艦隊が索敵を行っている。主力艦隊は航空機と潜宙艦が減らした敵艦隊を撃滅すべく控えていた。

「イ257より入電!「我敵艦隊発見セリ、空母十余リ、巡洋艦及ビ駆逐艦多数。座標ヲ送信ス、確認サレタシ。」そしてカ89からもです。「敵艦隊発見、戦艦八、巡洋艦及ビ駆逐艦多数。座標ハ先ホド送信シタ通リ。」以上二文です。」

まもなく座標が全艦に送られてきた。

「ナグモ機動部隊に打電、「敵空母艦隊二攻撃ヲ開始セヨ。発艦始メ」以上」

イノウエが指示を下す。

「ヒラタ大将から入電「潜宙艦隊ハ全艦集マリ次第敵ノ砲戦艦隊ニ対シ攻撃ヲ開始ス。」以上です。」

「司令。」

ドーマエがここで司令に話しかけた。

「なんだ?」

「主力艦隊を敵艦隊に突入させましょう。敵が航空機と潜宙艦であたふたしているうちに砲戦に持ち込みます。戦艦の数ではこちらが優っているのですから。」

戦艦は十隻だが旗艦のムツとヒュウガ、ヤマシロ、フソウの三隻の航空戦艦以外は全てキイ型及びコンゴウ型で質ではおそらく劣ると思われる。だからこそ意表をついて決戦に持ち込むのだ。

「よろしい、主力艦隊全艦に前進命令を下せ。」

イノウエが決定した。ムツがエンジンの電子反応を一段と強めた。

その頃敵の機動部隊上空ではカナダ、アメリカ連合軍のF4Fワイルドキャットと皇軍のシンデン、零戦が空戦していた。

「よし、喰らえ!」

フルサワが翼につけられた三〇ミリ機関砲で敵を撃墜した。やはり補助ノズルの効果は大きい。縦方向での旋回戦で負ける気がしなかった。その時艦爆隊を落とさんとして敵が艦爆に迫るのが見えた。艦爆隊は後上方旋回機関砲を編隊で弾幕射撃させて撃墜、というより突入を阻止しようとしている。だがそれで突入を防げるのは後上方のみであり敵も様々な角度から撃墜を試みる。さながら狼が羊の群れを襲うかのごとく攻撃の機会を伺っている。

「シンデン隊、艦爆を援護しろ!」

無線に呼びかけるとすぐに返事が来てシンデンが向かう。その時警報がコックピットに鳴り響いた。

「誘導弾接近中!」

アナウンスをうるさく感じた。コックピットを覆うホログラムを見ると真後ろで警戒音がなっている。

「当たるかボケ!」

チャフとフレアを射出して急上昇する。撃ってきた相手を探すとすぐ見つかった。ある程度距離を置いて追跡してるらしい。二本目が飛んできた。これにフレアは間に合わないと察したフルサワは宙返りする。誘導弾はこの動きについてこれずにどこかへ飛んでいった。三本目を撃たれる前にシャンデルで敵と正対すると機関砲を撃ち込みながらすれ違った。当たりもせず当てられもしなかった。そして零戦お得意の急旋回で後ろをとった。速度が優るため近付いて、そして機関砲で落とした。旋回や回避機動で大分戦闘宙域から離れてしまっていた。慌てて戦闘宙域に戻ると既に敵は駆逐されており敵機動部隊に対する攻撃も開始された。艦爆、艦攻の突入より前に外縁の駆逐艦を殺らなければならない。フルサワは胴体下にある対艦誘導弾の発射レバーに指をかけた。対空砲火の激しい駆逐艦の下方から機関目掛けて誘導弾を発射した。機関はそれたが命中はした。これでフルサワの任務は完了だが至近距離から十本の対空誘導弾も叩き込んだ。あまり効果はなかったが機銃塔をいくつか潰せた。艦爆の誘導弾、艦攻の特別弾で敵空母が沈んでいく。先に発見し攻撃を成功させて空母六隻を沈めるといったいい出だしとなった。空母の数では劣っていたが航空隊の集中運用と索敵によって皇軍が序盤の航空戦を制した。

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