エピソード15「死の星会戦②」

中型潜宙艦はそのころ敗走する空母部隊の針路をよんで待ち伏せていた。

「ソナーに感!熱量から敵空母です!空母四、いずれもエンタープライズ級です。」

「特別弾に敵空母先頭艦の熱量を入力しろ!」

「入力完了!」

「よし、一~四番発射。」

オーツカのイ250は補給をカイダイ型から受けて前線に留まっていた。

「一~四番発射します!」

それが突き刺さり爆発した。オーツカは一~四番までの再装填を命じると最後尾の空母を狙って特別弾を放つように命じた。

「五番~八番、最後尾の空母をロック、撃て!」

「発射します!」

だがこの獲物は味方に奪われた。それどころか残った空母は全て味方が撃沈してしまっていた。

「チッ、まあいい、敵駆逐艦に標的を変更する。特別弾再装填。」

オーツカが舌打ちまじりでそう呟いた時ソナー手が悲鳴をあげた。

「敵駆逐艦四、爆雷投下体勢!目標は本艦と思われます。」

「機関停止!緊急冷却装置オン!」

素早く機関科員がタッチパネルを操作する。無誘導だが熱を探知して圧力波を起こして船体を圧壊させる爆雷は潜宙艦の天敵である。

「爆雷投下確認!」

乗組員は全員外れろと祈った。

「ショック対応姿勢!」

オーツカは爆雷が外れたあとの計画を頭の中で立てた。

「爆雷外れました。」

安堵の声を漏らした兵に対してオーツカは素早く命令を下す。

「駆逐艦の熱量を入力して特別弾を発射!」

八本が射出され、綺麗に二本ずつ突き刺さった。

「よし!」

ソナーから反応が消えたことを確認したイ251が潜望鏡を上げて確認した。その時、イ251の周りの熱源が大きくなって沈没した。

「熱源探知!至近距離です!」

駆逐艦がエンジンを切って待ち伏せていたのだ。

「12ノットでデコイを射出する!八番発射管にデコイ装填!一番、二番は特別弾射出用意!」

「デコイ用意よし!」

「デコイ発射!」

復唱後に発射されたデコイがイ250とまったく同じ温度で航行する。

「敵駆逐艦食いつきました!」

「特別弾発射!」

「発射アイ!」

駆逐艦が撃沈された。

「よし、補給ポイントに向かうぞ。」

異次元に潜む狩人は密かに狩場を後にした。

ムツを先頭に主力艦隊は前進していた。戦艦が単縦陣を形成した左後方に巡洋艦が単縦陣を形成、そしてそのさらに後ろ駆逐艦が固まっていた。

「ドーマエ大佐、どのように戦うといいと思う?」

イノウエ元帥がドーマエに話しかける。ドーマエは作戦立案の才能も開花しつつあったからだ。

「丁字戦法を仕掛けます。ただし丁字戦法では船体の後ろ側にまわられると突破されるためまず戦艦隊が丁字戦法を仕掛けて敵が後方をすり抜けようとしたらすかさず巡洋艦隊で頭を押さえ込んで丁字戦法に持ち込み、又戦艦が……と言った流れで絶えず敵の一番艦に攻撃を集中します。敵の単縦陣が崩れたら駆逐艦隊を突っ込ませて雷撃により止めをさします。」

ドーマエが提案した。

「まあ、良いだろう。そうするか。よし、陣形そのまま、増速!」

敵との接触が予想される十五分前にドーマエは主砲に陽電子をチャージするよう命じ、イノウエも航空戦艦からシンデンを飛び立たせた。ナグモ機動部隊は航空機搭載実弾兵器の補給を受けているため航空兵力を割けなかった。

「レーダーに感あり!敵単縦陣にて前進中、十一時の方向、上下角+7度。砲戦距離まで十分!」

イノウエが作戦開始を命じた。

「よし、取り舵いっぱい高度そのまま!」

操舵手が復唱して艦を左に向ける。後続艦もそれに習った。

「巡洋艦隊に打電「作戦開始セヨ」以上。」

イノウエの指示通りに電文が飛んだ。

「敵一番艦を捕捉!艦種はアース級、艦名「オタワ」です!」

「よろしい、砲撃戦用意!砲術長、行けるか?」

「ロックできてます!」

「よし、後続艦が射撃姿勢を取り次第斉射せよ。」

ドーマエが命令を下す。皇軍の単縦陣は先頭にムツがきて航空戦艦三隻が続く、そしてコンゴウ型とキイ型が後ろについた。最後尾はキイ型戦艦のアズマである。

「撃ち方はじめ!」

陽電子砲弾が一斉に放たれた。

「命中弾あり!外した砲塔は照準修正!」

戦艦クラスの大型艦ともなればシールドも頑丈である。勿論敵も反撃してくる。

「被弾七!いずれも右舷中央、貫通しておらず!シールド展開能力70%に落ちました。」

「次弾圧縮!」

すぐに発射用意が整った。

「圧縮、修正共によし!」

「第二斉射、撃て!」

流石に戦艦十隻から二回も斉射されてシールドがその役割を果たせるはずも無かった。それでも戦艦の意地を見せて反撃はしていたが更に第三斉射を浴びると戦艦オタワは宇宙に無数に漂う塵の仲間入りした。

「敵艦隊は我艦隊の後方をすり抜ける模様。」

レーダー手が報告する。

「よし、取り舵!反転して再び丁字に持ち込む!」

最後尾のアズマはまだ健在であった。

「巡洋艦隊、突撃します!」

ヒコノジョー・カミムラ大将に率いられた巡洋艦隊が敵艦隊の頭を抑えて一斉砲撃に入る。だが火力で負けているため普通にやると分が悪い。

「誘導弾発射!」

ムツから放たれた対艦誘導弾は牽制としての役割を果たした。敵艦隊は回避行動で陣形を崩したのだ。アメリカとカナダの二カ国連合艦隊であったのでうまく連携がとれていなかった。

「突撃!」

駆逐艦が待ってましたとばかりにエンジンをふかして突入する。駆逐艦を阻止すべく敵巡洋艦が前に出るがそれは味方の巡洋艦が相手取った。乱戦になるがそこから離れたところで皇軍の戦艦は単縦陣を崩さずに一隻一隻に火力を集中させて葬っていった。だがその中で大奮戦している戦艦が一隻いた。アメリカのアイオワである。40cm砲を搭載した最新鋭戦艦で単縦陣から離れた航空戦艦二隻を相手にして一歩もひかない。

「アイオワか、このムツを上回る性能を持つアイオワなら相手として不足はない!」

ムツより性能は高いアイオワだが月月火水木金金と歌われるほどの猛訓練をつんだ皇軍の方が練度は高い。

「目標アイオワ、各砲塔ごとに照準、第一斉射、撃て!」

陽電子砲が放たれた。それはアイオワを外れた。ただ一つの砲塔を除いて。

「第二砲塔の照準を全主砲塔に共有、それに修整!」

「修整完了!発射用意よし!」

「第二斉射、撃て!」

同時にアイオワも発砲を始めた。

「敵弾通過、被弾なし。」

ムツは第二斉射で全弾命中させた。

「命中確認。」

「よし、照準そのまま。第三斉射用意!」

命中はしたが貫通はまだできてない。アイオワは命中率を高めるためにこちらに接近してきた。

「敵艦転舵、こちらに向かってきます。」

「第三斉射の照準を転舵後のアイオワに合わせろ。」

「再照準よし。」

「第三斉射、撃て!」

再び命中させるもまだ損害は与えていない。

「被弾二!損害なし!シールド展開能力24%に落ちました。」

アイオワの16インチ砲はシールドが食い止めた。

「副砲の有効射程圏内!」

「副砲、各個に照準、副砲撃ち方始め!」

少しずつシールドを削っていく。

「第四斉射、撃て!」

第四斉射でアイオワのシールド展開能力を奪いさった。

「副砲命中!損害を与えた模様!」

ドーマエはアイオワのシールドを0にしたことを確信した。

「第五斉射、発射!これで仕留めろ。」

命中の後、ドーマエの目には信じられないものが飛び込んできた。

「敵艦発砲!」

アイオワが戦闘を継続しているのだ。

「被弾三!シールド展開能力停止!」

「機関室を狙え、第六斉射!」

今度こそすべての戦闘能力を奪った。アイオワは特殊鋼の塊となった。

「アイオワの撃沈を確認。」

「よし、これ以上被弾したらまずい、これより本艦は戦闘宙域を離脱する。取り舵いっぱい、反転。」

駆逐艦も片付いたようだ。

「これにて戦闘を終了する。全艦、帰投せよ。」

米加連合軍の壊滅の報せを受けた死の星航空基地の兵員は皇軍に降伏した。

二四五恒星系の基地建設も終わりに近付いていた。

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