エピソード9「ソ号作戦、そして……」

臨時で第五航空戦隊司令官のチューイチ・ハラ少将が指揮をとって回廊を通り無事にインチョンへと出た。だがそこで見た光景は目をうたがうものだった。戻ってきた艦は出撃時の約三分の二に過ぎず戻ってきた艦も皆傷ついている。そして暫くしてわずか四十の戦闘機が帰ってきた。すぐにこちらも戦闘機をだして要塞付近の制空をする。間もなくコンピューターから今回の戦いに関するデータが送られてきた。戦果は撃沈無し、撃破無し、敵機撃墜1962機という航空戦で見ればかなりの戦果だったが損害が酷かった。損失艦艇、空母カクリュウ、リュウホウ、巡洋艦センダイ、アタゴ、ユウバリ、駆逐艦十七隻、潜宙艦十一隻、被撃破艦、戦艦イセ、空母アカギ、カガ、巡洋艦ナチ、駆逐艦三四、未帰還航空機276機である。この為今第二方面艦隊戦力は開戦前より格段に落ちた。まずは損失艦艇にオーツカのイ250が入っていないことに安堵した。戦闘の経過に軽く目を通すとどうやら一方的な航空飽和攻撃を浴びたらしい。ただアカギに転属されたフルサワが一人で83機の撃墜という驚異の記録をたたき出していた。直ちに修理が開始された。各艦の艦長はインチョン要塞の大会議室に集められた。

「今回のソ号作戦では大損害を被った。奮戦してくれた各艦艦長に礼をしたいと思う。」

イノウエが頭を下げた。

「続いて敗因に移るが最大の敗因はやはりキム・ソグォンが敵将であったことであろう。フソウ星士官学校にも留学してた秀才で彼の得意策にまんまとはまってしまった。衛星機雷を針路に施設し針路変更したところを航空飽和攻撃を行う。たしかに直掩戦闘機隊は奮戦してくれた。だが余りに数が違いすぎた。」

イノウエの声が暗い。

「我々はソウル星を落とす必要がある。だが圧倒的な航空優勢を握られていては無理だ。そこで潜宙艦による飛行場破壊作戦を発動したが誘導弾を撃つために浮上したところを撃沈されてしまった。ソウル星の航空兵力を消耗させたいがそれには時間がかかる。そこで大本営は今さっきト号作戦を発令した。この作戦の為に第十方面艦隊が増援として到着する。今回はキム・ソグォンの艦隊との直接対決を避けて第二方面艦隊残存が囮となってキム・ソグォンの艦隊と航空隊を引きつけているあいだに第十方面艦隊がソウル星を滅ぼす。更に守りの間隙をついて第八十四戦略爆撃団が二百の戦略爆撃機を投入し政府機関を除いて徹底的に爆撃する。とりあえず今は追撃してくる艦艇がないか哨戒に航空隊と艦隊を向かわせてるが今のところ交戦の報告はないため安心して作戦準備に臨んでくれたまえ。」

その時自動ドアが開くのを待ちきれず扉にぶつかりながらも伝令が入ってきた。

「なんだ、軍機にあたる会議中だぞ。」

イノウエが叱責する。だがそんなものまるで聞こえなかったかのごとく伝令は報告した。

「巡洋艦イブキが……、巡洋艦イブキが触雷しました。ここからわずか五十里ほどのところです。衛星型機雷に触雷しました。只今駆逐艦及び宙雷艇が機雷除去をはじめた模様です。」

ドーマエは伝令に向けて怒鳴った。

「俺はイブキの艦長だ。イブキの現状を報告しろ。」

「はい、イブキの機関室が全滅、火災が発生し副長は総員退艦を発令、修復は不可能なレベルの被害ですので10分後に雷撃処分される予定です。」

雷撃処分、自分の艦が、自分のいない間に被害にあって雷撃処分される。ドーマエは悔しさにかられた。

「わかった。掃海を行え。後他にも機雷が浮遊してくるかもしれんからこの付近にいる皇国籍の全艦に注意するよう伝えよ。」

イノウエは冷静に対応していた。

「ソ号作戦で失った各艦の乗員にイブキ乗員をあてて補充せよ。」

そのころ現場宙域ではそばにいた艦艇が内火艇をだして救助に当たっていた。

「手空総員、イブキ乗組員の救助を行え。特別弾を全門装填、艦首をイブキに向けろ。」

イ250は雷撃処分を任せられた。というよりかは艦長会議を欠席して哨戒の指揮に当たっていたオーツカが自ら志願したのだ。

「無事でいてくれよ。」

そう願っていた時にイブキから退艦完了の知らせが届いた。たしかに同時に内火艇がイブキを離れていく。

「特別弾発射。」

静かなオーツカのつぶやきを聞いて宙雷長が発射スイッチを押した。直後爆発したイブキは宇宙空間で散った。

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