エピソード4「大同盟の結成」

「今回の大勝利は諸君等の奮闘のおかげである。これより会議を行うため艦長は本部へ集合してくれ。」

イノウエが各艦にアナウンスを行いドーマエもまたいつもの通り地下の本部へ行った。会議室に腰掛けると二、三の空席が見受けられた。

「諸君、これより作戦後の会議を行う。」

イノウエ元帥が話始める。

「まずは戦果及び損害からだ。戦果は撃沈、戦艦ソウル、巡洋艦ペトゥクサン、駆逐艦一五、輸送艦二、撃破艦はなし、航空機撃墜及び地上撃破合わせて八四である。続いて損害、被撃沈は駆逐艦イワナミの一隻、大破、巡洋艦フルタカ、中破、駆逐艦ソラナミ、駆逐艦アサシオ、航空機未帰還四、戦死総計は一二二名である。」

淡々と読み上げる。

「損害など暗い話になってしまったので明るくしよう。今回は勲章受賞が二名いる。まずは戦艦ソウル及び巡洋艦ペトゥクサンを駆逐艦で撃沈したソラナミ艦長のドーマエ少佐、続いて初出撃にも関わらず敵機撃墜七、対艦誘導弾で輸送艦を撃沈したフルサワ大尉である。両名は前へ。」

拍手が沸き起こる。

「両名はこれより士官用人員輸送機でフソウ星に向かい天皇陛下より勲章を賜われ。会議終了から一時間後に出発だ。」

「はっ!」

「二人とも戻ってよろしい。で、今回の作戦で明らかになったのは空母航空隊の打撃力不足だなやはり、後は駆逐艦も有効につかえば戦艦をも撃沈できると……」

言い終わらないうちに警報がなった。

「なんだ。あいつら報復にでもきたのか?」

司令が鼻息荒く迎え撃ってやらんとばかり叫んだ。

「司令!ホログラムで方面艦隊長会議だそうです。」

伝令が息を切らしながら飛び込んできた。

「なに?久しぶりだな。よしつなげ。」

会議室のホログラム投影装置の奥に円形のテーブルがあり、椅子は一つしかない。イノウエ元帥がそこに腰掛けると他の十一人の方面艦隊長と国防議長のサイゴウ元帥がホログラムで浮かび上がった。

「今回方面艦隊長会議を緊急で開いたのには理由がある。まずそこからだ。皇国標準時で一時間前にサンクトペテルブルク星にて対日大同盟が結成された。」

サイゴウ元帥が会議を始めた。

「参加国は?」

イノウエ元帥が怒鳴った。

「参加国はアメリカ合衆国、カナダ連邦、ソビエト大公国、大韓王国、中華帝国の五個の大国と後は小国が十ヵ国程だな。」

「そうですか。で、皇国政府も黙ってたわけではないですよね。」

これは第三方面艦隊長のオザワ元帥である。

「ああ、対日大同盟参加各国の大使による説得とこちらもグレートブリテン公国とオスマン国に同盟を持ちかけている。」

議長も兼ねるサイゴウが説明する。

「かまわん、すべての国をぶっ潰せばいい。サイゴウ国防議長、我が国単独で同盟加盟全国を相手にした際の勝算は?」

イノウエが聞いた。

「十分だ。我国は全宇宙で二番目に多く戦艦を保有し、宇宙で最も多くの空母と補助艦艇を持つ。そして総合的な宇宙軍事力はトップだ。個別撃破なら勝てるはずだ。」

「そうか。では我々は直ちに作戦行動に移ってよろしいかねサイゴウさん。」

「いいだろう。」

会議室で待たされてる士官達の中で俺は作戦には参加しなかった潜宙艦隊所属のオーツカと話してた。

「これで軟弱外交派は発言権が弱まったな。」

外交に関しては宇宙軍を中心として保守派政治家、主に与党である自由党が対外的に強硬であるのに対して野党である民衆党等は対外軟弱路線を貫いてきた。マスコミも軟弱路線を支持していたが今回の対日大同盟結成によってかなり発言権は削がれるはずだった。彼等がまさに目の上のたんこぶである軍隊の強硬派士官などは軟弱外交派を売国外交路線派と公言する士官もいたくらいなのでこれを期に反対勢力を封じるのは目に見えていた。さらに軟弱路線派の筆頭ある民衆党書記長ヤマダが不正選挙を行ったとして関連者の国民テレビ会長のウジハラや集団不正投票を部下に命じた軟弱路線派士官のサトー少佐、ヤマダ本人など数名が憲兵によって逮捕されたのは先月のことである。上下院の二院制の皇国で上院の現役議員が逮捕されるのは実に24年ぶりであった。それで勢いを失っていた軟弱路線派にはさらに開戦は痛すぎる打撃だ。そもそも広大な領土をもつ皇国では選挙区制をとって電子投票である。選挙区はひとつの惑星で一つだった。そんななか駐屯していた憲兵を使って不正投票を試みてバレたのが先程の一件である。軍部も一枚岩ではなく、派閥は人事にまで関わってきた。おかげで方面艦隊長は両派閥から半々と言った形で任命された。ドーマエやオーツカも強硬派である。大抵は士官学校のある星で決まる。強硬派の教官が強いところでは強硬派が、逆もまたしかりである。まあそんな派閥の差はあってもやはり国難には挙国一致である。

「そうだな。けど俺ら下級士官にはあまり関係ないさ。ところでアレは就役したのか?」

オーツカが尋ねてくる。

「アレってのはデカイアレのことか?それとも変態なアレのことか。」

「どっちもだ。」

「ヤマト級宇宙戦艦は就役はヤマトおよびムサシのみだ。航空戦艦イセ級はイセ、ヒュウガ、ヤマシロ、フソウと四隻が就役しているはずだ。」

「第二方面艦隊に欲しいな。」

「ああ。国をまずは滅ぼしに行くだろうから第二方面艦隊にももらえるはずだろうがな。」

「イセ級だな、やはり。」

「ああ、ヤマト級はアース級とその後継艦であるアイオワ級対策で第五に回されるだろうな。」

「第五?第五には四〇糎陽電子砲搭載のナガト級二隻が配属されてるはずだろ。」

「いや、ナガトだと改装後のアース級とは互角、アイオワには負けるぞ。」

「第五にはナガトとヤマトの両級合わせて四隻しか戦艦がないことになるな。ウチなんて全部コンゴウ級とキイ級のどっちかじゃねえか。」

「まあでもどの方面艦隊にも戦艦は四~六しかないだろ。」

「まあな。第二も四隻しかないからイセ級が欲しい。」

「ああ、イセ級は二隻あれば戦艦隊の上空を最低限守れるだけの戦闘機が積めるしな。」

「ああ。まあ俺ら潜宙艦には関係ないけど。」

「たしかに」

ドーマエが返答した時会議が終わったのかイノウエが話しかけてきた。

「いいな、1ヶ月後から作戦開始だ。」

「了解!」

「では各自解散。フルサワとドーマエは出発準備しておけ。」

「了解!」

フルサワとドーマエはまだ見ぬ勲章に胸を踊らせていた。

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