エピソード3「初陣」
施設艦エトロフが回廊を施設した。今回の一番槍は第四水雷戦隊である。
「よし!27ノットに増速!」
エンジンがフルパワーを発揮する。
「対艦誘導弾発射用意!特別弾発射管減圧、外扉開口せよ!」
復唱され部下がてきぱきと動く。
「回廊を出しだいソウル級を探せ。いいな。」
「了解!」
やがて回廊を抜けると目の前には韓国宇宙軍がうようよしていた。
「ソウル級探せ!」
すぐにソウル級は見つかった。
「ソウル級発見!艦名ソウル、二時の方向上下角+三度、距離……」
報告が終わる前にドーマエは口を開いた。
「ソウル級をロック!対艦誘導弾発射!」
「対艦誘導弾発射!」
前方の垂直発射管から小型のオサダ式エンジンを積んだ誘導弾が六四本発射された。
「ソウル級に艦首を向けろ。ロックオン完了次第特別弾発射!」
「特別弾発射します!」
「特別弾再装填急げ!対艦誘導弾再装填まだか?」
その時ソウルに矢が刺さった。そして爆発した。
「ソウル轟沈!」
「よし、よくやった。」
ようやく反撃を開始した韓国宇宙軍はあきらかに浮き足立っていた。
「よし、次狙え。九時の方向-七度の駆逐艦狙え。」
「ロックオン!」
「主砲、非拡散にして斉射せよ!」
127mm両用砲は陽電子を拡散する対空砲撃と拡散させずに直射する対艦砲撃の二種類の砲撃が可能だった。その分多少対艦砲撃の威力は妥協している。
「主砲発射!」
七条の光の矢、といっても見えないものが駆逐艦を襲った。
「命中!撃破確認!」
「ようし」
その時レーダー観測手が悲鳴をあげた。
「誘導弾六接近中!一時方向!」
「くっ!回避!舵下げ!機関砲発射!迎撃誘導弾発射!」
「迎撃誘導弾は間に合いません!」
「機関砲で撃ち落とせ!」
なんとか誘導弾を4本撃墜して残りは回避した。しかしこれは思わぬ方向に向かったのである。
「フルタカ被弾!」
狙われたのはフルタカだったのだ。
「なに?」
誘導弾はフルタカ艦橋と後部主砲に命中していた。
「フルタカより通信!」
「接続せよ!」
「こちら第四水雷戦隊長のフルタ少将だ。第四水雷戦隊全艦につぐ、第一駆逐隊は攻撃続行、第二駆逐隊はフルタカの護衛、第三駆逐隊はフルタカに向かう敵艦隊を迎撃をしろ。いいな、これより本艦は戦闘宙域を離脱する。」
「了解!」
回廊へと抜けようとした時に回廊を遮る形で巡洋艦ペトゥクサンが出てきた。
「巡洋艦ペトゥクサンをロック!対艦誘導弾一斉発射!」
再び六四本の誘導弾が飛んでいく。対空火器でいくらかは撃墜されたが残りは横っ腹を貫いた。
「命中確認!」
「よし!回廊に駆け込め!」
「五時方向上下角-三十より敵駆逐艦!」
「下部主砲発射!誘導弾再装填急げ!」
「下部主砲発射!誘導弾再装填完了まで二十五秒!」
「敵誘導弾発射!その数七本!」
「対空射撃!迎撃誘導弾発射!」
青白い火を吹いて誘導弾が敵の誘導弾を爆発させ、機関砲が誘導弾を砕くが撃ち漏らした。
「二本撃ち漏らしました。命中します!」
とたんに艦が揺さぶられた。
「被害報告!」
ドーマエは部下に向かって叫んだ。
「左舷に二本命中、火災は認められず、ただ、誘導弾発射用の回路が燃えて切断されました。誘導弾発射不能!その他は航行及び戦闘に支障なし!」
「くそ!主砲発射!回廊に逃げ込め。」
青白い光の矢が放たれた時に回廊へと入った。回廊は例の通り一瞬で通り抜けてクレ星に戻った。ドックに入ると整備兵が駆けつけてくる。
「損害はどうでしたか?」
「左舷に誘導弾を二本もらった。誘導弾発射回路が焼き切れている。その他は被害なし。」
「わかりました。」
「巡洋艦フルタカはどうなった?」
「フルタカは艦橋が全滅して艦首脳部がやられました。」
「艦長のヨシイ中佐は?」
「戦死されました。遺体はありません。」
うつむき気味に整備兵が話した。
「そうか。」
「上陸艦隊、出港します!」
個人端末がそう告げた。見ると強襲艦が次々と港を出ていった。
「戦いは終わったのか?」
強襲艦は127mm両用砲を単装二基以外は武装を持たない。そのかわり中には二百体の機械兵士と二十両の戦車を積み込めた。機械兵士はオサダ機関によって動く人形ロボットで右腕にはは5.56mm陽電子機関銃一丁が、左腕には75mm陽電子砲が一門装備された身長2mの兵士だった。憲兵と戦車兵以外の部隊は全てこの機械兵士で成り立っていた。戦車は127mm両用砲一門を主砲とし、機関銃二丁を搭載したもので三人が乗り込んだ。戦車兵は陽電子突撃銃を装備していた。陽電子突撃銃は見た目は第三次世界大戦より五世紀以上も前に開発されたアメリカのM4カービンに似ている。マガジンは小型の陽電子発生装置であり、無限に撃ち続けられる。光学サイト搭載は当たり前となっていた。憲兵もこれを所持する。
「竹星雲まで護衛するぞ、直ぐに出港する。」
そういって艦に乗り込もうとしたドーマエを整備兵が慌てて止める。
「待ってください。まだ整備中でしてエンジンはかからんようになってます。」
「ではあいつらを見殺しに……」
その時大量の艦隊が回廊を通ってワープしてきた。
「勝ったのか?」
そう呟いたドーマエに応えるかのように艦隊はゆうゆうとやってきた。空母部隊も回廊施設艦が移動していたのか戻ってきた。
こうしてドーマエの初陣となる竹星雲攻撃作戦は終わったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます