エピソード1「その始まり」


卒業試験をやはり首席でパスしたドーマエはオーツカとコジマと卒業前最後の休日を過ごしていた。オーツカは二位、コジマは惜しくも十一位だった。それぞれ配属先は決まっておりドーマエは先月就役したばかりの駆逐艦ソラナミの艦長、オーツカは卒業式翌日に就役する潜水艦イ250の艦長で二人とも第二方面艦隊、コジマは宇宙軍情報局の情報員としてフソウ星に残るという進路だった。第二方面艦隊は韓国に対して警備に当たるイノウエ元帥の艦隊である。三人が外出しようかというときにサイレンが鳴り響き、頭上には近衛艦隊も兼ねる第一方面艦隊の艦艇がゆっくりと発進していた。なぜわかったかというと第一方面艦隊はその船体を赤と白に塗分けていたからだ。ほかの艦隊では青い塗装だからすぐ見分けがつく。宇宙軍士官学校飛行科の飛行場では明日卒業の同期生が宇宙軍主力戦闘機シンデンに乗り込む。実際にかつて日本という国が地球にあったころに試作された震電という機体にそっくりな宇宙戦闘機だ。腕に装着されている時計ほどの個人端末を見ると国籍不明の編隊が接近しているとのことである。

「退避壕へいこう。」

「そうだな。」

慌てる住民を誘導しながら退避壕に向かった。退避壕は特殊核攻撃に耐えられるつくりだ。退避壕への道中で警報が解除された。どうやら第五方面艦隊所属の戦略爆撃機の敵味方識別装置が故障していたらしい。二十機で惑星一つを滅ぼせる恐ろしい機体だ。配置替えでフソウ星に来てたらしい。シンデン隊が着陸する。その後休日とりけしで市民への事情説明と謝罪に駆り出された士官候補生は卒業式に休み無しで望むこととなった。卒業式は教官からのお言葉と配属先の発表であった。事前に知らされていた通りカゲロウ型駆逐艦のソラナミが配属である。宇宙軍の艦艇はほぼすべてが葉巻型の船体を有する。カゲロウ型も例外でなく主砲は対空艦両用砲である127mm陽電子砲単装を上部甲板に五基、船体下部に二基装備し、誘導弾は前部上甲板に六四連装垂直発射管、後部に二十五連装垂直発射管を有する。特別弾は艦首に六連装発射管を備え、二十ミリ陽電子機関砲四連想三基を持つ駆逐艦だ。主砲は毎分十二発、誘導弾はすべて合わせると二百本を搭載可能で四二本の特別弾も搭載した。特別弾とは海上での魚雷に近く、発射されると第二空間を進み標的の近くで第一空間に現れるため回避しにくくした実弾兵器である。卒業式が終わるとドーマエは有名科学者オサダの名をとってつけられたフソウ星のオサダ造船所のドックに入る。目の前には青い塗装の整った駆逐艦がいた。

「敬礼!」

甲板に乗員がならんで敬礼する。20歳の若い艦長が着任した。生まれも育ちもフソウ星のドーマエは国の標準時刻で生活してきて当たり前だったが他の惑星では複数の時刻を用いたりするのだ。まあ、それは配属されてから確認すればいいことだ。

「総員、発進用意、機関始動!」

轟音が鳴り響いて艦尾のエンジンから赤い光が出てきた。ドーマエは艦内のセイルにつくと指令をだした。

「発進!速度4ノット!」

1宇宙ノット、略してノットは光速の十分の一であり、皇国で用いられている速度の表記だ。ソラナミが上昇していく。

これがドーマエの軍人としてのスタートであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る