大日本皇国宇宙戦記
@Rommel
プロローグ「卒業前夜」
「西暦2500年代、即ち皇紀だと3160年代に始まった大量破壊兵器の使用による第三次世界大戦はアメリカの一人勝ちで終結した。我国を始めとするその他の国は滅びるか、地球から逃げ出すかという屈辱の選択を強いられた。そして我等大日本皇国はこの新たな宇宙空間に達し、ここフソウ星を本星として版図を拡大したのである。そもそもフソウ星に達することができた原因はなにかな?ユウキ・ドーマエ、答えろ。」
教授の目の前にて豪快にいびきをかいているユウキ・ドーマエを見て総合宇宙社会学講師のシマムラ大佐はタッチパネルを操作してドーマエが座る席を選ぶと赤いボタンを押した。
「いてててて、おっはっようございます先生」
軽い電気ショックでドーマエが叩き起される。ここは大日本皇国の本星、フソウ星にある宇宙軍士官学校である。彼らは今後期教育に入っていた。士官学校では四年間の前期教育の後に試験が行われ落第者は少尉ないし中尉としての課程に進むがパスしたものは士官学校後期教育に入る。後期教育も四年間で最後に行われる卒業試験で上位十名は少佐、その他は大尉としてそれぞれ卒業、入隊という流れで運営されていた。ドーマエは試験こそ首席だったが授業態度があまりに悪いのである。自分の興味のない分野などいつも寝ているのだ。
「もう一度聞くぞドーマエ、我国がフソウ星に到達することができた要因はなんだね。」
「はっ!度重なる科学の発展により多元宇宙理論が実証され、複数の宇宙空間が発見されました。そして我先祖がその宇宙空間を繋ぐ回廊を発見し得たからであります。」
直前まで寝ていたとは思えないパーフェクトな回答だった。教官は苦笑いしながらその隣の席のハルキ・オーツカに声をかけた。
「オーツカ、又君かね。」
士官学校は二人一部屋の全寮制でオーツカとドーマエは同じ部屋だった。
「教官、何を言っているのですか。」
「ドーマエと君はいつも一二を争う成績を誇るが授業中にドーマエに答えを教えるのはどうかと思うが。」
「すいません教官」
各生徒の机はタッチパネルになっており、簡単なメールはやり取りできた。オーツカは教官が資料を送るのに合わせて答えを送ったのだ。見事なタイミングであり、発信数からしか教官も見抜けなかった程だ。オーツカは学年2位の成績でドーマエの同室、学士会会長を務めていた。
「ではオーツカ、はじめはフソウ星しか持ってなかった我国がここまで躍進できたのは何故か。」
「はっ!それは他国に先駆けてショーヘー・オサダが考案したオサダ理論を素にして機関や兵装を揃えたからです。」
「そのとおりだ。十二年前に宇宙初のオサダ理論式機関、即ちオサダ機関を搭載した戦艦、宇宙戦艦キイが就役して宇宙の注目を集めたが我国はそれより50年前からオサダ機関を搭載した駆逐艦や巡洋艦、空母、航空機を作っていたから他国に対して優位であった。」
ドーマエはその就役式に一般客で行っており、その時に宇宙軍のカッコ良さに惹かれて入隊を決意したのだ。オサダの理論は宇宙飛行機にも取り入れられており、宇宙軍も基地航空隊と艦上機隊に分けて運用していた。そもそもオサダ理論とは特殊な物質であるオサダ陽電子とオサダ陰電子にわかれているオサダ電子の使用によって成り立っている科学説で可視光線で実体のあるオサダ陽電子と不可視で実体のないオサダ陰電子はどちらも光速を超える速度で移動できる。これの発生装置は半永久的に使用可能であり、いまやほぼすべての軍艦がオサダ式である。そして兵装もオサダ陽電子を利用した陽電子圧縮砲、通称陽電子砲、陰電子は光速を超える速度を持つのでレーダーとして皇国宇宙軍の主要テクノロジーになっている。
「オーツカ、君は潜宙艦乗りを目指しているそうだがオサダテクノロジーが生み出した宇宙的大発見はなんだね、潜宙艦に関わることだ。」
「はい、多元宇宙の間に異次元が発生し、度々宇宙船がその近くで行方不明になる事件がありました。そこでオサダはその宙域の捜査のすえに、異次元空間を発見し、無限エネルギーを誇るオサダ機関の所有艦でそれを再現するにいたりました。これが皇国の各地をつなぐ大回廊の設置と潜宙艦の実用化に大きな役割を買ったと言えます。ただし異次元空間には危険が伴います。我々が生活している第一空間、そしてそれの影のように存在している第二空間、人類がその距離を縮める事の可能な第三空間、そして最も危険な第四空間にわけられます。第四空間は第三空間の施設、即ち回廊の施設時に発生して調査はされていますがいまだに難航しています。ブラックホールのような存在だと考えます。潜宙艦は第二空間を航行し、回廊は第三空間です。第三空間の施設は相当なエネルギーを必要とするため専門の回廊施設艦が採用されています。」
「第一から第三につてはその通りだ。そして現在ではオサダテクノロジーは宇宙空間全体に広まっている。当然それを搭載した宇宙艦も増えている。今送った資料を見たまえ。現在人類が生活している宇宙空間は十あり、大国は11カ国ある。我々はその十の空間のうちの四つに領域をもっているが完全に支配している空間はない。本星のある中央空間、これは十の空間の中心にあるがそこでは韓国と中華帝国こと中国、資料でいうと左上の空間には地球を有するアメリカ、中央空間の左下ではソビエト大公国、下側ではソビエト、中国、オスマンと共存しておる。近隣諸国とは表向き上は平穏だが領土問題も大きい。」
人類が開拓した宇宙空間十個は大小様々であり、
① ⑨ ⑧
② ⑩ ⑦
③ ④ ⑥
⑤
と言った形に地図上で番号がふられ、大日本皇国の本星のフソウ星がある中央空間は⑩で皇国はその他に②と③と④に領土を持っていた。
「で、近隣諸国の宇宙兵器で注意すべき艦はなんだね、ドーマエ」
「はい、韓国のソウル級戦艦と中国のナンキン級戦艦、ソビエト大公国のスターリン級戦艦、アメリカのアース級戦艦です。」
「よろしい、ではミナミ・コジマ、それぞれの艦の特徴を説明したまえ。」
コジマはドーマエの幼なじみで情報課を目指していた。
「はい、ソウル級は我国で建造したのち引き渡された戦艦で恐るべきはその主砲です。キイ型と同じ三六糎陽電子砲連装砲をキイ型より多い八基積んでいることがが脅威ですが対実弾装甲は弱く、潜宙艦や駆逐艦による特別弾攻撃が有効です。」
特別弾はオサダ理論に基づいて異次元航行能力を有し、敵艦に発見されることなく攻撃が可能だが、誘導弾ではなく、命中が難しかった。
「ナンキン級は三十センチ砲連装七基とバランスがとれた主砲配置が特徴です。三十センチ砲は単発火力は我方の戦艦より低いですが主砲とは思えない連射速度を誇ります。装甲も堅固です。対策としては主砲の威力が劣るので戦艦陣を投入して数で押すのがベストかと。スターリン級は厚い装甲と対空兵器の充実に目が行きがちですが本当に驚異なのは三十センチ三連装五基の主砲の斉射と二十余の航空機搭載能力で航空戦艦と言えます。対策はやはりナンキン級と同じでしょうか。アース級は三六糎主砲三連装三基と同連装二基の主砲とキイ級を上回る装甲とかなり厄介です。これは対策がたてにくい新鋭艦です。ですが巨大戦艦であるため宙雷艇などの小型艦艇による飽和攻撃が望ましいと思います。」
「よろしい、全員、明日の卒業試験に出すからな、覚えておけ。」
「はっ!」
チャイムと同時に教官が退出した。
翌朝の試験でドーマエは独り言と共にタッチパネルで回答を打ち込んでいた。
「ええっと、領有権を巡り衝突している地域において他国がそこを実効支配している箇所がある。そこに対し攻撃を仕掛けるにはどのような攻撃方法を取るべきであるか記述せよ。尚、当艦隊の戦力は敵艦隊の三分の二であり敵と味方には同数の基地航空隊の支援が得られるものとするが我が方には標準型宇宙要塞があるものとする。えっと、だから潜宙艦による先制奇襲と航空攻撃により敵艦隊を要塞付近から離れた所に誘い出している間に実効支配されている星を攻撃、慌てて戻るところを待ち伏せすればいいから。これを記述にすると……。」
事前にオーツカと予習していたところが出てきて簡単に解いていた。ドーマエはスラスラと誰よりも早く全て解き終わると机に突っ伏した。
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