第8話 襲撃

 悠馬達が外に出ると、日が暮れ始めていた。

 悠馬は大家族の父のように三人の少女を連れて街道を歩く。

「それで、今日の夜は娼館に泊めてもらっていいのか?」

「大丈夫ニャ。モコ姉さん達には他の所に泊まってもらっているから今日は貸し切りニャ」

「すみません、わたしのために……」

「気にすることないニャ。おかげであのクソ男の相手をしなくてすんだニャ」

 申し訳なさそうにする雫に、桔梗は上機嫌で笑いかける。

「エルはどうする? あの破壊された研究所では不用心ではないか?」

「……下のメス猫が、どうしてもと言うなら行ってもかまわんが?」

「今日は三人でお風呂パーティーをするから変態はいらないニャ」

 素っ気なく答える桔梗に、エルはわなわなと震える。

「お風呂パーティー……だと?」

「そうニャ。雫ちゃんがご主人様とお風呂に入りたいと言うから企画したニャ。みんなで裸のお付き合いニャ」

「雫……本当なのか?」

「ち、違います! お、お風呂に一緒にはいることは約束しましたけど……わたしが言いだしたわけでは――」

「……どうせ、そのメス猫が罠に嵌めたんだろう。そんな約束は破ってしまえ」

「これは私が雫と交した約束ニャ。外野は黙っててほしいニャ」

「……ッ……雫、こんな奴の言うことをきく必要はないぞ!」

「でも約束しましたから……破るわけには……」

 雫が恥ずかしながらもそう言うと、エルは呆然とした。

「雫が……変態になった!?」

「違います!」

「のぞき魔が、約束を守る純粋な雫ちゃんを変態呼ばわりとは片腹痛いニャ」

「何だと!? だいたいお前は――!」

 三人の会話は姦しく続く。

 雫はよく笑うようになった。

 桔梗が積極的に話を振っていることもあって、雫は自然に会話に参加している。ところどころ性的な内容が混じるのはご愛嬌と言ったところか。エルも桔梗にイジられてムキにはなるが、それで場の雰囲気を崩すことはない。

(幸せ、なんだろうな……)

 自分を心配してくれる人がいる。

 自分を慕ってくれる人がいる。

 それはとても幸せなことなのだろうと悠馬は思う。

 悠馬は足りない魔力を補給するために人生のほとんどを『異界』で過ごした。『魔獣』を狩って、肉を調理して食べ、再び現れた『魔獣』を狩って食べる。そんな毎日が続いた。『異界』でエルと出会い、彼女の魔導具によってミノスの弁当を『異界』に持ち込めるようになったが、それでも悠馬の日常はほとんど変わらなかった。

 それによって獣人達に嫌われもした。

 魔力には所有者の全てがとけ込むのだから、『魔獣』を喰らうことは死者の霊を喰らっているのと同義だと非難され、その一方で『浄化の殻』が浄化するので彼に喰われることは救済だと主張する者も現れた。

 どちらが正しいかなんて分からない。

 ただ、生きるために『魔獣』を喰い続け、死者の記憶から得た知識を還元し続けた。そこに罪悪感や贖罪の意味はない。求める者がいたから教えた、それだけだ。

 だから、近いうちに死ぬと聞かされたときも、そんなに驚きはしなかった。

 とうとう自分の番が来た、その程度の認識だった。

 そんな獣のような人生を彼女が――彼女達が変えようとしている。

 闇の中で、ひとり孤独に死んでいった者達の記憶を思えば、これは幸せなことだろう。

 だから、もう少し足掻いてみよう。

 そう思った悠馬は姦しく会話を続ける雫と桔梗の手を握りしめたときだった――

「……霧?」

 エルは眉をひそめる。

 あたりが白いモヤに包まれ始めた。

「いや、違う。魔力が篭っている」

 悠馬の周囲ではちらちらと桜吹雪が舞い始める。ただの自然現象ではない。

 うっすらと漂う霧に、周囲の獣人達がばたばたと倒れ始めた。

「……催眠ガスか。お前達は大丈夫か?」

「ご主人様にくっついていれば大丈夫ニャ」

「逆に言えば、離れたらやられるということだ」

 エルは口元を抑える。

「雫はどうだ?」

「だ、大丈夫です。……でも、これは何なんですか?」

「敵襲だ」

 悠馬は不安な表情を浮かべる雫を背後に隠す。

 これだけ広範囲に能力を使える者はそうそういない。そして、眠りに誘う霧使いを悠馬は知っていた。

「メリナか」

 悠馬の声に誘われるように、霧の影からメリナが現れた。

 しかし、メリナの様子はいつもと違う。普段の怜悧さが失われ、荒々しい獣の雰囲気を纏っている。

 彼女はやる気だ。

 それが分かっていながらも、悠馬は問い質した。

「何のつもりだ?」

「プラド様の命令です。『妖精』をいただきます」

 言うなり、メリナは一足飛びで悠馬の懐に入った。メリナの細腕が悠馬の腹に向けられる。

「掴まっていろ!」

 悠馬は叫ぶと同時に左足を軸に半回転する。

 雫は後ろに、桔梗は前に出る形で振られ、間一髪でメリナの拳を避けるが、掠めた胸当てが砕け散る。

「……このッ!」

 桔梗は悠馬の腕を重心に回し蹴りを放つ。

 しかしメリナは避けない。

 必殺の一撃がメリナの腕に直撃、骨を砕くが――

「邪魔です」

「ニャ!?」

 腕はすぐさま回復し、元通りになった腕が桔梗に迫る。

 桔梗は悠馬から手を離すと両腕を使ってその拳を受け止めた。骨の砕ける音と共に、桔梗はぶっ飛ばされ、建物にぶつかる音と共に動かなくなる。

 悠馬はすぐさま距離を取ると、悠然と立つメリナを見て顔をしかめた。

「え……桔梗、さん?」

 ほんの一呼吸の出来事に、場慣れしていない雫は混乱する。

 立ちつくす雫にエルが警告を飛ばす。

「安心しろ雫。あの女はあれぐらいじゃ死なん。それより敵の狙いはお前だ、用心しろ」

 エルはそう言うと、悠馬の肩から飛び降りて後ろに回る。

「離れていても大丈夫か?」

「対魔力結界があるから多少は大丈夫だが長くは持たんな。メリナの魔力が強すぎる。ヘタをしたら『騎士』や『貴族』に迫るんじゃないか? いくら何でもおかしいだろ……ッ!」

「……その秘密は彼女の胃袋にあるようだ」

 よく見れば、メリナの褐色肌はどす黒い色に染まっていた。

「竜の牙が行方不明になっていた。それを取り込んだのだろう」

「無茶なことをする……」

 エルは顔をしかめる。

「そ、それって、あの人は大丈夫なんですか?」

「大丈夫ではない。あの様子では『魔獣』に堕ちる。むしろ、竜の牙ならとっくに堕ちてもおかしくないのだが……それに耐えるのは、さすがはモコ嬢の娘と言ったところか」

「感心している場合ではない。このままでは――」

 悠馬の危惧は現実となり、胴体が徐々にどす黒く染まりつつある。

 それに伴いメリナの筋骨は肥大し、どす黒い瘴気を放ち始める。

「うぅぅぁああぁあっぁぁあぁあああ!!」

 メリナ苦悶をあげて両腕で体を締め付ける。

「…………クッ!」

 悠馬は苦しむ彼女を見捨てられずメリナに駆け寄る。

 その決定的な判断ミスが、雫を無防備にした。

「……うわッ」

 次の瞬間、悠馬の背後で驚きの声が上がった。

 振り返ればエルが遠くに蹴り飛ばされ、雫はプラドに拘束されていた。

「お前なら、その女を助けようとすると思ったよ」

「……プラドッ!」

「おっと、いいのか? 俺にかまっていたら、メリナは堕ちるぞ」

 慌てて引き返そうとする悠馬を、プラドの手のひらが押し止めた。

 振り返れば、メリナが苦しそうに膝をついている。

「そいつの腹に一晩、竜の牙を入れてやった。もう、自力で浄化できる範囲を超えているが――お前なら助けられるかもな」

「…………ッ!」

「さぁ、お前はどちらを助ける?」

 プラドは皮肉の混じった笑みを浮かべる。

(どうする……ッ)

 最優先すべきは雫の安全だ。しかし、プラドの相手をしていたらメリナが『魔獣』に堕ちてしまう。メリナが魔獣化すれば街の住人達は眠ったまま殺されるだろう。ミノス達一線級の獣人なら倒せるかもしれないが、その間にどれだけの被害が出るかわからない。

 かといって、雫を放置することはできない。

 その逡巡を見透かしたプラドは悠馬を鼻で笑った。

 そのときだ――

「悠馬さん! その人を助けてあげてください!」

 雫が叫んだ。

 そんなことできるわけがない。

 悠馬はそう言いかけて、口をつぐんだ。

 彼女は親とはぐれた子供のように怯えているが、その視線には強い意志が宿っていたからだ。この場で浚われたとしても必ず助けに来てくれると信じているのだ。

 悠馬は苦渋の果てに――メリナに向かって走った。

「馬鹿が! それじゃあこの娘はもらっていくぞ! クハハハハハハ」

 プラドはそう言うと雫を抱えて消え去ってしまった。

 雫は気がかりだが、それは隅に押しやる。

 ひざまずいているメリナを抱き起こすと頭を両手で抱え込み、肌を密着させて抱きしめる。密着した部分から光が舞い散り侵蝕を阻害し始めた。

「ううぅぅうぅぅううぅぁああぁぁあぁあぁあああああああ!」

 メリナは獣のように唸り声を上げ、抵抗するように悠馬の背を引っ掻く。瘴気を吸って強化された両手は悠馬の筋肉を易々と引き裂き、たちまち服をどす黒く染め上げる。

 悠馬は顔をしかめるが、メリナの額に頭突きをくらわせると、問う。

「お前は何者だ?」

「…………ッ!」

 反応があった。

 額を合わせたまま再び問う。

「お前は何者だ?」

「…………わ、わた、しは…………メリ、ナ」

 メリナの瞳に光が戻り、爪を立てていた手から力が抜ける。

(まだ、間に合う……ッ)

 焦る気持を瞑目して抑える。

「では、俺は何者だ?」

「……まがみ、ゆうま……真神、悠馬」

「そうだ。では、お前は――」

 声に混じる恐れを抑え、悠馬は最後の問いを口にした。

「お前は『魔獣』か?」

「ちが、う。私、は……私は……ちが、う……」

 それ以上言葉にならず、メリナは気を失った。

 背中を掻き毟っていた両腕がダラリと地に落ち、全身のこわばりがとけてぐったりと身を預けてくる。油断はできないが、少なくとも峠は越えたようだ。

「終わったニャ?」

「……無事だったか」

 安堵のため息をついて振り返ると、桔梗がエルを連れてやってきていた。

 周囲の霧も薄れ、他の獣人達も目を覚まし始めている。

「無事じゃないニャ。両腕ボッキボキに折られてるのに、ガスのせいでなかなか回復しなくて地獄だったニャ」

「エルはどうだ?」

「私はこの白衣が守ってくれたから無事だ」

 白衣はボロボロだがエルは無傷だ。エルは労るように白衣をなでると悲しそうに目を伏せた。

 とりあえず二人が無事だったことに悠馬は胸をなで下ろす。

 同時に、悠馬の中では疑問が膨れあがる。

(レアと千影は何をしている……)

 彼女達ならプラドを抑えることも容易なはずだ。それなのに侵入を許し、今も出てくることはなかった。

(あちらも深刻な状況なのか、それとも他に意図があるのか――)

 竜の牙の件といい、奇妙な事態に悠馬は眉をひそめるが、瞑目すると思考を中断した。

 いま重要なのは雫の救出だ。

 この期に及んでも二人が出てこないということは、彼女たちの支援は期待できない。自分でやるしかない。

「悠馬、どうするニャ?」

「雫を救出する。桔梗達は街を守って――」

 そこまで言いかけて、悠馬の脳裏には自分を心配してくれた者達の顔が思い浮かぶ。

(…………違うか)

 悠馬は肩の力を抜くと、言った。

「桔梗はミノスに協力を要請してくれ。それと鼻のきく獣人に異界方面を調べてほしい。プラドの逃げた方角から考えておそらく『異界』に雫は居る」

「わかったニャ!」

 桔梗は満面の笑みを浮かべるとその場から消えた。

「エルはメリナを頼む」

「任せておけ。……しかし、ようやく他人を頼るようになったな。前のお前ならひとりで雫を追ったはずだ」

「かもしれん。だが、頼らない、とは言いすぎだ。俺はエルに頼ってばかりだろう」

 ミノスは恩があると言っていたが、そのほとんどはレアやエルの協力によるものだ。エルの魔導具がなければ助けられない命もある。むしろ彼女に頼りすぎているぐらいだ。

 そんな悠馬の思考を見透かして、エルは鼻で笑った。

「そのほとんどが『助けを求める』というものではなく『協力』だった。頼るにしてもリスクの少ないモノばかりだ。このネックレスのようにな」

 エルは真珠のついた浄化の魔導具をメリナの首にかける。

「私はお前に感謝してるんだ。あの薄暗い『異界』から救ってくれたことをな。だから恩返しがしたくて、お前の望む魔導具を作り続けたのに――お前はそれを獣人達に与え続け、自分では使おうとはしなかった」

 エルは寂しそうに眉尻を落す。

「正直、辛かったよ。お前は喜んでくれたが、私はお前に使ってもらいたかった」

「……すまない」

「謝る必要はない。初めから目的と用途を聞いた上で『依頼』を受けたんだから、これは私の我が儘というヤツだよ。ただ、覚えておいてほしい。『人工妖精』の失敗作と言えど無情なわけではないんだ」

 過去に、人工的に『妖精』を生み出す研究が行われた。

 魔力には所有者の知識や記憶が宿る。ならば、他の生物や無機物に妖精の血を与えれば、妖精が複製できるのではないか、という実験だった。

 しかし実験は失敗だった。

『妖精』の血肉を与えられた人形は自我を持ち、人のように活動するようになったが、なぜか魔力を持たなかった。制御能力だけは『妖精』並にあったが、『魔力を持たない』という致命的欠陥ゆえに多くの実験体が捨てられた。エルはそんな『人工妖精』のひとりだ。

「わかった。……この一件が片付いたら埋め合わせよしよう」

「それなら私もお風呂パティーにとやらに参加させてくれ。魔導具でむちむちボディになって、雫と桔梗を驚かせてやる」

 エルは含み笑いを漏らすと、ポケットからプリンを出すと地面に置いた。

 プリンは二十センチほどの電波塔に変化し、先っぽから電波のエフェクトが発生させた。

「プリン四号を呼んだ。メリナ嬢は任せてくれ。後は雫を助けるだけだ」

「そうだな」

 彼女は危険を承知で信頼してくれたのだ。

 ならば、それに応えなければならない。

 悠馬は不安になる思いを瞑目して抑えた。



 一方、連れ去られた雫は石で舗装された薄暗い闇の中にいた。

 周囲には青白い照明とは別に、青白い人魂のような物が浮いている。

「……ここまで来ればいいか」

 プラドはそう言って雫を自由にした。雫はすぐさま距離を取り、ムッとした表情をプラドに向ける。

「そう睨むな、あの小屋でのことは悪かったよ。お前が『妖精』だとは知らなかったんだ」

「……わたしを浚って……どうするつもりですか?」

「俺が依頼を引き継いでやるよ。魔力を持たねぇあの能無しより、俺の方が良いのは事実だろう?」

「……嫌。あなたみたいなヒドイ人には習いません。それに、あなたの目的はわたしの魔力ちからでしょう?」

 拒絶を見せる雫をプラドは鼻で笑う。

「あの能無しもそうだろう。お前の力を目当てに依頼を受けたんだ」

「悠馬さんとあなたは違う。わたしはあの人に心臓をあげると言いましたが、拒否しました」

「なら、その心臓――俺にくれ」

「嫌です」

「……それじゃあ力ずくで奪うしかねぇよなぁ?」

 プラドは愛想を捨て去った。

 口元を醜悪に歪め、目元をいやらしく細める。幾多の獣人達を破壊してきた残忍な笑顔が現れる。

 瞬間、ボボボッとプラドの周りに火炎が発生、弾丸のように雫に撃ち出された。

 狭い通路に爆炎が広がり、雫は炎と煙に覆われた。

「『妖精』と言っても、魔力が使えなければただの小娘か。手加減したから死にはしないだろうが……まぁ、その時はその時か」

 死肉を食い漁ろうとプラドが煙を掻き分けて前に進むと――見えない壁に阻まれた。

「……なに?」

 煙が晴れると、そこには無傷の雫が立っていた。

「魔力が使えないんじゃなかったのか?」

「……あ、あなたの力は効きません! 帰ってください! でないと、あなたは『魔獣』に堕ちますよ!」

 それは自らの特性を理解した雫なりの気遣いだった。

 だが、特性までは知らなかったプラドにとっては、宣戦布告と同義だった。

 歪んだ誇りを傷つけられてプラドは目元を痙攣させるが、すぐに歯をむき出して笑った。

「なるほど、『妖精』の称号は伊達ではないようだな。しかし、お前に俺が倒せるのか? 手足が震えているぞ?」

 雫の手足は小さく震えている。

 だが、逃げない。

 狂犬を前にしながらも、愛らしいハムスターは気丈に振る舞う。

「わたしには倒せなくても悠馬さんなら倒せます! あの人は必ずわたしを助けに来てくれます!」

 それは悠馬を信頼しての発言だった。

 しかしその発言はプラドの苦い記憶を掘り返す言葉でもあった。

 雫は知らないことだが、過去、プラドは悠馬に負けたことがある。

 いつものように獣人の女で『遊んで』いたら、悠馬が突然現れて襲いかかってきたのだ。

 当時『浄化の殻』について知らなかったプラドは火炎を放って迎撃した。これまで襲いかかってきた馬鹿な魔人や獣人と同じ末路を思い浮かべて嘲笑ったが、あろう事かあの男に火炎が効かず、反撃のラリアットをくらって気を失ってしまったのだ。

 気がつけば自分や仲間達は街を追い出され、主である『貴族』は街での権利を剥奪されていた。

 忘れられない過去が羞恥の炎となってプラドを焼く。

「クソガキが……ッ」

 プラドは懐から獣皮の鞘を取り出すと、純白の刃を抜いた。

「いくらお前が『妖精』でも竜の牙は防げないよなぁあ?」

 プラドは凶相を浮かべると、竜の牙を振り下ろした。

「……あっ」

 竜の牙は見えない壁をあっさりと食い破り、雫の心臓に突き刺さった。

「貴様は許さねぇ……永久に心臓をもぎ続けてやるから覚悟しておけよ」

 激情を炎のように迸らせたプラドは牙を押し込む。

 雫に苦痛はない。

 ただ、牙に自分の魔力が吸い上げられていることがわかった。

 竜の牙が輝き出す。

 しかし、怒りで視野が狭くなったプラドはそれに気づかない。

(悠馬さん……)

『俺と俺の仲間達を信じてくれ』

 雫はその言葉を胸に意識を失う。

 刹那、竜の牙は極光を放ち、薄暗い闇を焼き尽くした。

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