サヤカ:女子会

 今日は晴さんと話をする約束をしていたから、できるだけ早く起きて掃除をしていた。いい加減に飽きてきたのか、玄関に嫌がらせをするのもだんだんと終息してきている。こちらとしては掃除が楽になるのでありがたいことこの上ない。スプレーの落書きも、頃合いを見て消さないとヤンキーのたまり場扱いされてまた騒がしいことになってしまうな。ネットでスプレーの消し方を検索しているところに、晴さんが来た。

「どう? 元気にしてた?」

「私は元気でしたけど。ここ最近はどこにも出かけてませんでしたし。それより、晴さんこそ大丈夫だったんですか? 誘拐犯を逮捕するために入院したって聞いたんですけど」

それを言うと、晴さんの周りに漂う空気がピリついた。

「誰から聞いたの?」

「え? あの、私の安否確認に来た警察の人たちですよ」

「なんだ。じゃあよかった。私もちょっと色々あってさ、疑心暗鬼気味なんだ」

「同じです。私も誰を信じたらいいのかわからなくなって……」

あ、余計なことを言ってしまった。主に晴さんがその悩みの中心にいるのに、うっかり喋ってしまって気を遣わせてしまったら意味がない。晴さんにはそんな私の目論見がばれてしまったようだが、気にしてないように笑った。

「いいよ。こういう状況になったら、人が信じられなくなるのも無理はないよ。ゆっくり、信じられる人を増やしていけばいいんだから気にしないで」

「……晴さんも、そんな時期があったんですか?」

「……あったよ。今日、久しぶりに、ちょうど信じていいのか信じちゃいけないのかわからなかった人と再会したんだ。ちょっと語りたい気分だったし、この間言いそびれた、私とサヤカちゃんの似ているところに通じる話だから聞いてもらっていいかな?」

「いいですよ」

そうだ。私はそれが知りたかったのだ。私と晴さんが出会ったことは運命なのか、それとも、ただ偶然の出来事だったのか、この話を聞けばそれがわかる。そんな気がしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る