第三十七話 結果

 深い所からゆっくりと浮かび上がるように意識が浮上する。最初に入ってくる情報は耳からの音声だ。

 少し離れたところで複数の人間が忙しなく動いている音が聞こえる。声も聞こえるのだが、何を話しているかまでは聞き取れない。

 それに焦れたネスの目は、ゆっくりとまぶたを上げる。

「ネス! 目が覚めたのね!」

 この声はニアだ。どうして彼女がここに……と思って、ここが魔の森探索の基地だと気付く。基地では同じ班の女性三人が一緒の天幕を使っているのだ。

 という事は、キーリアもいるのだろうか。そう聞こうとして、声が出ないことに気付く。

 喉に手を当てて声を出そうとするのだが、空気が漏れるような音がするだけで一向に声が出ない。

「まだ無理しちゃだめよ。あなた、四日間も眠ったままだったんだから」

 ニアの口から出た衝撃の言葉に、ネスは声が出ないことも一瞬忘れて彼女の顔を見た。

「少し、診させてね。……うん、声の方はもうじき出るようになるわ。はい、お水。他に異常もないようだけど、今日一日は大事をとって安静にしおく事。いいわね?」

 ニアの静かな迫力に抵抗出来なかったネスは、おとなしく頷く。その様子を確認してから、ニアは報告があるからと天幕を出て行った。

 よく確かめてみたら、自分が着ているのは制服ではなく寝間着だ。自分で用意してここに持ってきたものだから、おそらくニアかキーリアが着替えさせてくれたのだろう。胸元を確かめると、魔力阻害の装置がない。

 一瞬森で壊してしまったから、新しいのが用意出来なかったのかと思ったけれど、よく考えたら魔力の使いすぎて倒れただろう相手に阻害装置をつける事はしないだろうと思い至る。少なくとも、森の中で装置が壊れても何の支障もなかったネスにとって、基地内で装置をつけない事による問題は特にない。

 それにしても、あれから四日も経っているとは。少なくとも、自分が無事でここにいるという事は、術式が暴走する事はなかったという事だ。ならば、成功したとみていいだろう。

 ――良かった……

 ほっとしたら、お腹の辺りから空腹を訴える音が聞こえてきた。ニアによればあれから眠ったままだというから、体が食べ物を望んでいても不思議はない。

 それにしても困った。安静を言い渡されているので、ここから動く訳にいかない。ニアの目を盗んで食堂用の天幕に行く手も考えたが、きっと後で山程のお小言をもらうだろう。だったら彼女が戻ってくるのを待つしかない。

 しきりに訴えてくる腹の虫を宥めながら、ネスは仰向けに寝たまま上を見上げた。天幕の天井部分には、夜間用の明かりがつるされている。それを見るとはなしに見ながら、術式を起動した時の事を思いだしていた。

 これまで実際に術式を起動した事など、魔導学院に入った頃くらいしかない。あの時期はまだ保有魔力量も濃度も今程ひどくはなかったから、ほんの少しの失敗で終わったのだ。

 そんなネスにとって、例の新型術式は思いきり自分の魔力を使える始めての体験だった。これまで如何に魔力を抑え込むかに腐心してきた自分が、逆に全力で当たらなければ起動出来ない術式があるとは。

「まあ、一人で起動する事自体がおかしいんだけど」

 水を飲んだせいか、やっと声が出るようになったようだ。まだ少し喉に引っかかるものを感じるが、それも時間と共に消えるだろう。

 術式というものは、大きくなればなる程起動に必要な魔力量が増えるので、必然的に複数人で起動するようになる。そうした術式は、最初から大人数用に調整されるものなのだ。

 だが、テロス班長の新型術式は個人で起動出来るものだし、逆に最初から大人数での起動に対応していない。あれだけ応用の利く作りをしていながら、だ。

 ネスの脳裏に、術式起動中のドミナード班長の言葉がよぎる。「テロスがお前の為に作った術式」、確かにあの時、班長はそう言ったのだ。

 あれはどういう事なのだろう。確かに研究所でテロス班長に遭遇した事はあるけれど、あれからそんなに時間は経っていないはずである。そんな短時間であれだけの術式を作り上げる事が出来るのだろうか。

 新型の術式と認定される為には、少なくとも七割以上の新規部分を持っていなくてはならない。要は、これまでに作られた術式の部分部分を抜き出して組み上げただけでは新型と認められないという事だ。

 学院で閲覧出来る術式に関しては全て覚えているネスにも、見た事のない部分が多くあった。となれば、やはりあれは本当の意味での「新型」と呼ぶべきだろう。

 それを、一個人の為に作った?

「ないない」

 浮かんだ考えを否定するように口にする。

「何がないの?」

「うわ!」

 誰もいないと思って呟いた独り言に対して声がかかれば、誰だって驚くというものだ。慌てて天幕の入り口を見れば、ニアがトレイを持って入ってくるところだった。

「声、ちゃんと出るようになったわね。これ、食堂でもらってきたの。お腹が空いてるんじゃないかと思って」

「助かります! もうさっきからお腹が鳴って鳴って」

 寝台から飛び起きたネスの言葉に合わせて、彼女の腹部から盛大な音が鳴り響く。どうやら、体の方が本人より雄弁らしい。

 くすくすと笑うニアから受け取ったトレイには、野菜や肉を柔らかく煮込んだ具だくさんのスープがあった。そのいい匂いに、またしても腹部から空腹を訴える音が鳴る。

「冷めないうちに召し上がれ」

「……いただきます」

 スプーンでひとすくい口に入れた薄味のスープは、飢えた体に染み入るようなおいしさだった。そこからは堰を切ったようにがっついて食べる。完食した後にやっと、こちらを慈愛の笑みで見つめるニアがいる事に気付いた。

「落ち着いた?」

「は、はい……」

 穴があったら入りたいとはこの事か。恥ずかしくてニアの顔をまともに見られないネスは俯いてしまった。

 ネスの膝の上からトレイを避けたニアが、腕を取ってくる。

「もう一度診せてね。……うん、問題なさそう」

 そういえば、先程も同じようにしていたのを思い出した。ネス自身は治療系の術式はあまり知らない。専門性の高い術式は、学院では習わないのだ。

 もっとも、いくつかは学院の図書館での自習の際に目にした事がある。ニアが使ったのは、治療系の術式の中でも体内の不調を探るタイプの術式なのだろう。

 手を放したニアは、ネスを真っ直ぐ見て言った。

「ネス、着替えたら班の天幕まで来て。ドミナード班長が呼んでいます」

「……はい」

 正直、来たかという気分だ。おそらく、術式を使った事に関する話だろう。

 そういえば、魔の森はどうなったのだろうか。

「あの、ニアさん。森の方は今、どうなってるんですか? トカゲモドキは……」

 術式が暴走しなかった以上、起動に成功したはずだからトカゲモドキも全て駆除出来たはずなのだが。

 ネスからの質問に、ニアは答えを濁した。

「それは、班長から聞くといいわ」

「はあ」

 どういう事なのだろうか。とりあえず、先に行くと言って天幕を出たニアを見送った後に急いで着替えたネスは、班用の天幕へと向かった。


 基地内には慌ただしい空気が漂っていた。走り回っている人が多く、うっかりぶつかりそうになった事も一度や二度ではない。

 そういえば、ネスが目覚めた時も天幕の周囲が騒がしかった。基地の撤収作業なのかとも思ったが、その割には荷物をまとめている様子が見られない。

 首を傾げつつ向かった天幕には、班員以外にもレガ、ジュンゲル班長、テロス班長という魔の森探索のメンバーが揃っていた。

「来たか」

「えーと……遅くなりました?」

 ドミナード班長の言葉に、つい疑問系で返してしまったのは、自分が皆を待たせたのかと思ったからだ。とはいえ、何時までに集合するようにとは言われていない。

 班長からも、特に遅刻を咎める言葉は出なかった。

「体の具合はどうだ? ニアからは問題なしと聞いているが」

「はい、どこも悪くありません」

 気分の悪さや痛みなどもない。自分でも驚く程通常通りなのだ。あれだけ大きな術式を一人で起動したというのに、反動らしい気配すらないとは。

 ――テロス班長の術式が優秀だからか、私の体質が変だからなのか……術式の方であってほしい。

 席に着きながらそんな事をこっそりネスが思っている間にも、ドミナード班長の話は進んでいた。

「さて、改めてだが、ここでの我々の仕事は終わった。これから本部へと帰還するのだが――」

 帰還に際しての注意事項や荷物の積み込みに関する時間などを一通り説明すると、ドミナード班長は伝達事項は以上だと言って話を締めくくった。

「質問はあるか?」

 ドミナード班長の確認に、ネスはおずおずと手を上げる。今聞かなければ、次にいつ聞けるかわからない。

「あのう……」

「どうした?」

「その……魔の森って、どうなったんですか?」

 班長に促されたネスがそう聞くと、その場にいた全員が驚いた表情でネスを見てくる。その勢いに思わず腰が引けながらも、補足説明をしておいた。

「術式を使った結果を見ないで気を失っちゃったので……ここに来る間にも森の方は見ていませんし」

 ネスが寝ていた天幕からここに来る経路は、基地の中央に作られた巨大天幕の裏側を通るものなので、巨大天幕の表にある森は影になって視界に入らないのだ。

「お前、あれだけの事やっておいて覚えてねえのかよ?」

「とんでもねえ奴だな」

「今からでも行って見てこいよ」

 相変わらず三馬鹿から有り難くない言葉をもらったが、あえて無視しておく。ニアとキーリア、リーディは三人で顔を見合わせ、班長達とレガは何やら小声で話し合っていた。そんなに口に出来ないような事になっているのだろうか。

 一体あの術式で、自分は何をしたのだろう。今更ながらに不安になってきたネスに、レガが慌てた様子で説明してくれた。

「ああ、そんなに泣きそうにならないで。大丈夫、森の脅威は去ったから。トカゲモドキもね。もう問題はないよ。ただ……」

「ただ?」

 大丈夫と言いつつも、最後に加えた一言は何を意味しているのだろうか。ネスの不安は消えないままだ。

 言い淀むレガに代わって答えを教えてくれたのは、術式を作ったテロス班長である。

「ただ、ちょっと大きな話になってしまってね。もしかしたら機構のお偉いさんから何か言われるかもって話」

「テロス!」

「お前が言いにくそうにしているからだろう?」

「だからといって、もう少し言い方ってものがあるだろう!」

 テロス班長に食って掛かったのはレガだが、ネスはそれどころではない。大きな話とは、どういう事なのだろう。

 レガとテロスの言い合いを止めたのはジュンゲル班長だ。

「いい加減にしろ! 大の男が二人して。年端もいかぬ子供が怯えているのがわからんのか」

 彼の大きな声で一喝された二人は、渋々といった様子でお互いに引き下がった。それにしても、子供扱いはどうなのか。先程までの不安や恐れが一気に吹き飛んでしまったのはいいことなのかもしれないが、幼児扱いはいただけない。

「あの、ジュンゲル班長。私、そこまで子供じゃないんですけど……」

「本来ならまだ学生でいるべき年齢ではないか。成人までもまだ三年はあると聞いているぞ」

「……」

 確かに未成年という意味では「子供」ではある。さすがにそれ以上言えなくなったネスは黙るより他なかった。

 その様子を見ていたドミナード班長は、大きな溜息を吐いてから説明を始める。

「テロスが作った新型の術式は、変換の為のものだそうだな。その術式を使った結果、魔の森は実質消滅している」

「消滅!?」

 班長の言葉の内容に、ネスは驚きの声を上げた。変換だけで、どうして森が消滅するのか。

 訳がわからず混乱するネスに、ドミナード班長が眉間に皺を寄せながら質問してきた。

「こちらからも質問なんだが、あの時変換指定に何を指定したんだ?」

「え? 何って……あの森は火山から火の気の魔力を受けているから、水か氷をと思って――」

「だからか!!」

 言葉尻を奪って叫んだのは、三馬鹿達だ。彼等はそれぞれニア達にげんこつをもらって撃沈している。

「いやあ、自分で作った術式だけど、ああまで見事に使いこなしてくれると作った甲斐があるってものだよ」

「テロスが作った術式にしては、綺麗な結果だよねえ」

「確かにな。その点はレガに同意する」

「君達……」

 テロス班長とレガ、それにジュンゲル班長の言葉に、ネスは首を傾げた。綺麗な結果とは、一体どんな事になったのだろう。

 その様子を見たドミナード班長の眉間の皺はさらに深くなった。

「なるほど。よくわかった。ネス、森もトカゲモドキも、全て氷に変換されたんだ。レガの簡易調査では、森の地下にも氷が編み目のようにあるというんだが、それに心当たりは?」

「……多分、対象指定に地下の魔力の流れも入れたからだと」

 呆然としながら呟いたネスの言葉に、班長達は何やら頷いている。それを視界に収めながら、ネスは今ドミナード班長から聞いた言葉を反芻していた。

 ――森が氷になった……? トカゲモドキも氷に? 魔力の流れもって……

 ネスの脳裏には、凍り付いた魔の森の情景が浮かんでいた。トカゲモドキも冷凍状態になったという事なのだろうか。魔力の流れが凍るというのはどういう現象なのかよくわからないが、地下に氷の塊でも出来たのかもしれない。

 それにしても、新型術式を教えてもらった時に、テロス班長からこの術式ならトカゲモドキにも対抗出来ると聞いていたけれど、それがこういう結果になるとは。

 起動したのは自分だが、そんな事が出来る術式を作ったテロス班長の能力に、改めて畏れ入る思いである。

 自分の考えにはまり込んでいるネスを余所に、ドミナード班長による今後の予定が告げられていった。

「先程の話の続きだが、基地はこのまましばらく局が使用するので、撤収作業は局員で行う。我々が使用していた天幕もそのままでいいそうだ」

 班長の言葉に、珍しくも三馬鹿が手を上げて質問する。

「質問! 何で局員だけ残るんだ?」

「あいつらだけおいしい思いするとか、ないよな?」

「もしかして、トカゲモドキの解体とか?」

「そんな事が出来る訳ないだろう。魔の森の影響調査だ。何ならお前等も残って手伝っていくか?」

 ドミナード班長に言われて、三馬鹿は揃って首を横に振る。それにしても、影響調査とは何なのだろうか。

 ネスの疑問は、三馬鹿の次に質問したリーディによって解消された。

「班長、影響調査って、何をするんですか?」

「湧出魔力量を中心に、生態調査や地質調査が入るらしい。人体に影響がないと判断されれば、この地域の開発も進むそうだ」

「開発ですか? ですが、森は隣国デズーリィとの国境付近ですよね?」

「だからこそ、らしい。パトリオート側としては長年この土地を開発したかったそうだが、あの森が邪魔をしてなかなか進められなかったと聞いている」

 班長の説明によれば、森を切り開ければ、隣国と直接行き来が出来るようになるので、魔導機構の本部があるパトリオート帝国が喜ぶのだそうだ。

 機構自体はあらゆる国から独立しているとはいえ、本部を置いているパトリオートにはそれなりの配慮をする必要があるらしい。

 パトリオートとデズーリィは魔の森でのみ国境を接していて、ここを通れない為に第三国を経由しないと人と物の行き来が出来なかったそうだ。そこに今回の森消滅である。本部経由で報せを受けたパトリオート上層部が、すぐに調査を依頼してきたのだという。

「という訳で、我々だけでの帰還だ。各自、忘れ物がないようにしろよ」

 ドミナード班長の言葉で、その場は解散となった。


 基地内の慌ただしさは、局員だけで行う調査の準備の為だったらしい。ばたつく局員を尻目に、ネスはニア達と一緒に自分達の天幕へと向かっていた。

「局員は忙しそうね」

 走り回る彼等を見て、ニアがぽつりとこぼす。仕事を終えた自分達は帰るだけなのでのんびりしているが、それが申し訳ないとでも言いたそうだ。

「これからが彼等の本当の出番だからね。そういえば、あの主任だけは私達と一緒に帰るんだってね?」

「レガさんですか? 例の結晶を早く解析したいらしいので、一足先に帰るそうですよ」

 キーリアに聞かれたネスは、先程見たレガの様子を思い出した。嬉しくて堪らないといった様子のレガは、すぐにでも本部へ帰りたいと駄々をこねていたのだ。

「調査に当たるのは、レガさんとは違う班の人達だそうで」

「ああ、それでか。局もいくつか班があるもんね」

 今回の魔の森調査には、実に二十以上の班が参加していたという。そのうちの十八の班が残って調査に参加するらしい。

 レガによれば、普段は各々の研究に没頭しているのでとこの連携はないそうだが、こうした大きな仕事の時には協力する事もあるのだとか。

 ネスなどは、普段からあれこれ協力していれば研究も捗るのではないだろうかと思うが、当事者であるレガはまた違う考えがあるらしい。曰く「自分で成し遂げてこその研究だよ」だそうだ。

 元々持ち込んだ荷物が少ないせいか、荷造りはあっという間に終わってしまった。天幕もこのまま置いていくのだし、以外とやる事が少ない。

 出発までどうやって時間を潰そうかと悩むネスに、ニアが魔の森を見てきたらどうかと薦めてきた。

「まだ見ていないでしょう? もう見る機会はないだろうから、見ておいたらどうかしら?」

 確かにここに来る事などもうないだろうし、何より本当に開発が始まったら森そのものがなくなってしまう。これが最後のチャンスだろう。そう思ってネスは一人で基地の表側に向かった。

 森は現在局員以外立ち入り禁止になっているが、外縁部分までは近寄る事が出来る。これも魔力の影響が消えた結果だろう。

 基地の表側の出入り口から出て森に向かうと、遠目からでも今までとは違う色になっているのがわかる。以前までは緑であった森が、今は白一色に染まっているのだ。

 凍り付いているせいかと思いつつ近寄ってみると、何やら冷気が漂ってくる。しかも、何やら思っていたのは違うのだ。

 気のせいではないかと思いつつ、さらに近づいてみた。その結果は――

「何これええ!!」

 そこには、全てが氷と化した森が広がっていた。凍っているのではなく、木が氷に変わっているのだ。

 枝の一本、葉の一枚、その葉脈まで綺麗に象った氷細工がその場に並んでいる。木々でこれなら、きっとトカゲモドキもそのままの姿で氷の彫像になっているのではないか。一見すると、芸術作品に見えなくもない。

 確かにこれなら、「綺麗な結果」と言われても納得が出来るというものだ。でも、だからといってネスのショックが弱まる訳ではなかった。

 良く見れば、下草までもが氷になっている。小さいものは既に溶けかけているようだ。まさか、あの術式の結果がこれとは思わなかった。一体、自分はどこで何を間違えたのか。

 これらが全て溶けたら、何も残らず森が消滅するだろう。班長が言っていた言葉は正しくこの状態を表していたのだ。

 あまりの事に呆然とするネスを、局員達が遠巻きにして首を傾げながら見ている。彼等にしてみれば、森をこの姿に変えた張本人に今更何を驚いているのかと思っているのだろう。

 だが、ネス自身にとってはこの結果は予想外もいいところである。

 呆然としたネスは、出発時間になっても姿を見せない事に焦れたドミナード班長によって発見されるまで、その場で立ち尽くしていた。

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