因縁
「よし、兵士はあらかた出て行ったみてぇだな。行くぞ」
「あいよ」
ラリーが先陣を切るように進み、テミスが後に続く。周りに人がいないかを確認しながら素早く進んでいき、城と貴族区を分ける鉄柵の内部へと侵入した。そしてラリーが右手で担いでいた大剣を腰に回し、佩く。
「ん? 背中に担ぐんじゃないのかい?」
「いや、あくまで兵士に見つからないようにマントで隠してるだけだ。腰に佩いた方が実用的だぞ」
「そりゃしらなんだ」
緊張をほぐすような二、三言の会話を終えてから、城門をこじ開けて無理矢理侵入する。いつでも出れるようにと待機していた兵士達が、突然の侵入者達に驚きの視線を送っていた。その隙を逃さんと、ラリーが大剣を引き抜き集団の中へと身を躍らせる。テミスも素早く拳銃を引き抜き、端にいる兵士達に銃弾を放っていった。
波のようにラリーへと兵士が押し寄せる。そして、どこからともなく襲いかかってくる剣撃をラリーは捌き、致命打など考えずがむしゃらに大剣を振る。時に同士討ちをさせ、捌く勢いのまま的を薙ぎ、人の波の中に大きな空洞を作り出す。時折体に浅い傷が走るが、そんなものに構ってられなかった。
その波の端を削るように、テミスが銃撃で支援をする。が、それに気づいたのかテミスの方へと兵士も押し寄せ始めた。
──残弾は右に3、左に2。撃ちきっておくか。
テミスが左手に握った銃の引き金を二回連続で引く。連なったように銃声が響き、新しく体に二つの穴を作った兵士がそこから血を流しながら倒れ込んだ。
テミスが右腕を前に突き出し、体を半身にさせる。右腕で狙いを付けながら、左手で握った銃の装填を始めた。
銃に付けられた小さな出っ張りを押すと、銃身の半分がかかる力に従って下に曲がり、垂れる。それを伸ばした人差し指で引き寄せ、固定する。右手で発砲しながら左手の銃を下に向けると、重力に従って固定されなくなった弾倉が落ちた。
右手に握られた銃の弾倉に残った最後の一発を撃つ。同時に太腿に下げられた幾つもの弾倉に左手の銃を当てる。弾倉の中央に当てられた穴に銃に付けられた弾倉を固定する棒を入れ、引っ張るように外して曲がった銃身を元に戻す。直ぐさま撃鉄を引き起こし、これで既に装填が完了していた。
そして左の銃を撃ちながら、右手も同じように装填を始める。
──あのアメリアって鍛治屋のこと、見直さなきゃなぁ。
そう思いながら押し寄せる兵士達を舞うように躱し、銃弾を叩き込んでいく。連なった銃声が轟き、終わることのないように思われた人の波が次第に少なくなっていった。
どれほどの時がたっただろうか。
神経をすり減らすような一瞬の油断もできない空間が、少しばかり弛緩する。残された二人の人間は、自分の血か敵の返り血か解らない程に血にまみれていた。互いに頷き合って、テミスは奥の空間へと進んでいく。
「おや。二人がかりで挑まないんですか?」
ラリーの元に、何気ない声が届く。が、それはラリーにとっては空気を裂くように頭に響くように聞こえた。
「コナー……!」
ラリーが凄まじい形相で振り向くと、そこにはコナーの他に何人もの兵士がいた。その兵士達がラリーから浮かぶ殺気に、怨念に総毛立つ。
「貴方たちは正直足手纏いです。奥にいった女を追って下さい」
「ですが……」
「なら、貴方たちは私に合わせて連携することができますか?」
その言葉に、近くにいた兵士が黙り込む。そして静かに後ろの兵士達に指示を出し、端を回り込んで奥の部屋へと進んでいった。
「……久しぶりですね。ラリー隊長」
そう言って、コナー・ブレンダンは腰に下げたレイピアを引き抜いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます