概要
弔辞は、故人が読みます
「妻の棺を一つ。日取りは来月十日で。喪服も一着――寸法は、別に渡す」
葬儀屋の見積書は、いつもの請求書の束に紛れて、伯爵夫人ロザモンド、三十歳の机に届いた。屋敷の払いは十年、全部彼女が見てきたのだから、当然である。
棺の寸法は彼女のものだった。喪服の寸法は、彼女のものではない。
その朝、夫は言った。「顔色が悪いな。医者には私から話してある。滋養の薬を、毎朝欠かさず飲め」
「承知しました」
彼女は見積書に承認の署名をした。日取りは動かさない。案内の名簿も、供物も、夫の注文のとおり。ただし喪主は妻本人で、弔辞は本人が読む。薬は毎朝、薔薇の鉢へ注いだ。
来月十日。広間に並んだ弔問客の前で、故人が弔辞を読み上げる。この十年、屋敷の灯りを絶やさなかったのは誰か。故人の遺志として、嫁入り道具
葬儀屋の見積書は、いつもの請求書の束に紛れて、伯爵夫人ロザモンド、三十歳の机に届いた。屋敷の払いは十年、全部彼女が見てきたのだから、当然である。
棺の寸法は彼女のものだった。喪服の寸法は、彼女のものではない。
その朝、夫は言った。「顔色が悪いな。医者には私から話してある。滋養の薬を、毎朝欠かさず飲め」
「承知しました」
彼女は見積書に承認の署名をした。日取りは動かさない。案内の名簿も、供物も、夫の注文のとおり。ただし喪主は妻本人で、弔辞は本人が読む。薬は毎朝、薔薇の鉢へ注いだ。
来月十日。広間に並んだ弔問客の前で、故人が弔辞を読み上げる。この十年、屋敷の灯りを絶やさなかったのは誰か。故人の遺志として、嫁入り道具
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