概要
もう、我慢はやめました。おばあ様を、呼びました
約束の日に、婚約者は来ませんでした。十年で、これが何度目かは数えておりません。
贈り物は、いつのまにか妹のものになっておりました。「エルザのほうが似合うもの」と、母が申しますので。
父は笑って、こう言いました。男とは、そういうものだ。
そして母が、十年、同じ言葉を言い続けました。
「お前が我慢すればいい」
わたくしは我慢が上手でございます。十年、一度も泣きませんでした。それだけが取り柄でございました。
でも、その夜だけは、なぜか手が勝手に動きました。
生まれて初めて、辺境のおばあ様へ、手紙を書いたのです。
――三日後の朝。玄関の扉が、ドガンと激しく外から蹴り開けられました。
七十六歳。辺境を三十年守り抜いた、元・伯爵夫人。
おばあ様は、帳簿もお持ちになりません。証拠も、お
贈り物は、いつのまにか妹のものになっておりました。「エルザのほうが似合うもの」と、母が申しますので。
父は笑って、こう言いました。男とは、そういうものだ。
そして母が、十年、同じ言葉を言い続けました。
「お前が我慢すればいい」
わたくしは我慢が上手でございます。十年、一度も泣きませんでした。それだけが取り柄でございました。
でも、その夜だけは、なぜか手が勝手に動きました。
生まれて初めて、辺境のおばあ様へ、手紙を書いたのです。
――三日後の朝。玄関の扉が、ドガンと激しく外から蹴り開けられました。
七十六歳。辺境を三十年守り抜いた、元・伯爵夫人。
おばあ様は、帳簿もお持ちになりません。証拠も、お
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