概要
消さないで。隣に描いて。――一枚の絵だけで交わす、名前のない恋文。
誰も来ない旧校舎三階の第二美術室。
高名な日本画家を母に持つ高校二年生・雪村藍は、そこでだけ絵を描いていた。完璧に描けても、完成させることはできない。そんなある日、描きかけの百号キャンバスに、知らない誰かの筆が三本加えられていた。
怒りながらも消せなかった藍は、キャンバスの余白に抗議を書く。
返ってきたのは、容赦のない一言だった。
「あなたの空は、息をしていなかった」
名乗らない。詮索しない。顔を合わせない。相手の描いたものを消さない。
四つの約束と曜日制で始まった、絵だけの文通。
名前も顔も知らない相手の線に救われ、藍の絵は少しずつ息をし始める。
けれど、その相手は――
一年前、藍の絵を「うまいけど、なんにも言ってなくない?」と切り捨てた、教室でいちばん苦手な同級生・朝比奈茜だっ
高名な日本画家を母に持つ高校二年生・雪村藍は、そこでだけ絵を描いていた。完璧に描けても、完成させることはできない。そんなある日、描きかけの百号キャンバスに、知らない誰かの筆が三本加えられていた。
怒りながらも消せなかった藍は、キャンバスの余白に抗議を書く。
返ってきたのは、容赦のない一言だった。
「あなたの空は、息をしていなかった」
名乗らない。詮索しない。顔を合わせない。相手の描いたものを消さない。
四つの約束と曜日制で始まった、絵だけの文通。
名前も顔も知らない相手の線に救われ、藍の絵は少しずつ息をし始める。
けれど、その相手は――
一年前、藍の絵を「うまいけど、なんにも言ってなくない?」と切り捨てた、教室でいちばん苦手な同級生・朝比奈茜だっ
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