概要
誰も迷わない都に迷ってばかりの娘がいた。私だけが、近づけた。
買わなかった魚。行かなかった道。言わなかった言葉。
この都では、それが空に浮かぶ。
選ばなかったほうを体の外へ手放すので、誰も迷わない。仕事は速く、正しく、静かに進む。橋は落ちない。屋根は漏らない。
私は西の端を測る測手だ。端までの距離は七年間、一二〇〇のまま動かない。地図の左端にはこう書いてある——ここより先、近づけず。行けない、ではない。
その年、空を一枚も持たない娘が見つかった。十六。名を唯という。誰も彼女に近づけない。
私だけが、近づけた。
この都では、それが空に浮かぶ。
選ばなかったほうを体の外へ手放すので、誰も迷わない。仕事は速く、正しく、静かに進む。橋は落ちない。屋根は漏らない。
私は西の端を測る測手だ。端までの距離は七年間、一二〇〇のまま動かない。地図の左端にはこう書いてある——ここより先、近づけず。行けない、ではない。
その年、空を一枚も持たない娘が見つかった。十六。名を唯という。誰も彼女に近づけない。
私だけが、近づけた。
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