概要
返すなら全部——理由も、あの重さも。
二月十四日。雨。この席でわたしはあなたを忘れることに決めた。
あなた、と書いて、まだそこに正しい名を入れられる。入れられるうちに書いておく。指がまだ綴りを覚えている。
けれど二行上のフルネームがもう読めない。インクはある。形もある。誰を指すのかが分からない。
カナエが手のひらを差し出す。いちばん最後に手放したもの。受け取れば、ほどけた糸を端から手繰るように、全部が順に戻る——。
あなた、と書いて、まだそこに正しい名を入れられる。入れられるうちに書いておく。指がまだ綴りを覚えている。
けれど二行上のフルネームがもう読めない。インクはある。形もある。誰を指すのかが分からない。
カナエが手のひらを差し出す。いちばん最後に手放したもの。受け取れば、ほどけた糸を端から手繰るように、全部が順に戻る——。
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