概要
追い縋るいくつの夏を束ねても目眩む宵に降る氷雨には
中学一年生の夏。エコ週間という制度でエアコンは使われず、開け放たれた窓から蒸した風が夏草の匂いを運んできた。直前の理科で陽炎を知ったこともあり、それは風というより大気のゆらぎに近く感じた。そういったことで、国語の時間に書かされる作文に集中できるはずもなく、教室一帯に満ちた気怠い空気は換気されることなく滞留していた。──ただ一点を除いては。
隣の席に座っていた加志さんは香川からの転校生で、その夏にただ一人涼しい顔を保つ女子生徒だった。僕は、その涼しい顔が冬になるとどうなるのか、ずっと気になっている。
それから長い時間をかけて、授業は残り十分になった。あの夏から大学二年の今になるまでと比べても長い時間だった。実際何かが歪んでいると思うほどの時間感覚だ。三鷹先生の指示で、僕は加志さんと作文を交
隣の席に座っていた加志さんは香川からの転校生で、その夏にただ一人涼しい顔を保つ女子生徒だった。僕は、その涼しい顔が冬になるとどうなるのか、ずっと気になっている。
それから長い時間をかけて、授業は残り十分になった。あの夏から大学二年の今になるまでと比べても長い時間だった。実際何かが歪んでいると思うほどの時間感覚だ。三鷹先生の指示で、僕は加志さんと作文を交
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?