★
0
概要
漱石さん、なんで「心」ではなく「こゝろ」と書いたの?
夏目漱石はなぜ『心』ではなく『こゝろ』と書いたのか。漢字でもひらがなでも意味は同じ、という片づけ方を、このエッセイは静かに拒否する。
手がかりは、文芸評論家・柄谷行人の「内面の発見」という理論だ。「内面」とは、もともと人間の中にあったものではない。明治期の「言文一致」運動——話すように書くという言語革命——によって事後的に「発明」された装置だ、と柄谷は言う。書かれた文章から「もうひとりの自分」が消え、素の声が裸で差し出されたとき、人々は初めて「文章の奥に本当の心がある」と感じはじめた。内面という空間は、発見されたのではなく、作られたのだ。
漱石のひらがなは、この装置の完成とほぼ同時に書かれた選択だった。「心」と書けば古典の重みが立ちあがる。「こゝろ」と書けば、意味は歴史を脱ぎ捨て、生まれたて
手がかりは、文芸評論家・柄谷行人の「内面の発見」という理論だ。「内面」とは、もともと人間の中にあったものではない。明治期の「言文一致」運動——話すように書くという言語革命——によって事後的に「発明」された装置だ、と柄谷は言う。書かれた文章から「もうひとりの自分」が消え、素の声が裸で差し出されたとき、人々は初めて「文章の奥に本当の心がある」と感じはじめた。内面という空間は、発見されたのではなく、作られたのだ。
漱石のひらがなは、この装置の完成とほぼ同時に書かれた選択だった。「心」と書けば古典の重みが立ちあがる。「こゝろ」と書けば、意味は歴史を脱ぎ捨て、生まれたて
応援、ありがとうございます
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?