舞台は古代メソポタミア。羊飼いの男と、都市からやってきた書記官の男が再会します。どうやら羊飼いの男は、昔書記官だったようです。
どうして男はエリートである書記官をやめ、羊飼いになったのでしょう?
それは二人が酒を飲みながら語らう中で明らかになります。
本作を生み出してくださった作者様に、敬意と感謝を示したいです。古代メソポタミアという、残念ながらあまりメジャーではない舞台にもかかわらず、作者様の巧みな筆致により、本作からはあの空気が感じられるのです。
粘土板、葦、ビール、円筒印章、イナンナの冥界下りやシュルギ賛歌……メソポタミアならではの装置が、静かな物語を粛々と彩っています。
そしてなにより、男が書記官をやめ、羊飼いになった理由。
胸が締め付けられるようでした。たとえるなら、「西部前線異常なし」のタイトルの意味を知った時のような衝撃。
短いにも関わらず、激しい動きは抑えられた物語にも関わらず、とても深い余韻を残す作品です。