概要
私の名前は、まだ生まれる前の過去帳に書かれていました。
父が五十八年勤めていた寺の世話人を継いでほしい、と住職に言われています。
実家は関東北部の山あいにある、古い大寺の檀家です。父は二十歳の頃から、
その寺の世話人を務めていました。先月、父は仏間で、正座をしたまま、息を
引き取りました。享年七十八。
葬儀の翌日、住職が訪ねてきて、私に世話人の継承を申し出ました。
父の遺品を整理すると、机の引き出しから、五十八冊の世話人日誌が出てきま
した。一冊目の裏表紙には、二十歳の父の字で、こう書いてありました。
―― 就任は、死をもって終わる。
そして、同じ引き出しから、寺の過去帳の写しも出てきました。
そこには、私の名前が、まだ生まれる前の日付で、書かれていたのです。
これは、私が父の遺したものを少しずつ読み解いていく、その記録です。
もしお心
実家は関東北部の山あいにある、古い大寺の檀家です。父は二十歳の頃から、
その寺の世話人を務めていました。先月、父は仏間で、正座をしたまま、息を
引き取りました。享年七十八。
葬儀の翌日、住職が訪ねてきて、私に世話人の継承を申し出ました。
父の遺品を整理すると、机の引き出しから、五十八冊の世話人日誌が出てきま
した。一冊目の裏表紙には、二十歳の父の字で、こう書いてありました。
―― 就任は、死をもって終わる。
そして、同じ引き出しから、寺の過去帳の写しも出てきました。
そこには、私の名前が、まだ生まれる前の日付で、書かれていたのです。
これは、私が父の遺したものを少しずつ読み解いていく、その記録です。
もしお心
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?