本作が描くのは、情愛の欠片もない徹底した「政治」としての出産です。ボンクラ王子との政略結婚も、父による緻密な設定通り。糸波自身もまた、その設定をなぞることでしか自分の価値を見出せなくなっています。赤ちゃんの声を聞こうともせず、ただ「新しい服を国民にお披露目する」ことだけを夢見る彼女の姿は、究極に美しい「人形」のようです。人間性を剥ぎ取られた先にある「安堵」とは何か。その皮肉な問いかけが、読者の胸に鋭く突き刺さります。
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