第7話 ランドル砦と護者


 フェンガルと共に森を抜けた四人は、夕暮れ時に古い石造りの砦にたどり着いた。【ランドル砦】と呼ばれるその要塞は、長い間放棄されていると思われていた。


 「廃墟かと思ったが、煙が上がっているな」


 ガレンが砦の煙突から立ち上る細い煙を指差す。


 『ここには【護者】が住んでいる』


 フェンガルが説明する。


 『真のいくら丼を守るために選ばれし者だ。君たちを試すだろう』


 砦の門に近づくと、重厚な扉がゆっくりと開いた。中から現れたのは、質素な修道服を着た中年の女性だった。穏やかな顔立ちだが、その瞳には深い知恵と強い意志が宿っていた。


 「ようこそ、真なる探求者たちよ。私は護者シスター・マリアンヌ」


 女性が丁寧にお辞儀をする。


 「あなたたちがいくら丼を求める者たちですね。フェンガルから連絡を受けておりました」


 リナが驚く。


 「連絡って、いつの間に?」


 『我々従魔には、护者との特別な絆がある』


 フェンガルが説明した。


 マリアンヌが砦の中へと案内する。内部は外観と違って清潔で整理されており、温かな雰囲気が漂っていた。


 「まずは食事を。長旅でお疲れでしょう」


 食堂で簡素だが心のこもった料理を振る舞われながら、マリアンヌが語り始めた。


 「真のいくら丼への道は険しいものです。あなたたちの覚悟を試させていただきます」


 クロエが身を乗り出す。


 「どんな試練だ?」


 「三つの試練があります。【勇気の試練】、【知恵の試練】、そして【心の試練】」


 マリアンヌが厳粛な表情で続ける。


 「これらを乗り越えた者だけが、ナンミョウへの真の道を歩むことができます」


 ガレンが剣士らしく問う。


 「勇気の試練とは戦いか?」


 「戦いもありますが、それだけではありません。真の勇気とは、恐怖に立ち向かう心です」


 リナが不安そうに呟く。


 「知恵の試練は?」


 「古の謎かけに答えていただきます。ただし、頭の良さだけでは解けません。心の声に耳を傾けることが大切です」


 最後にクロエが尋ねた。


 「心の試練が一番難しそうだな」


 マリアンヌが微笑む。


 「おそらく、それが最も困難でしょう。自分自身と向き合い、本当の動機を見つめ直さなければなりません」


 『心配するな』


 フェンガルが励ますように言った。


 『君たちなら必ず乗り越えられる』


 こうして三人は、真のいくら丼への道のりで最初の大きな試練に臨むことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る