第6話 真のいくら丼の秘密


 従魔契約を結んだ後、四人と一匹は森の奥にある小さな洞窟で休息を取っていた。焚き火の明かりが洞窟の壁を照らし、フェンガルの銀色の毛を美しく輝かせていた。


 「フェンガル、さっき真の【いくら丼】と言ったが、一体どういう意味だ?」


 ガレンが疑問を口にする。


 フェンガルが炎を見つめながら、ゆっくりと語り始めた。


 『君たちが思い描いているいくら丼は、確かに美味しい料理だろう。だが、それは表層に過ぎない』


 「表層?」


 リナが首をかしげる。


 『真のいくら丼とは、この世界の【生命の源】そのものなのだ』


 三人は息を呑んだ。


 『遥か昔、この世界が生まれた時、最初の海に無数の小さな光の粒が舞い踊っていた。それが全ての生命の始まりだった』


 フェンガルの声が神秘的に響く。


 『その光の粒こそが、真の【いくら】。そして、それを受け止める器こそが【丼】なのだ』


 クロエが困惑した表情で言う。


 「つまり、俺たちが探しているのは料理じゃなくて...?」


 『世界そのものの秘密だ。【ナンミョウ】は、その真実を守り続けている聖なる国。マシガルの幻影に守られているのも、不純な動機で近づく者を排除するためだ』


 リナが魔法書を開きながら呟く。


 「それで、私たちには見えたというわけね。純粋にいくら丼を求める気持ちが認められたから」


 『その通りだ。君たちの心には偽りがない』


 ガレンが剣を見つめながら言った。


 「だが、そんな重要なものに俺たちが関わっていいのか?」


 『むしろ、君たちだからこそなのだ』


 フェンガルが立ち上がる。


 『世界に危機が迫っている。【反いくら丼教団】という組織が、真のいくら丼の力を悪用しようと企んでいる』


 三人の顔が青ざめた。


 「反いくら丼教団?」


 『彼らは生命の源である真のいくらを独占し、世界を支配しようとしている。それを阻止できるのは、純粋な心を持つ者だけだ』


 クロエが拳を握りしめる。


 「なるほど、それで世界救世教というわけか」


 こうして三人は、単なる食べ物探しの旅が、世界の運命を賭けた壮大な冒険であることを知った。

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