第2話 旅立ちの朝


 翌朝、朝霧がまだ街を覆う中、三人は宿屋の前で最終的な荷物の確認をしていた。


 「食料は一か月分、水は二週間分。足りなくなったら途中の村で補給する予定よ」


 リナが几帳面にリストを読み上げる。魔法使いらしく、準備は完璧だった。


 クロエは軽装で身軽そうだ。


 「俺は身一つで十分さ。必要なものは現地調達するタイプだからな」


 ガレンだけが大荷物を背負っている。


 「剣士たる者、武器の手入れ道具は欠かせん。それに防具の予備も必要だ」


 三人の装備も性格も対照的だったが、不思議と息は合っていた。


 街の東門から続く街道を歩き始める。朝日が三人の影を長く伸ばした。


 「ところで」


 歩きながらクロエが口を開く。


 「その『いくら』って、どんな味なんだろうな?」


 「文献によると、海の味がして、口の中でぷちぷちと弾けるらしいわ」


 リナが答える。


 「ぷちぷち? 変な食べ物だな」


 ガレンが首をかしげた。


 こうして、三人の長い長い冒険が始まった。まだ彼らは知らない。この旅が単なる食べ物探しではなく、世界の運命を左右する壮大な物語の始まりであることを。


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