第3話 最初の試練


 街道を歩き始めて三日目、三人は最初の村【ミドリバ村】に到着した。小さな農村だが、旅人には親切で知られている。


 「やれやれ、久しぶりの屋根のある宿だ」


 ガレンが安堵の表情を浮かべる。野宿続きで疲れが溜まっていた。


 村の宿屋【緑葉亭】で一息ついていると、宿の主人が心配そうに近づいてきた。


 「旅のお方、これから東へ向かわれるのですか?」


 「ああ、そうだが何か問題でもあるのか?」


 クロエが警戒心を込めて答える。


 主人は困った顔で続けた。


 「実は、東の森に【鉄牙狼】の群れが現れまして。街道を通る商人たちが襲われているんです。ここ一週間で三組の隊商が被害に遭いました」


 リナが魔法書から顔を上げる。


 「鉄牙狼? 普通の狼よりも大きくて凶暴な魔物ね。群れで行動するから厄介よ」


 「回り道はできないのか?」


 ガレンが地図を広げて尋ねる。


 「南回りの道もありますが、それだと一か月は余計にかかってしまいます」


 主人が申し訳なさそうに答えた。


 三人は顔を見合わせた。時間のロスは避けたいが、危険も無視できない。


 「どうする? 俺たちなら何とかなりそうだが」


 クロエが仲間に問いかける。


 ガレンが剣の柄に手を置いた。


 「冒険者なら避けて通れない試練だろう。それに、村の人たちも困っているようだしな」


 リナも頷く。


 「私の魔法も実戦で試してみたいし。それに、鉄牙狼の牙は良い値段で売れるのよ」


 決意を固めた三人は、翌朝早く村を出発することにした。


 その夜、宿屋の食堂で質素な夕食を取りながら、リナが作戦を練っていた。


 「鉄牙狼は夜行性だから、昼間に森を抜けるのが得策ね。でも油断は禁物よ」


 「了解だ。明日は早起きして、日の出と共に出発しよう」


 ガレンが決意を込めて言った。


 こうして三人は、いくら丼への旅路で最初の試練を迎えることになった。

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