第3話 死にゲー廃人、案内役と出会う
「私はナビゲーションAIの【ミーミ】! よろしくお願いしますにゃ!」
大きな耳をぴょこんと揺らしながら、ふわふわの小動物が胸を張る。
とりあえず俺は木の棒を構えて戦闘態勢に入る。
「にゃにゃ!? なんで武器を構えるにゃ!?」
「いやいや、どう考えても怪しいだろ」
「にゃー!? こんなに可愛らしい見た目なのにですにゃ!?」
「俺は見た目で判断しない主義なんで」
もちろん、このようなマスコットのキャラが敵とは思いたくはない。
だが、疑わないわけにはいかないのだ。
「シイタケの再来になりかねないし」
「シイタケ?」
昔、遊んでいた死にゲーで、可愛らしい歩くシイタケの敵がいたのだ。
まぁマスコットキャラだろうと思って舐めてかかったら、なんと一撃で殴り殺されてしまった。
あの光景は今にでも鮮明に思い出せる。トラウマと言っても過言ではない。
あれ以来シイタケが食べれなくなってしまった。
そんな経験から俺はどんな相手にもしっかりと警戒するような癖がついたのだ。
「それにNPCの話は鵜呑みにするわけにできない」
「た、確かに用心深いのも大事だけど、ミーミはさっき名乗った通りナビゲーションAIにゃ! この世界のNPCじゃないにゃ!」
「ナビゲーションAI?」
「はいにゃ! 一周年記念の特典として、今始めたプレイヤーさんにはミーミのような案内役がついてくるにゃ!」
そう言われてみれば志穂が今朝、何か特典がついてくるとか言っていたような気がする。
新規プレイヤーがスタートダッシュできるような特典みたいなことを口にしていたが、どうやら猫のような彼女がこの特典なのだろう。
となればストーリーやゲーム進行に関わることはないため、疑う必要もない。
「ちなみに必要なければ設定で無しにもできるけど、どうするにゃ?」
ゲーム慣れしているなら迷わず不要として切るのかもしれない。
けれど俺は初めてのMMOだ。死にゲーと違って仕様も勝手もまったく分からない。
それに志穂から聞いていた最先端AIの件もある。
すぐにお別れというのは少々もったいないだろう。
「じゃあ……せっかくだし、一緒に行動してもらおうかな」
「にゃっ! 嬉しいにゃ! じゃあ不死の開拓者様の冒険を、ミーミが全力でサポートしますにゃ!」
小さな体が嬉しそうに飛び跳ねる。
毛並みがふわりと広がり、光を反射してきらめいた。
「その不死の開拓者様ってなんなんだ?」
「ナギ様のようなプレイヤー様のことにゃ! この世界のストーリーは知ってるにゃ?」
「いや、まったく知らないな」
「じゃあ、簡単に説明しますにゃ!」
ミーミは尻尾をぱたぱた揺らしながら、宙に浮かんだ光のパネルを開いた。
「この世界は太陽が欠け、闇が地上を覆おうとしてるファンタジー世界にゃ。人間、獣人、エルフ……いろんな種族がいて、みんなそれぞれの街や村で暮らしてるにゃ」
「ほうほう」
「でもにゃ、この世界には大きな脅威があるにゃ。【エクリプス】――太陽が欠け落ちて、世界が闇に沈もうとしている現象にゃ」
「太陽が……欠ける?」
「そうにゃ。欠けが進めば進むほど、魔物は凶暴になり、街や村も滅んでいく。放っておけば、この世界は完全に闇に呑まれて終わるにゃ」
「それはバットエンドだな」
「だからこそ必要なのが【不死の開拓者様】にゃ! プレイヤーであるナギ様たちは、死んでも復活できる力を持ってるにゃ。その力でダンジョンを攻略し、新しい大陸を切り拓き、太陽が欠けるのを防ぐ手段を探す――それが開拓者様の使命にゃ」
「なるほどね。死んでも復活できる開拓者だから不死の開拓者なのか」
ミーミは光のパネルを操作し、太陽の半分が黒く塗りつぶされた図を浮かべる。
「プレイヤーさんは、不死の力でモンスターを倒したり、素材を集めたり、ダンジョンを攻略したりして、この世界を少しずつ切り開いていくにゃ。街も冒険者たちの手で発展していく仕組みになってるにゃ」
「要するに俺たちが世界を広げていく役割を持つ開拓者ってことか」
「そうにゃ! 今はまだ第一大陸と第二大陸しか開放されてないけど、プレイヤーが増えたり進めたりすると、新しい地域やマップもどんどん解放されていく予定にゃ!」
ふわふわした見た目に似合わず、説明は意外と分かりやすかった。
要するに、太陽が欠けていく滅亡の迫る世界に不死の冒険者として飛び込み、狩りや素材集めを通じて少しずつ広げていく。そういうストーリーらしい。
「ちなみにここはどこなんだ?」
「ここはチュートリアルエリアにゃ!」
「やっぱりチュートリアルか」
「はいにゃ。正式名称は【忘却の地下遺跡】。外の世界に出るまでに、戦闘や回避、アイテム使用などの基本動作を一通り試せる場所になってるんですにゃ!」
「なるほど。じゃあ、さっさと外に出てみるか」
「レッツゴーですにゃ!」
ふさふさの尻尾を揺らしながら、ミーミは先に進めと促す。
初めてのVRMMO。
死にゲーとは違うけれど、この胸の高鳴りは同じだ。
未知の世界を踏み出す冒険の始まりに、自然と笑みがこぼれたのだった。
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