あなたの身近な借金女
明鏡止水
第1話 夜更かしのリユウ
今は深夜2時。
あしたは遅番。
コロナで5日休んだから今月やばい。有給突っ込んだ。有給まさかの全部消化。
漫画家さんが来るイベントにお金突っ込みすぎてまた借金地獄。クレジットの請求もやばい。
せっかく一社返したのに。
また妹にお金借りようとした。
でも、妹も大変で無理だって。
あたりまえだよね。
もう足し算も引き算もできない。
お給料の締め日まで休まず働く。
お給料日まで節約する。
返済する。
また1から。
なんで?
なんで、こんなことになってるの?
ほしいものがあるから?
買っておきたいものがあるから?
1ヶ月に使う額をしっかり決めないから?
お金のルーティン動画で仕分けは参考にしてるのに。仕分けるお金が残らない。
自分の過去のエッセイを読んだ。
ちゃんと貯金を持っていた。
じぶんは変わってしまった。
翌月の給料を当てにした生活。
借金をはやく返済したい。
仕事は続けたい。
どうしてこんなことになったんだろう。
実は人形、ドールが好きだ。
好きなものはたくさんあるけれど、ある日オークションに昔欲しかったドールが出品された。
最初は20万くらいだった。その時はちゃんと貯金をしていた。これならこの子を迎えられる、緊張していたが大金と感じなかった。元値が高いから。しばらくしたら40万に上がった。
どうして、すごく昔のドールなのに。
それでも貯金に余裕があった。どうしても、と入札を続けた。落ち着いたので良かった……、と思ったら。
なんと次は一気に60万、70万近くまで上がった。
当時の私は、60万までは、出せる、と熱くなった。切望していた。
とにかく夢にまで見たドールだったのだ。
こんなに金額が上がるなんて思わなかった。
趣味のために、誰かに、お金を、借りられるか?
そうよぎった。
家族とはいろいろあって殺したいと思ったことも何度もあったけど、なんとか今の形に落ち着いて障害者になってもお金が貯められるようになった。
私は家族に依存して寄生して甘ったれだけど、お金を貸して欲しい、なんて要望は希だった。
結果、落札はできたが金額としてとても無理をしてそのドールを手に入れた。
全財産失うのは、惜しい。
ならば、もう大人なんだし、どこからかお金を少しの間借りて、早めに返済して後腐れのない形を取ろう。そういう発想になった。それくらいに貯金が趣味だったし余程欲しいものしか買わなかった。
私は貯金からではなく、消費者金融からお金を借りる事にした。手続きなどに躊躇したが、誰もが知っている場所から借りるなら安心かもしれないと調べまくった。
果たして届いた人形はお洋服が埃だらけだった。
古い品で肌も色が変わっている。白い生地は黄ばみ、合成皮革の靴は劣化しておりぬめって本体へ色移りしていた。
それでも、会えた。
いろいろ難はあるけど嬉しかった。
取れたパーツはカタログを見ながら元の位置に布用ボンドで貼り付け、色移りしたボディはウェットティッシュなどでこすって汚れを落とした。
修復している。
ひどい状態かもしれない。
それでも、たいせつにしよう。
迎えることができて本当にわくわくして嬉しかったのだ。
ある日、父に借金がバレた。
購入品を白状する。金額も伝えた。
しかし、わたしには、かなしい予感があった。
オークションで出てくるドールにはリキャストとか、海賊版とか。用は偽物が多いらしい。
その子も大量に偽物が作られたらしい。
本物かどうか確かめたい。
でも、もし偽物だったら?
出品した人に文句を言うだろう。
それから、その子は? その子に、どんな感情を向ければいいんだろう。将来、いつか手放さなきゃいけないかもしれない。偽物にしろ本物にしろ。
複雑な思いを抱えたが、まあ、いいか、と思うようになった。偽物でもたいせつでかわいいし、少し残念だけど。本物ならいつか素敵なガラスケースに飾ってあげたいからドルフィースタンドと新しい靴も買ってある。ドールは小物も高い。さすがに同じ衣装は揃えてあげられなかったけれど、ドールにも高さ、サイズがある。その子に合わせたサイズの小物を集めてあげる胸の高鳴りは人生の彩りだ。
少なくともわたしにはそう。
ガンプラの塗装を凝るとか、好きなものをカスタマイズする人や編み物で好きなレースを編んだり模様を工夫するのと近いものがあるかもしれない。
買い物の高揚感はない。ただ、大切にしているものをより大切にできることが嬉しい。
そして困ったことだが。
一度、一体お迎えしてしまうと、欲しい子、お迎えしたい子が増える。それから2体ほどお迎えし。
わたしは貯金まで手をつけてしまいすっからかんだった。おまけにクレジットでアニメや漫画のグッズも大量に、高額に、手を出している。
職場で夜勤があるからなんとか毎月払えているようなものだ。あとは足りない時はまた消費者金融から借りている。
でも、今回ばかりはもう無理。首が回らないではないか。
繰り返してしまう過ち。
あれから、時が経つけれど。
やはりお迎えした子が本物であることを祈りたい。
しかし近場ではドールの査定はやっていない。
そのドールの販売元も海賊版の注意喚起をしていてお迎えするなら必ず正規のルート、店舗で、と訴えている。
お迎えしたドールはビスクドールとか骨董品ではなく、たとえばVOLKsさんのスーパードルフィー(SD)や、キャストドールならDOLKさん、といったところ。
ほかに海外ドールとかメーカーさんを知らないので名前を出してしまって申し訳ないけれど、よくYouTubeで動画を見るので有名なのかな、と。
みなさんは、購入したものの真贋を確かめるべきだと思いますか?
偽物なら出品者やネットオークションに問い合わせたいし、本物なら心の靄が晴れてスッキリします。
たとえ贋作でも大切にしたい気持ちは変わりませんが他のドールアカウントをお持ちの人のようにSNSで写真を載せるのは、ほかのドールのオーナーさん? からしたら不愉快なのかなって。
信頼のドールショップの偽物の写真が目についたら嫌ですもんね。
そうなると、わたしはこの子をずっと一人だけでさびしく陽の目を見せることもできずに所有するだけなのかな、と寂しく思います。
見せびらかしたいわけではないのですが、本物なら堂々と、偽物でもいつか余裕ができたらウィッグや衣装を変えて生まれ変わらせてあげたいです。
オークションではノークレームノーリターンと言われていましたが正規の品を謳って出品した以上、何かしらの責任があると思うのです。
無知なわたしですが、まずドールを大切にする。
お金を大切にする。
健康ももちろんだいじ。
仕事に行きたくない日もあるけれど、カクヨムで見つめ直したい。赤裸々に幼稚なことを語るわたしですが、眠れなかったので、書いてみました。
今深夜の3時37分になっちゃいました。
あなたの身近な借金女 明鏡止水 @miuraharuma30
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★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
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