第3話 愛憎
日本天使軍総務部会議報告書概要
変動歴 700年 6月 9日
尋問の結果、東京湾警備隊3名の著しい規則違反を確認。
3名の処分を外出禁止処分とし、民間への被害及び死神への接触があるため、天使処分法第3条に基づき、さらなる処分の決定は枢密院へ委ねる。
前回の人事部会議から本日までに白の望霊となった者5名が正式に天使軍への入隊。
そのうちの一柱、七門色葉の一昨日の事件で
暴走する危険性ありと判断。
解決策として階級:権天使以上の監視を常時つけることを決定。
6月10日
七門色葉の監視をしていた天使と連絡取れず。
予定のない地点での天使数名の飛行を監視カメラで確認。
映像から七門色葉と断定。
目的地は
事態の大規模化を防ぐため黒賊軍へ向けた一部の者の暴走であるという声明の発表を決定し実行
黒賊軍より七門を含むすべての天使をせん滅したという声明を受け取る
暴走した8名の天使の処罰に関しては検討中
*黒賊…日本天使軍での日本にいる黒の亡霊の呼び名
時は少しさかのぼり
変動歴 700年 6月 7日 日本天使軍領地
ピピピピッ
無機質な電子音で七門色葉は目を覚ました。
体を起こし、アラーム音を止めるため目覚まし時計に視線を移す。
短い針は5を指している。
机に向かい一時間ほど勉強したのち、キッチンへ行き母親と自分の家族二人分の朝食を作り、お米を仏壇に供え、部屋干ししていた洗濯物を取り込んだ。
そういったところで階段の音が聞こえる。
すると、ガチャッと扉が開き、彼女の母が入ってきた。
「色葉、おはよう」
「お母さん、おはよう」
用意された母は朝食の前に座りながら少し申し訳なさそうな様子で
「いつも家事任せっちゃってごめんね」
「母さん、私は大丈夫だよ」
(母さんが浮かない顔してる)
と、色葉は思い、
「それより、仕事忙しいんでしょ。早く準備しないと」
と、言い。部屋にかかったカーテンを開けて日差しを取り入れ、学校へ行く支度をする。
母も準備はじめ、てきぱきと7時前までに済ませ、亡き夫の仏壇に手を合わせてから仕事へ向かった。
家に一人になった七門は自分の部屋に戻り、クロゼットの左半分を開く。
そこには壁から天井にかけて隙間なく、きれいに、びっしりと永田成瑠の写真が貼ってあり、いくつかにおい袋(成瑠の使用済みタオルまたは靴下の入った袋)が、彼女にとっては、とても幸福なにおいを発している。
「あぁ、私の愛おしい未来の旦那様」
色葉はその空間の中で深呼吸をしながら、すべての写真をなめ回すように眺め、ねっとりとした笑顔がこぼれる。
家を出る時間いっぱいまでその空間を堪能した後、彼に会いに行くために家を出て、学校へ向かう。
七門が家を出ると隣に住んでいる黄色い帽子をかぶった奥さんがちょうど出かけるころだった。
色葉はユリのような落ち着いた優しい笑顔を向け、挨拶をする。
「おはようございます」
「あら、色葉ちゃん、おはよう。いつも忙しいのにえらいわねぇ」
と、言ってご婦人はパイナップル味の飴ちゃんをそっと握らせる。
「じゃあね、色葉ちゃん、いってらっしゃい」
お隣さんはそういうと車に乗り込むために車に向かって歩いていく。
七門は嬉しそうに
「いってきます、飴ちゃんありがとうございました」
というと奥さんは嬉しそうに手を振り彼女を見送った。
学校に着き、教室に入るとすぐ何人かのクラスメイトに
「今日の宿題まだ終わってないの写させて」
だとか
「昨日の授業でわからない問題があるんだけど教えてくれない?」
とか同時にいくつもお願いをされるがそれをすべて聞き入れ、快く引き受ける。
このように、色葉の近所や学校での評判はとてもよく、容姿はよく整っており、学校の成績はいつも上位であり、学校では優等生と言われれば真っ先に七門の名前が上がるほどである。
しかし、運動は少し苦手であり、バレー部ではあまり活躍していない。
だが、それらの評価はすべて永田との接点と、永田と自分の親からの信頼を勝ち取るため、ただそれだけのために小学生のころから計画し、実行された行動の下に生み出された地位なのである。
登校時間ギリギリになって永田が教室に入ってきた。七門は自らの好意があふれ出ないように注意しながら、話しかける。
「また、時間ぎりぎりで登校してきたの、かわらないね~」
(また今日もこうして成瑠と会話ができる幸せ~)
「なんかうれしそうだね」
(まずい、顔に出てた?!話題変えないと!)
「だって、成瑠が反省文書いてる困った顔が面白いんだよねー」
「そういえば成瑠、高校に入ったら彼女作るんだっていてたけどまだなの~」
「まだ、本気を出してないだけだよ」
(何とかなったかしら)
「ふ~ん、なんなら私が彼女になってあげてもいいんだよー(絶対に私以外認めないから)」
「うるさい、そろそろ時間だから席に戻っとけよ」
(心配されちゃった♥)
「はいはい、じゃー戻りまーす」
と、言って席に戻っている間に早くなった心臓の鼓動を抑えながら席に着いた。
授業を難なくこなし、放課後の部活動もきっちり参加し、練習しているとズドーンという何かが衝突したような音が聞こえ、そのあとも大きな音が続いたが練習していた全員が不安そうな顔をするが大会前ということもあって練習続けられ終わったのは7時半だった。部活仲間と一緒に談笑しながら学校の外に出て外に出ると
色葉は一か所だけ妙に明るく光っている場所を見つける。
彼女にはその場所に覚えがある。
いや、それどころか、自分の家と同じくらいなじみのある…
成瑠の家がある場所だ。
彼女は友達をおいてまっすぐその家のある場所に向かってゆく。
時々その光の方から何人かの声が聞こえ、あと少しというところまで来たところで
とつぜん黒い雲が彼の家から立ち上がり、より急いでそこへ向かう。
到着すると大勢の天使を前に一人の黒賊が去っていくところだった。
そして…、黒賊につかまっているのはほかでもない、間違えるはずもない、彼女の愛する永田成瑠であった。
状況を呑み込めないままにその黒賊は飛んで行ってしまい。
すぐにまだ暗い空に消えていく。
色葉はそれを理解し、その理解を拒絶しようとし、激しく後悔し、深く絶望した。
その瞬間、彼女の意識は一瞬遠のく。
しかし、意識はすぐ戻ってきた。
変化とすれば、天使の体になっていることだ。
だが、彼女にとってはそんなことは重要ではないただ連れ去られた成瑠の心配とつれさったやつへを恨む気持ちしかなかった。
目の前にいた天使の一人が声をかけてくる。
「あなたの友達を助けてあげられなくとごめんなさい」
「あなたのためにもあの子は取り返すわ、必ずね」
その天使は天女のような優しい声で少し微笑んでそう言うがなぜか得体のしれないものに遭遇したような何かを感じる。
その天使を七門は知っている、日本天使軍最高司令官イザナミであると。
時間は戻り
変動歴 700年 6月 8日 永田成瑠視点 黒砲軍本拠地
僕とあの黒い影もとい六条影月は不自然で大きく黒い四角い建物である本拠地、通称ブラックボックスの中を歩いていた。
僕は歩きながら声をかける。
「あの、六条さん。いったいどこに向かって歩いてるんですか?」
影月は少し後ろを振り向きながら
「事務室だよ」
「君の入隊手続きをする必要があるからね」
六条の声のトーンは少し落ちているように感じる
「まあいろいろと……ね」
何かあるのだろうかとぞっとしたその時、壁から無数のツタが生え、六条を包み込もうとする。
しかし、僕が瞬きをする間にすべてのツタはちりになっていた。
すると、今度は壁から誰かが六条にとびかかるがとたんにとびかかった望霊は床にたたきつけられていた。
床にたたきつけられた誰かは
「影月~、受け入れてくれたっていいじゃな~い」
これに対し、影月は食い気味に
「いやだね」
と、即答する。
「影月疲れた顔してるけどどうしたの?」
「9割9分9厘お前のせいだけどあとの1厘は…」
と、言い僕の方を指さす。
「えっ、僕ですか」
しかし、六条は
「ちげぇよあほ、やっぱ気づいてないよな」
と、言ってさらに僕に指を近づける。
すると、電撃のように白い閃光が近づけた指を継続的に攻撃し続けた。
突然、それを見て倒れていた
「愛の呪いだ」
(…やっぱり、この
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