1-6.この国の税金とは?
最初の1週間はあっという間に過ぎ去った。
何も知らん事ばかりだったし、署長として何をすればいいのかも分からんしな。でもだいたいの流れは分かってきた。今まで経験した分だけだけどな。
まず、署長の仕事は決裁や稟議の承認だ。これについては元の世界と同じだった。世界が変わっても、組織のやることはそんなに変わってないようだ。
部下の仕事ぶりを確認して評価するのも仕事だ。って言っても直下の部下が評価書を書いてるので承認するだけだ。
あとは···、
「コウさん。今回のあなたの所轄では税収が改善されました。今後も頑張って搾り取···、ゴホン。納税をしていただけるよう努力して下さい」
そう、王城に税金を納金するという仕事だ。こいつらすら、税金は搾り取るものと考えてるようだ。汚職多そうだなぁ〜。
元の世界だと銀行振込とかで現金を直接扱うことはほとんどない。
ところが、この世界では銀行はあるものの、振込機能が概念すら存在してないんだよ!だから多額の現金を税務署から運び出してオレが直接荷馬車で王城の国庫担当に引き渡してるんだ。
これが週に1回。城が納入時間を指定しているので、いつも同じ時間に運び出してる。
すると···、
「ヒャッハーー!現金だ現金グヘェッ!?」
こういう野盗やギャングが『出待ち』してやがるんだよ···。さらには現金積んだ荷馬車の後も追いかけられるし、待ち伏せもされてる!
まるで有名な芸能人の追っかけのごとく、いろんなところからワラワラ野盗が出てきやがるんだ!某生物災害のゾンビゲームかよ!?
もちろんオレの水魔法で撃って追い払うけどな。···某ペンキ撃つゲームのような感覚だったわ。
元の世界なら現金輸送車が来る時間はランダムだし、車自体偽装工作もしてるし、輸送経路もランダムなんだがな···。そんな発想はどうもないようだ。
「ははは!いやぁ~、今度の署長さんは過激だねぇ〜!こっちとしても仕事がやりやすくていいよ!ちょっとスリルがないのが残念ですけどね〜!」
「ホントだぜ!しかも水魔法で応戦するから
そう言いながら、現金輸送車の御者と護衛さんが言ってたよ。ちなみにこの現金輸送車は偽装なんてしてなくて、どこにでもあるフツーの車だ。
ただ、引く馬は重装備の軍馬だった!王家の紋章入りの鎧着込んでるし!
フツーの馬車じゃないのは一目瞭然だし、思いっきり目立ってるので『現金積んでるよ!』ってバレバレだったな···。むしろ呼び寄せてる雰囲気だぞ?
ちょっと担当者を呼び出してクビを絞めたくなってきた!
ちなみにこの装備の馬車については跳ね飛ばされても馬車側の責任ではなくて跳ね飛ばされた人のせいになるらしい。
ただ、馬車は前方に人がいてもスピードを落とさずに、むしろ上げようとしやがったぞ!?
この馬も
ある意味クレイジーだわ···。怖ぁ〜!
ちなみにほかにも仕事があるそうだが、その時のお楽しみ!ってスタイアは言いやがった···。ちょっと怖いんですけど?
さて、ではそろそろ基本中の基本について考えよう。それはこの国の税金についてだ。
基本的には以下の7つの税金がメインのようだ。
・住民税
・売上税
・固定資産税
・馬車税
・入国税
・関税
・贅沢税
元の世界とほぼ似たようなものが多いな。馬車税は自動車税と同じだ。自動車ないからな。
元の世界だと一般会計にされてごっちゃになってるが、この国では基本的に目的税がほとんどだ。
住民税は治安維持に使われる。憲兵や王国軍、冒険者ギルドに魔獣討伐依頼の代金に充当だ。冒険者への支払いってのが元の世界にないぐらいだな。要するに国の中で生きるために最低限必要な経費って意味合いがある。
基本的には全員支払う。免除はない。所得に応じた利率で計算された金額だそうで、最低1000ジールとのことだ。所得税の意味合いも兼ねてるな。金持ちは税率が高く、『異世界版ノブレスオブリージュ』らしいぞ。
売上税はいわゆる消費税のようなものだ。ただし、支払うのは消費者じゃなくて、商人たちの売上に対して一定税率がかかっている。国内で商売したら税金を払うってこった。いわゆる
固定資産税も、国の土地を使用するから、その使用料という扱いらしい。ちゃんと国が定めた路線価まであったわ···。って事は、値段好き放題できるじゃねえかよ!?何かあれば搾り取る気マンマンじゃねえかよ···。
馬車税は道路整備と建設に使用されている。アスファルト舗装じゃなくて土を固めただけのところも多いし、
入国税はこの国に入国する人全員(国民は除く)毎回支払ってもらう。簡単に言えば難民受け入れ制限の意味合いが強い。この世界では魔獣被害が深刻だから、無制限に人を入れると国として守り切れずに滅んでしまうからだ。税金を継続的に支払える人だけが入国を認められるって事だな。防衛の事を考えると、元の世界よりシビアな考え方だな。それだけ余裕がねえんだろう。
関税は輸入品に課税されている。うちの国は内陸国だから、行商人が入国の際に支払ってる。
贅沢税は一定金額以上の物品に対して課税されている。具体的には100万ジール以上だな。工事は対象外だ。金持ちからふんだくる気マンマンだなぁ〜。まぁ、それが金持ちの義務だけどな。
こんなところか。元の世界よりもかなり単純だ。というのも、計算がややこしいと税務署の人が多くいるし、住民たちもわかりにくかったら納めようとすらしなくなるからな。計算機ない世界だし。
単純化してわかりやすくしてるので、仕事もしやすいぜ。
ちなみに税収が上がった原因は、ギャングを追い返して盗られる現金がなくなったからだ。オレが
ただ、このままじゃいけないよなぁ〜。絶対に何かしら対策して襲撃を企てるに違いない。
となると···、スラム街を視察しに行こうかなぁ〜?ちなみにスラム街はうちの所轄内にしかないんだよ···。
あとは国の壁の外だとさ。こちらは外国からの避難民とかだそうだ。
どうも災害ではなくて魔獣による被害で村や町が壊滅して着の身着のまま来ちゃったらしい。もちろんお金持ってないから入国許可なんて出るわけない。
金持ってたら国民になることはできるそうだ。もちろん納税してもらうのが条件でな。
でないと、国が維持できないからだ。さっき言ったように魔獣が国を滅ぼす事もあるらしい。そうなると、国防費がないと国がなくなっちまうんだよ。だから住民には税金を払ってもらうんだとさ。
国内のスラム化は、事業に失敗したりケガや病気で仕事ができなくなってしまった人たちが税金払えなくなって家を追い出され、行き着く先だそうだ。
元の世界のように保険なんてないからな。セーフティネットがねえんだよ。税金払えないのは国民ではないという扱いになってしまうのは、さすがにどうか?と思うが、魔獣の脅威に対応するためとなると、助けてやる余裕がないというのも頭が痛い問題ではあるな。
まぁ、このあたりは政治の問題だ。オレが関わる問題じゃない。オレの問題は税金を正しく納めてもらう事だ。
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