幕間1 『課題』 『魔法式』 『曲名』
『課題』 アメリア セレヴィーナ
「セレヴィのやってた課題って何の授業?」
「水魔法第二階梯(かいてい)の基本諸理論。その魔法式の発現可能性と効果範囲の構築よ。その計算もしていたわ」
「ほえー、難しそう。セレヴィも大変だなぁ」
「貴方も取っているはずだけれど?」
『魔法式』 アメリア セレヴィーナ
「理論とか何とかって面倒くさいよねー。魔法は発動できればそれでいいじゃん」
「貴方みたいな感覚派はそうでしょうね。大半の人には魔法式が必要なのよ」
「なーんで、なーんで。教えて先生!」
「まずは魔力の制御ね。無秩序に放出されがちな魔力を身体という回路を通して魔法に変換するのだから、それには効率や安定に関わってくるわ。綺麗な式は綺麗な発動に。それは見る者を感動させるような魔法になる。どこかの誰かさんみたいに、魔法を発動させる前に魔力を暴発させることもなくなるから」
「ほほーん」
「そして現象の再現性ね。魔法式は、現象を引き起こすための設計図であり案内図でもある。誰でも、何度でも。特定の効果を再現できるようになるわ。複雑な詠唱を省略し簡略化することもあれば、詠唱そのものを代用したり。それに魔力の増幅や持続と多様な使い道が解明されているわ。もちろん、学問として体系化し、教え、研究して更なる魔法の高みへと、」
「へへーん。凄いね~」
「……要約してみなさい」
「魔法は暴発させないこと!」
「そうね、一部正解だわ。真面目に聞かない貴方でも理解してくれて嬉しいわ」
「わ、わわわ! 正解なのに何で火の魔法を飛ばしてくるの!」
「回答の不足分を教えてあげているのよ」
「熱い、熱いって!」
「そう言いながら直前で防いでいるじゃない」
「それはそうだよ、焼かれたくないし」
「はあ、これだから感覚でやっている野生児って、」
「いきなり攻撃してくるのも品が無いと思うけどね」
「……」
「ねえ、何で火の玉が増えるの? 怒ったの? ごめんって!」
『曲名』 アメリア ドラグネス宰相
「あの曲、名前つけないの? もったいないなー」
「あのような指先だけを走らせたものを、曲などとは。童が自由気ままに奏でた音色の方が聴者には眩しく映るでしょう」
「じゃあ、わたしが曲名つけるよ! 」
「いやはや、そのような栄誉を賜るのは恐縮の至りにございます」
「ええとね、ジャン、ジョン、【ジャンピングジョンソン】!」
「どなたでしょう、その方は」
「駄目? それじゃあ、【ケルッケゥヴォッロンツ】!」
「実に、独創的な発想にございます。もはや発音さえ聞き取れなくなってしまいました」
「むむ、ならこれだ! 【アッポヌイート】!」
「おお、発音もしやすく一度聞けば頭に残りそうです」
「三つの中から選んでいいよ!」
「……前向きに検討いたします」
「え、選ばないの?」
「……フフ、」
「誤魔化された!」
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