「2」

 ミサキは入ってきた扉をそっと閉めると、2回ほど深い呼吸をしてから視線を巡らせる。

 

 すぐ背後には部屋に入ってきた扉。正面の壁には絵画と、ミサキから見てその右脇に立つ警備員。左右の壁にはそれぞれ扉がある。そして部屋の中央には台座の上に白磁の壺。そうした目立つ部分以外には、後は正面の壁の警備員がいるのとは逆側に消火栓があるくらいだ。

 

 「異変があれば右の扉……て、あれ?」

 

 前の部屋で警備員から一方的に告げられた“ルール”を思い出して口にしている途中で、ミサキは首をこてんと傾けた。もうひとつの目立つ物があったと思い出して目を向けたからだ。

 それ……透明度の高いアクリル板に黒い字で描かれた文字が、「1」となっていたからだった。

 その番号が何号室かを表しているものであるとして、二択の扉に正解すれば進んでいけるというのであれば、今この部屋は2号室でなければおかしい。

 

 「そうじゃないってことは、まち……がえ、た?」

 

 ミサキは胃の辺りから酸っぱいものが込み上げてくるように感じた。不安からその場にうずくまってしまいたくもなるが、実際にそうする前にふと思いついたという風に眉を跳ね上げる。

 

 「でも無事だ。……間違えたら部屋が繰り返す…………だけ?」

 

 前の部屋では二択を間違えてしまったと気付いたから焦り、不安になったわけだが、それで実害という実害はでていない。今のところは……だが先のことは考え過ぎても仕方がない。

 それにこうなると話も簡単になってくる。

 

 「扉は2つしかなくてどちらかが正解。警備員にスタートって言われてから1号室は2回目で、さっきは右を選んで間違いだった……」

 

 そう言うと、ミサキは左の扉をじっと見つめて――

 ――右の扉へ入った→「5」

 ――左の扉へ入った→「6」

 ――入り口の扉から戻っていった→「7」

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