「3」
恐る恐る部屋へと入ってきたミサキは、ざっと見てやはり同じ部屋であると認識してがっかりした表情を浮かべ、次いで正面の壁の右上には「2」と黒字で描かれたすりガラス調のアクリル板があることに気付いて明るい表情に変えた。
「やっぱりそうだよね。さっきの部屋はスタートって言われる前に見た部屋と同じだった。異変がないなら左の扉……ってことか」
ミサキは大仰な仕草で2度3度と頷く。それはルールを納得したというよりは、ただ安心したという感情からの行動だった。
「こうやって進んで5号室の先まで行ければ行けれ……ば……」
口にしながらミサキはまた表情を暗くして押し黙る。警備員からは5号室の先に進めば良いというようなことを言われたと記憶しているが、具体的なことはなにもわかっていない。
そもそもミサキは、どうしてここにいるのかも思い出せないままだった。
「悩んでいる暇があるなら、今は進もう」
少しの間落ち込んでいたミサキだったが、しばらくすると気を取り直していた。実際に立ち止まっていても誰かが助けに来てくれるような気配もない。
結局のところ、この謎しかない異変探しゲームに挑んで突破する以外にいい方法も思いつかなかった。
正面の立派な額縁に収められた絵画には薄く微笑む女性が暗い場所に立つ姿が描かれており、部屋の中央では台座に置かれた白磁の壺が存在感を放つ。
「うん……うん……」
ミサキは目立つ物から順に部屋の中を確認し、何度か頷いていく。
「こっちから見て絵画の左に消火栓で右に部屋番号、でその前には警備員の人……」
声に出してもやはり反応を示さない警備員を不気味に感じつつ、ミサキは右の壁の高い位置には通気口もあることを確認して、最後に大きく頷いた。
「よし、確認できる限りでは……全部ある……はず!」
空元気をふり絞ったミサキは――
――右の扉へ入った→「11」
――左の扉へ入った→「12」
――入り口の扉から戻っていった→「13」
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