第12話 ヒトゴロシ
夜の取引現場。
黒羽の一員として潜んでいた私は、息を潜めて動きを見ていた。
そこへ突如、まばゆい光と共に現れた人物がいた。
――勇者。
だが、彼女は来栖風梨ではなかった。
「黒羽の連中、ここで仕留める」
氷のような鋭い短剣を操る細身の女の勇者だった。
戦闘は一瞬だった。黒羽の仲間が次々と氷の刃に倒されていった。
私はその場に立ちすくみ、目を逸らすこともできない。
勇者の視線が、偶然私に突き刺さった。
「……お前」
背筋が凍る。
「な、なに……」
勇者は一歩、私に近づいた。
「その目、ヒトゴロシの目……お前、人間じゃない」
鼓動が止まりそうだった。
「ち、違う……私は……私は人間だ!」
必死に叫ぶ。だけど、声が震えていた。
勇者の目は冷たい。
「人間は、自ら進んで闇に染まったりしない。黒羽に身を置く時点で、もうお前は人間の枠を踏み外してる」
むかつく。
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく
私の事なんてなにも知らないくせに。
――視界が赤く染まった。
気づいたら、女の勇者は死んでいた。返り血はべっとり。さいあくだ。早くアジトに戻って、洗い流さないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます