第6話-[狭間] -俺to私は、[勇者]と[サポート]やるからね!

何とも言えない空気が、二人の間に流れている。


静寂を切り開いたのは、ウィンだった。


「こほんっ!では、多田潤!異世界へと旅立つ準備はいいかな?あちらに着いたら、私とは5分しか話せ無いわけだが」


「まあ、その5分ていう短い時間に突っ込みを入れたいくらいかなー」


「そこは、あえて指摘しないでくれ。こほんッ!では準備はいいか?」


そうウィンが、言い放つと同時に、彼女の手の平に、紋章のようなものが浮かび上がる。それを地面に放つと、床に大きな魔法陣が完成した。


「ふう。何とか完成したな。さあ、この魔法陣の中心に立ち、深く目を瞑ってみろ」


「すぐさま、別次元へワープできるはずだ」


そう言うと、ウィンは潤の背中を押した。


「分かったから!押すなって。自分で行けるよ」


潤は、歩みを進める。


「困った時は、念じろ。5分間だけだが付き合うことは出来る」


「もう、突っ込む気も起きねーよ」


「........」


ウィンは沈黙を保ち、魔法に集中している。


「よしっ!では行くぞ!はあっ!」


ウィンの掛け声とほぼ同時くらいに潤の姿は消えた。


「ふう。何とか成功したようだな。まあ、あいつ自身も、それなりにしっかりしてる部分もあるようだから、そこまで心配はしてないが、定期的に脳内会話はしたほうがいいな」


そう言い残すと、ウィンはヒールの足音を響かせながら、自室へと姿を消していった。


その頃、異世界の頂点に君臨する魔王城の中で、魔王様と、家来達が何やら話し合いをしていた。


「くっくっく!ウィンの奴め、今回も[勇者]を現代から転生させてきよったわ」


魔王が笑いながら話す。


それに続いて、従者のモンスター達が話し始めた。


「いやー!魔王様の力は半端ないですねー、まさか、水晶玉で世界が見えてしまうんですから」


従者のデーモンが言う。


「うむ!3年前も同じように我に勇者が立ち向かって来たが、簡単に葬り去ってやったわ」


魔王は、満足げに告げる。


「もしかしたら、私達が出るまでもないかもしれないわね」


魔王の側近であるハイマジシャンが言う。


「まあ、今はその勇者のお手並み拝見といこうではないか、はーはっはっは」


魔王が高らかに笑いながら話す。


「ハイマジシャンよ、お前は確か自分自身より下等なモンスターを作れるのであったな?」


魔王がハイマジシャンに言う。


「はい。私の知識内にあるモンスターでしたら。何なりとお申し付けくださいまし」


「ならば、その多田潤とかいう勇者が降りたつ、異世界にスライムを配置せよ」


「まあ、今の勇者ごときでは、スライムにさえ勝てまい、くっくっくっ」


魔王は、笑いをこらえながら告げる。


「はっ!では直ちに術式を展開させます」


そうして、ハイマジシャンは、魔法を唱える準備に移った。


おそらく、ハイマジシャン自身、魔王よりかは知能は低いが、他の種族よりかは数倍以上知性を持ち合わせていると思われる。


「ふん!これから楽しみになるな。せいぜい足掻くがいい!勇者多田潤!」


「無事我が城まで辿り着けたとき、相手をしてやろう。辿り着けたらの話だがな、はーっはっはっは!」


魔王の笑い声は、一晩中場内に響き続けた。

































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