第5話-[狭間]-[俺]が魔王討伐ってマジ?!

[じゃあ、結局何が言いたいんだよ?お前は?」


潤が、ウィンと名乗る女性に尋ねる。


「先程も潤、お前に言っただろう?異世界や転生という言葉を。お前もそういったものに詳しいと言っていただろう?」


潤は、その言葉を聞いて、深く考えてみる。考えた結果、一つの結論にたどり着いた。


「あ!分かったぞ!俺にも異世界行けとか言うつもりだな!」


「うむ。その通りだ。だが、後一つ転生という言葉を忘れてないか?」


「何だよ?何かに転生して異世界で冒険とかしろとか言うなよ?」


中々、核心を突いていく多田潤であった。


「その通りだ。お前には今から、勇者に転生してもらい、魔王を討伐してもらう」


「はー?嫌だね?面倒くせーもん。何が勇者だよ?あ!そうだ。じゃあ、俺からも提案していい?よくあるラノベ設定ってさ、主人公モテモテ設定じゃん?俺もそういうのにしてくんない?そっちの方が面白いじゃん?」


彼女は、そこまで潤の言い分を聞きおわると、こう言い放った。


「潤、お前には悪いがそういった設定には出来ないのだ。漫画やアニメ等とは異なり、そういった概念は通用しない」


「なんなんだよ!それ!不公平じゃん!それじゃあ!お前の意見だけ俺が聞いて、俺の意見は無視ってか?ふざけんなよ?アホ番人!」


潤は、内心でこいつとは、心底相性が悪いなと自分自身に言い聞かせた。


「これは、運命なのだよ。多田潤。ここに来た事も、そしてこの死後の世界から、異世界に旅立つ事も、お前が生まれた時から決まってた事なのだ。諦めてくれ」


「何なんだよ!それ!じゃあ、あれか?ここから天国とか地獄に行く事も叶わないのか?」


潤の勢いは、もう止まらない。


「それも先程言った筈だ。私は、死後の世界と異世界を繋ぐだけの番人だと。私と出会った時点で、もう運命からは逃れられないのだ。なので、多田潤、お前は諦めて異世界に行くしかないのだ」


ただ、淡々と、ウィンは、潤に話していく。


「くそっ!何だよ!それ、俺に選択肢は残ってないって事かよ。あー。もういいや!分かったよ。じゃあ、それやってやるよ。もう仕方ないから」


諦めに近い話し方で、そう潤はウィンに話す。


「うむ。話が早くて助かるよ。では、今から言う事を心して聞くように」


「 まず一つ目に、その異世界には、死というものがない」


「ちょっと待って?何だよ死がないって?あー!そうか!もう俺が死んだ上で、異世界に行く訳だから、死なないって訳か!」


「ああ。そうだ。なので、もしあちらに行った上でモンスターと戦う事になり、殺されたとしても、前に訪れた町の宿屋で生き返る」


[はあ?マジかよ!最強じゃん!だったら、魔王余裕じゃね?何回も生き返る事が出来るんだろ?いつかは勝てるっしょ!」


ウィンは呆れたようにため息をつく。


「まあ、話は最後まで聞け。そんなに都合の良い世界な訳が無いだろう。確かに、魔王を倒せば終わりだが、それまでに何回死ぬかも分からない訳だ。その度に、毎回町に戻っていたら、いつ魔王を討伐出来るかも分からない。もしかしたら、1000回以上死ぬかもしれない。下手したら、10000回以上かもしれない」


「そして、それに付け加えて旅をするのはお前だけではない。他に4人居るのだ。お前一人で魔王を討伐しても、その世界を攻略したことにはならない。覚えておけ。ラスボスの魔王を討伐する場合は、絶対に、お前に加えて他の4人の仲間が生きている状態で無くてはならない。まあもしかすると他に仲間になる者も居るかも知れないがな。だが、クリア条件としては、大前提として、現代からワープして来た他の4人と潤を含めた5人生存が条件だ。それさえ達成出来れば良い。異世界の住人の生死は関係ない。その者が死んだとしても、クリアは可能だ。そして、蘇生呪文もあるにはあるが、異世界の住人に対してだけ、戦闘中に使わなければ、一生生き返らない。町の教会なども無意味だ。他の4人には有効だかな。なので、それを上手く駆使しなければ、異世界攻略には至らないだろう」


潤は、そこまで聞いて、こう返した。


「はあ?マジ?俺の他に5人と行動を共にしないといけねーの?クソ面倒だわー」


本当に面倒臭そうな態度でそう話す潤であった


潤は考える。そして合点がいったのか、こう返答する。


「あ、あれか?そいつら5人も死んだやつらって事か?」


「いや、仲間になるとしたら、一人は異世界の住人だ。私にも誰だかは分からんが。その他の4人に関していえば、お前と一緒で死者という事になる。私自身、潤と一緒で、大体の性格、価値観等は、多少把握している」


潤は、1つの疑問を口にする。


「じゃあ、そいつらも不死身って事だろ?」


「異世界の住人の一人を除いた、4人に関していえば、そうなるな」


「後、付け加えておくと、私と、潤の関係は他の5人に言わない方がいい。お前の為だ」


「ん?何で?何かペナルティとかあんの?」


「それは、その約束を破れば、分かる事だろう」


「そっかーまあ、深くは聞かないわ!」


そして、他の疑問をウィンにぶつける潤だった。


「じゃあ、そいつらと魔王討伐した後はどうなるんだ?めでたくハッピーエンドって感じか?」


「さあ?どうだかな。それも教えては面白くないではないか」


「いやいや!そこは教えてよ!一番重要でしょ!」


ウィンのキャラが変わる。


「駄目だと言ったら駄目だ!諦めろ!」


凄い剣幕で潤に告げる、ウィンだった。


「うわっ!びくったー!そういうキャラもできんのかよ!お前」


今のウィンの心を見てみよう。


(えーだってさー!それ言ってしまったら、誰も読者付いてこないじゃん?そんなの嫌だしさー、作者さん困っちゃうしー!)


それに加えて、潤はこう付け加えていく。


「じゃああれか?例えばドラクエみたいにLevelupとかの概念とかもあの?」


「もちろんだ」


ウィンは短く、端的に答える。 


「マジか!それが本当なら俺は、Level1の雑魚勇者からスタートかよー。まさか、自分が現実にゲームの主人公やると思わなかったー」


潤は、喜び半分落胆半分といったような声のトーンで言葉を紡ぐ。


「まあ、その辺は俺のゲーム知識をフル活用する所っしょ」


ウィンは、潤のその言葉を聞いてこう返した。


「まあ、不死身といっても自分自身がその勇者になるのとゲームとでは勝手が違うがな」


潤は、心の中でウィンに対して舌打ちをした。


「まあ、でも何とかやってやるよ」


潤は、ウィンに対しての多少の怒りともとれるような反発心からこう返した。


「では、二つ目を話すぞ。二つ目は、私自身の能力についてだ。私は、普通の人間ではない為、多様な能力を持ち合わせている。その能力とは、一つ目に、離れた場所にいる者の頭の中に入りこみ、脳内会話が可能だ。これのおかげで、潤が異世界探訪中もサポート出来る。しかも、一回私が念じた相手なら、その者からも私にテレパシーを送れる。だが、初回は私からしか出来ない。しかも、欠点があり、死んだ者の中にしか入り込めない。現実世界にいる人間には入りこめないのだ。異世界住人も同様だ。そしてもう一つの欠点は、テレパシーが可能な時間制限があり、5分が限界だ..そして...」


ウィンが続けようとしたとき、潤の制止の言葉が入る。


「ちょっとまてーい!ツッコみどころが一つあったぞ!しかもかなりの!」


「ん?どこかおかしいところがあったか?」


「いやいや!自分で分かるだろ!明らかにおかしいじゃん!そんな最強のテレパシー能力持ってて5分って!電話でももっと話せるわ!」


「うん?そうか?あ!後付け加えると、5分脳内会話をすると、1時間あけなくてはならないんだ。悪いな」


「マジかよ!ほとんど宝の持ち腐れやん!脳内会話使えないじゃん!」


こほんっと咳払いをしつつウィンは話を続ける。


「ま、まあそこはいいではないか!5分でも話す事が出来れば、多少は異世界探訪にも使えるであろう」


(潤のやつ!意外にいいとこついてきやがったなー!あんまり突っ込んで欲しくないところなのにー。結構気にしてんだぞー。コノヤロー!)


「そして、これも欠点といえば、欠点だか、私のテレパシーを受けた者は、永久的に能力が使える。そして、私が死亡した場合、私に対しては、テレパシーは使えない」


「まあ、そりゃそうだろうな。ん?まてよ?私に対しては?つー事は、あれか?ウィンが死んだ場合でも、死んだ者同士だったら、使えるのか?例えば、俺がウィン側になるって事?お前が死んだ場合」


「まあ、そうなるな。まあ、私自身不死身ではないんだよ。一応生きている人間扱いになるんだ。なので、死はある。だから、私が居なくなった場合、潤自身にこの私の立場をやってもらいたい」


ただ、淡々と言葉を紡ぐウィンであった。


「はー?面倒だなー?でも俺も勇者やんないと行けないからさー、後で考えといてやるよ。異世界攻略したらな。どうせまだ死なないっしょ?ここにいればさ?」


「絶対とは言えない」


ただ、短く言葉を紡ぐウィンだった。


「え?どういう意味?ここに誰かお前の命を狙いに来るとか?」


「それも秘密だ」


潤は、何でお前ばっかり秘密を通すんだよと思いながらも、あえて、追及しなかった。


「 こほんっ!まあ、話は私の能力に戻るが、他にも多様な能力が私には、ある。他者の潜在能力を解放したりとかな」


「へー!すげーじゃん!そんなに言うならやってみてよ!出来んだろ?今、俺にやってみてよ!」


「だから、今、それやっちゃったら、面白くないでしょーって!」


またまた、ウィンのキャラ崩壊が起きていく。


(マジで、この多田潤とかいう男、空気読まねーよなー!マジで!読者これ以上減らしたくねーし!ネタバレ厳禁っしょ!マジで!?あ!言ってしまった私がいけないのかー!しくったー!)


「うわっ!びくったー!また正反対の性格出てきたな。たまにそういうの出てくんの?」


「こほんっ!も、もういいではないか、以上でお前に話す事はおわりだが、聞いておくことはないか?」


「まあ、特に無いかなー?」


「いやいや!何か聞いてよ!?異世界で出会う女の子が私みたいに綺麗な子だったらどうしよーっとか、目のやり場困るわーとか!?何かあるじゃん!?」


「 何でそんなに俺が他の女の子と話す事を気にしているんだ?」


ウィンは、それを聞いてまた自分は、ボロを出してしまったと反省した。


「い、いや!?特に意味はないぞ!?お前が気にする事ではない!」


ウィンの心の中を見て見よう。


(あっぶねー!潤の奴意外に鋭い所突くなー!いや?私がボロ出したせいか!危なかったなー。何とか。セーフ!セーフ!)


「あっ、そう?まあ別にどうでもいいけどねー」


「そ、そうだ...どうでもいい事だ...」


二人の間に何とも言えない空気が流れ続けた。
















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