魔剣と霊剣
刃が閃き空を断つ、刹那に刃がぶつかり火花が散る都度白い煙が舞い上がり両者素早く身を翻しさらに激しく鍔迫り合う。
リオとクレスの激しい剣捌きにローレライが加勢するか戸惑う様子を見せ、それにエルクリッドは落ち着いてと声をかけつつカード入れへ手をかけ二人の鮮烈なる剣技と、互角に渡り合うリオの実力を改めて感じ手を握り締めた。
(リオさんすごいな……クレスさんに教わったってアビスを使っての戦いに磨きがかかってる。あたしも、負けられないな……!)
リスナー自ら戦う者などクレスくらいのもの、鍛えるにあたっては独自に磨きをかけなければ上達はしない。半年の間にリオが騎士としての職務の合間に力をつけていたと思うと、彼女の確かな才覚を感じられる。
同じ事を騎士団長ジュダルと王レビアも感じ、レビアは特にかつての旅の仲間にして元騎士団長だった人物を重ね合わせ自然と笑みが溢れていた。
「ルイさんを思い出す華麗にして鮮烈な戦いですね。ジュダルさんも負けてはいられませんよ」
「リスナーとしての才覚は既にリオの方が一枚も二枚も上手なのは事実です。此度の星彩の儀が終わった時には……いや、今は止しておきます」
上司としては部下の成長は嬉しく、騎士としては複雑な思いもジュダルにはある。しかし今は戦いを見届けるのが先決と気持ちをすぐに切り替え、その様子をレビアはちゃんと感じながら戦いへ目を向けた。
今の所は互角そのもの、だがクレスの方が余力があるのは間違いなく、それは直接切り合いを繰り返すリオが一番理解しどう動くかを考え続ける。
(このままやっても平行線にしかならない。どうするべきか……)
霊剣アビスと魔剣アンセリオンは武器としてほぼ同等、となれば後はその使い手の腕次第だ。だが元々剣を手に戦う事を基本とするクレスは小型のカード入れを複数備え、どんな態勢でも引抜き使用する事を前提としている。
リオがカードを使うよりも早くカードを使うのは接戦においては大きな差となる、だがここでクレスにはない優位性、エルクリッドの存在があるのをリオは理解し一瞬目を向けそこからエルクリッドも自分がすべき事を判断しローレライを一旦自分の元へ下がらせた。
「ローレライ、あなたの出番は必ず来るからそれまで待っててね」
鼻先を寄せるローレライを撫でながらエルクリッドはその時を待つ。今自分が横入れをしようにも、クレスはしっかり注意を払いながらリオとぶつかり続けている。
しかしだからこそ隙は必ずある。そのほんの僅かな機会を今は待つ、その為に何のカードを使うべきかを考えながらエルクリッドはカードに触れて指先でなぞり、それを感じたリオもまた一歩深く踏み込みクレスと鍔迫り合う。
「アビスを使うのは問題なさそうだな」
「ご指導頂いた事感謝致します、ですが今はあなたに勝つことを第一とします」
「やれるならやってみろ……!」
刹那に強い語気と共にクレスの力が強まり一気に剣を振り抜きそのままリオを弾き飛ばす。と同時にカードを引き抜き剣を逆手に持ち、静かに詩を口ずさむ。
「我望むは静寂なる世界、冷厳なる氷雨は破邪の剣となりて汝を穿き万物を閉ざす……! スペル発動、ブリザレイド!」
詠唱を加え本来の威力を発揮する詠唱札解術によりクレスのスペルが発動され、冷気が舞台を包み込むと共に空中に現れる数多の氷の剣が包囲するように切っ先をリオへ向ける。
すかさずエルクリッドの意思を受けたローレライが機敏に蛇行しリオを守るようにとぐろを巻き、尻尾で身体から吹き出す白煙を巻き上げると共にすぐさま口を開き熱戦を放つ事で飛来せんとするブリザレイドの氷の剣を全て焼き尽くす。
だがそれは布石に過ぎないとリオは察してすぐにローレライの外へ出て前へと走り、次のカードを引き抜き詠唱を始めているクレスを捉えた。
「氷結せし祈りを捧げ、凍えし世界に響くは青き歌姫の鮮烈なる刃……! スペル発動、ゼロディーヴァ……!」
順手に持ち直したクレスが魔剣アンセリオンを下から上へ振り抜くと共に地を走る幾重にも連なる氷柱がリオへと向かう。それに対しリオはカードを引き抜きかけたが、それよりも早くエルクリッドがカードを切って見せる。
「スペル発動フレアウォール! リオさん!」
「感謝しますエルクリッド!」
ゼロディーヴァの前に分厚い燃え盛る炎の壁が出現して押し留め、一瞬止めた刹那に爆発を起こし白煙が周囲を包み込む。その爆風の中でもリオは止まらずに走り、クレスの方は周囲の視界を奪われる形となった。
だがそれでも動じずゆらりと迫る右側面の影を捉えて走って奇襲をかけんとしたローレライに切りかかり、半透明のその身体を切り裂き黒い体液を巻き上がらせる。が、ローレライが口を開き赤い光を放ってる事を悟りすぐにクレスは後ろへ離れるが、魔剣アンセリオンの刃部分が熱戦をまともに受けクレスの身体にも焼けるような激痛が走る。
そのほんの僅かの一瞬にクレスの姿勢が崩れた刹那に霊剣アビスを振り上げ間合いに入ったリオが迫り、力強いかけ声と共に放たれた縦一閃の剣をクレスは辛うじて剣で受けるが、大きく弾き飛ばされ白煙を突き抜けると共に舞台上を転がり倒れ伏す。
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