21話 モブと呪いから解き放たれる女の子
「貴方が逃げなさい!桜。
恵梨香を助けられるのはこの場には貴方しかいない。だから……逃げて?」
むり…………ですよ。
もう……逃げられない。
「はっ。おら!ビリ」
「おい!やめろー!」
「いい体してんじゃねえか!」
ドンッ
「何だ?扉がいきなり吹き飛んだぞ!」
「ガシ!」
「うぐっ…こいつ!」
真田魁斗が小峠桜の上に跨っていた男を
掴んで壁に押し寄せたがあまり動かなかった。
「うお!皆正念場だぁ!」
「このガキどっから!」
頭を掴まれ地面に叩きつけられた。
それでも相手の足首を掴んだ。
「皆は、下に逃げて!」
ガン
「ぐあ。」
ガシ
「何だテメエ!」
「白石、状況を見れば何となく分かる!
お前が、お前らがやった事は、到底許される事
じゃねえ!これが終わったら正式に謝ってもらう!
だけど!だからって好き勝手されて良い訳ねえよ」
「貴方は一体」
「行け!少しでも他の皆に悪いと思ってるなら
皆を守れ!」
「無茶を言うのね?女が男に勝てると?」
「それでもだ!守れ!」
「………………………………分かったわ。
でも、桜を置いては、いけない。
あの子は、私の………親友だから。」
「分かってる!絶対に誰一人傷つけさせねえよ!」
純愛!純愛!純愛!純愛!純愛!純愛!純愛!
ぜってえ純愛守る!この際百合でも構わねえ!
「ドンッ!どっけえ!!!!!!!!!!!」
「くっ!何だこのガキ!」
「ガシ小峠桜!お前は、本当にこのままでいいのか?いいと思ってるのか?お前が本当に
やりたい事は、こんな事だったのか!」
「貴方に……何が分かるんですか?
貴方みたいに周りに恵まれた人に私の気持ちなんて
分からない。誰かに縋らないと私は、生きていけない。」
ゴン
小峠桜side
真田魁斗が私の頭目掛けて頭突きをしてきた。
あまりの痛さに声が出てしまった。
「うっ。急に何を」
「馬鹿野郎!俺だって縋ってるわ!
純愛に!それに……お前は、本当に一人だったか?
本当に誰もお前の周りに居なかったか?
「いなかっ「違うだろうが!」
「あんたは!どこ見てんだよ!
ずっと、別の場所見てんじゃねえよ!
前をいい加減見ろよ!」
彼に言われ私は、前を見た。
前を見て何があるって言うんだ ?
私の未来は、変わらない。
恵梨香ちゃんの居ない私に生きる意味何てないのに。
だけど……泣いていた……紅玉が。
何で?私の側に居たのは何時だって恵梨香ちゃんで
…………違った。私にいつも寄り添ってくれたのは
紅玉だった。一緒に居て楽しかったのは、紅玉だった。いつも私に楽しそうに会話を振ってくれたのは、紅玉だった。
どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだろう。私を支えてくれてたのは、紅玉だったのに。
「お前は、一人じゃない!
お前の側に居たろ?お前を理解してくれる奴がさ。
お前の為に動いてくれる人が居るだろ!
それに……今は、白石だけじゃない!
周りを見ろ、しっかりその目で!
今のお前には、何が見えてる?
きっと………お前を助けてくれる。
ここに居る奴らは、皆いい奴だ。
だから、お前が困れば助けてくれる……絶対に。
当然、俺も居る。
お前は、今川恵梨香に利用されて居たのかも
知れない。だけど、白石は、利用したか?」
「ち…が……う。」
「そうだ!お前のすぐ側にお前の望んだものは、
あったんだよ。だからさ……それを自ら手放すなよ。…な?」
あぁ……そう……だったんだ。すぐ近くに私を
理解してくれる人が居たんだ。
もう少しでそれを失う所だったんだ。
紅玉は、何時だって私の近くに居てくれたのに。
それに…私を本当に助けてくれるの?この人は。
両親にすら愛情を注がれなかった私が?
姉のおまけ何て言われて来た私が?
「ほん………とうに………私を助けてくれるの?」
私は、涙目になりながら訴えた。
彼は、………優しく、不器用な笑顔を見せて
頷いた。あぁ。私は、ずっと一人だと思ってた。
違ったんだ。紅玉が居てくれたんだ。
「たす………けて!私は、まだ……奪われたくない。」
「任せろって。お前は、俺が……守るからさ。」
そう言って彼は、笑った。足は、震えていた。
彼も怖いんだ。なのに……私の前から退かない。
紅玉も守ってくれようとしてる。
私達は、散々彼等に迷惑をかけたのに。
「どうして、助けるの?」
彼は、当たり前だと言わんばかりにこう答えた。
「女を泣かせる奴にはなりたくないだろ?」
彼は……………馬鹿だった。
隣で紅玉も困った様に笑っていた。
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