11話 あたしの気持ち
椿穂乃香side
「あらら♪心が折れてしまいましたか?
泣いても事態は、好転しないですよ?」
もう……嫌だ。あたしは、何の為に?
家族を守りたかった。
「そこで何をやっている」
「先生♪何もしてませんよ?
友達と会話をしていただけですよ。
私は、これで、失礼しますね♪」
「……そうか、それならいい。」
………教師は、皆…あいつの味方だ。
あたしは、こんな見た目だから、教師からは、嫌われている。
誰も……助けてくれない。
「えっと……大丈夫?」
………は?河野が何でここに?
鷹宮は、何してんだ!
失敗すればあいつの家族も無事ではすまないぞ!
被害者は、増え続ける。
「その……これ、見てほしいの。」
何故、鷹宮が河野と一緒に…………。
「動画?」
何故動画をあたしに見せる!今は、それどころでは、ない筈だ!
鷹宮の家族もあたしの家族ももう………。
そう思ったら鷹宮を許せなかった。
何でこいつは、こんなに冷静なのか、と。
鷹宮を怒鳴ろうと鷹宮を見た時だった。
…………………泣いていた。
ポロポロと涙を零していた。
心底……嬉しそうにあたしに動画を見せてきた。
「こ……れは、」
動画を見た時。あたしは、驚いて声もあげれなかった。その動画に映っていたのは、…………。
「………い、今川?……と女性と子供?
これが一体」
「これは、私の妹と母………です。」
泣きながら、でも安堵したようにそう呟いた。
「たす………けられたのか?」
「どうやら……そのようです。」
「…………そうか。よかったな?」
あたしは、なるべく涙を隠して笑顔で伝えたが
きっと涙は、今も溢れている。
「貴方も……ですよ。」
「は?何を言って」
「この動画を見れば分かりますよ。」
そう言ってまた、あたしに動画を見せてくる。
これが一体何なんだ。
『河野、見てるか!
何かよぉ!魁斗の携帯に繋がんねえから
お前に送っとくわ。後ろにいる奴だけどさ。
鷹宮?だっけ、教師の名前、その…家族らしいんだけど、何か襲われてたわ。
こんな廃墟のビルに連れ込むなんて許せねえよな!
でよぉ!1人が言ってたんだけどさ!
何かもう何人か人質?がいるみたいでよ!
……………もしかしたら……あいつが行ったかもしんないわ』
こんな事を言っていた。ありえないとあたしは、思った。どうして赤の他人にそこまで出来るのか。
あたしは、理解できない。
本当に助けてくれるのか?
絶対に嘘だ!あたしは、信じない!
ずっと思ってた。
今も思ってる。なのに……なのに………何で?
今……目の前には、血だらけの男が倒れていた。
ママと桜と春は、無傷………なのか?
そこにいる男はこんなに傷だらけなのに?
最後まで……あたしの家族の為に戦ったのか?
怪我を見るに喧嘩慣れをしてる訳でもない。
何で……あたしの家族にそこまで出来る?
あたしに何かを望んでるのか?
だけど……確実に骨が折れてる。
あたしに何かをさせたい何て目的で
ここまで体を張れる物なのか。
あたしは、目を見開いた。
目の前にいる男が驚く事を言ったからだ。
「ま……も…れて………よかったぁ。
守れて良かった?
この男は……この人は、そう言ったのだ。
この怪我で、まだ、あたしの家族の心配を?
普通じゃない。赤の他人の家族の為に骨を折る何て
芸当は、普通じゃない。
だけど……だけど。
「涙が………溢れる。」
こんな恥ずかしい所を家族には、見せたくないのに。でも、良かった。本当に良かった。
無事で。この人は、あたしを、家族を救ってくれたのだ。
「ありがとう。魁斗!」
椿穂乃香は、今まで見たことのないような
明るい笑顔でそう言ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます